非小細胞肺癌の術前化学療法、第3相臨床試験での評価
キャンサーコンサルタンツ
2010年6月
非小細胞肺癌(NSCLC)に対する術前化学療法第3相臨床試験において、有益であるという明らかなエビデンスが得られなかったことが判明した。最終結果を待たずに終了したこの試験の結果に関する情報はJournal of Clinical Oncologyに紹介されている[1]。
世界的にも肺癌は癌による死亡原因の上位に入る。米国では非小細胞肺癌(NSCLC)が肺癌全体の75-80%に相当する。手術により癌を切除可能な肺癌患者に限り、術後補助化学療法または術前(導入) 化学療法が有用であることがいくつかの試験で示されている。
今回の試験では手術療法のみ行った場合と、パクリタキセルとカルボプラチンによる併用化学療法を術前に行った場合とを比較し、早期NSCLC患者の生存率を検証するランダム化第3相臨床試験を実施した。
その結果、手術療法のみ受けた群よりも、術前化学療法を行った群の方が生存率、無増悪生存率ともに高いことが判明した。一方で、試験結果は統計学的に有意ではなく、偶然の結果であると捉えることもできる。
他の臨床試験で早期NSCLC患者に対し、術後補助化学療法と手術単独療法を比較して生存率を検証したところ、前者に統計学的有意差が認められたことから、今回の臨床試験は登録数わずか354人にとどまり早期に中止された。[2][3]
研究者は、現在のところ「早期NSCLCに対する術後化学療法はより高いエビデンスを持つ」と結論づけている。早期NSCLCに対し、生存率の向上や生活の質を保つため、患者ごとに最適な治療法を選択できるようにするための研究が今後も続けられる。
参考文献
[1] KMW Pisters, Vallieres E, Crowley JJ, et al. Surgery With or Without Preoperative Paclitaxel and Carboplatin in Early-Stage Non–Small-Cell Lung Cancer: Southwest Oncology Group Trial S9900, an Intergroup, Randomized, Phase III Trial. Journal of Clinical Oncology. 2010;28:1843-1849.
[2] The International Adjuvant Lung Cancer Trial Collaborative Group. Cisplatin-based adjuvant chemotherapy in patients with completely resected non-small cell lung cancer. N Engl J Med. 2004;350:351-360.
[3] Winton T, Livingston R, Johnson D, et al. Vinorelbine plus cisplatin vs observation in resected on-small cell lung cancer. N Engl J Med. 2005;353:2589-2597.
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