AACR:術前免疫化学療法+術後デュルバルマブにより肺がんの転帰が有意に向上
MDアンダーソンがんセンター
第3相試験で、免疫療法と化学療法の併用は化学療法単独と比較して、疾患の再発、疾患の進行、疾患による死亡の割合が32%低下したことが判明した。
抄録:CT005
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが、米国がん学会 (AACR) 年次総会2023で4月16日に発表した第3相試験の結果によると、手術前の免疫療法+化学療法の後に、手術後免疫療法を行うレジメンは、手術可能な非小細胞肺がん (NSCLC) 患者において、化学療法単独と比較して無イベント生存率 (EFS) および病理学的完全奏効 (pCR) 率を有意に改善した。
AEGEAN試験では周術期に投与されるデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)が評価されており、手術前と手術後の両方に治療が行われることを意味する。この試験の参加者は、術前補助療法としてデュルバルマブ+プラチナベースの化学療法に加えて術後補助療法としてデュルバルマブを投与されるか、術前補助療法としてプラセボ+化学療法後、術後補助療法としてプラセボを投与された。
これらの試験は、切除可能なNSCLCに対して、周術期の免疫療法の有用性を示した最初のデータであり、切除可能NSCLC患者に対して蓄積されつつある術前補助免疫療法や術後補助免疫療法の有効性を示すエビデンスに更に追加する結果である。
「私たちの目標は、一人でも多くの患者さんに治癒をもたらすことです。術後補助化学療法および術前補助化学療法について十数年にわたる研究を通じて、治癒率を約5%高めることに成功したにすぎません」と、MDアンダーソン胸部および頭頚部腫瘍科の部長である主任研究員のJohn Heymach医学博士は述べた。「この1つの試験だけで、治癒率を大幅に改善できる可能性があり、今後さらに多くの改善が期待されます」。
周術期にデュルバルマブを投与された患者の17.2%でpCRが得られたのに対し、化学療法のみを受けた患者ではわずか4.3%であった。EFSの最初の中間解析 (追跡期間中央値11.7カ月) では、プラセボ群のEFS中央値は25.9カ月であったが、デュルバルマブ群では中央値はまだ到達していなかった。
これらのデータは、化学療法単独と比較して免疫療法を基にした治療を行った場合、疾患の再発、疾患の進行イベント、疾患による死亡を患者が経験する可能性が32%低いことに相当する。化学療法単独による治療と比較して、周術期のデュルバルマブ+化学療法による治療で約4倍の患者がpCRを達成している。
PD-L1を標的とする免疫チェックポイント阻害薬であるデュルバルマブは、これまでに胆道がん、肝臓がん、小細胞肺がん、およびNSCLCの特定の患者に対する治療薬として承認されていた。現在、デュルバルマブは、根治的化学放射線療法後の局所進行・切除不能NSCLC患者に対して、および転移性NSCLC患者に対してトレメリムマブ(販売名:イジュド)とプラチナベース化学療法との併用療法、に用いられている。
切除可能なNSCLCに対しては、これまでの試験で、術後補助免疫療法および術前補助免疫療法の使用による一定の効果を示している。しかし、Heymach氏は、これまでのところその効果はわずかであると述べた。MDアンダーソンは、患者の転帰を改善するために、術前補助療法を用いた効果について長年の集学的な取り組みを行っている。NEOSTAR試験やNeoCOAST試験など、数多くの臨床試験が、手術前に生存腫瘍を除去し、再発率を下げるための術前補助免疫療法や新しい組み合わせについて評価している。
第3相AEGEAN試験は、未治療の2A~3BのNSCLC成人患者を対象に、プラチナベース化学療法にデュルバルマブを周術期に追加する有用性を評価する無作為化二重盲検プラセボ対照試験である。合計802人の患者を各群に1:1で無作為に割り付けた。本試験の主要評価項目は、中央検査機関で評価されるpCRおよび盲検化された独立中央審査によるEFSである。
EGFR/ALK変異を有する患者は修正ITT解析集団から除外された。デュルバルマブ群366人、プラセボ群374人の合計740人の患者が有効性の評価に組み入れられた。各群の患者の年齢中央値は、65歳であり71.6%は男性であった。患者は白人53.6%、アジア人41.5%、その他4.9%であった。
全体として、この治療法は高い忍容性が示され、また副作用はこれまでの試験と同様であった。研究者らはデュルバルマブ群で42.3%、プラセボ群で43.4%の患者に最大グレード3~4のあらゆる原因の有害事象を観察した。
pCRとEFSの有用性は、事前に定義された患者サブグループ間で、いずれもほぼ一貫していた。本試験では、長期EFS、無病生存、全生存の評価を継続している。
「本試験は、デュルバルマブを用いた術前補助療法と術後補助療法の組み合わせが患者さんに利益をもたらし、切除可能な非小細胞肺がん患者さんの標準治療を変える可能性があることを示しています」と、Heymach氏は述べた。「今後、必要以上の治療を行わずに、より効果的なレジメンをいかに構築するかという一連の問題に直面している」。
Heymach氏は今後の試験で、どの患者が術前補助療法による最大限の恩恵を受けてその後の治療を回避することができるのか、どの患者が術前補助療法にもかかわらず再発の危険性が高くて有効な術後補助療法の必要性があるのか、を今後の研究で明らかにしなければならない、と説明した。
- 監訳 田中文啓(呼吸器外科/産業医科大学)
- 翻訳担当者 三宅久美子
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- 原文掲載日 2023/04/16
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