扁平上皮癌を除く非小細胞肺癌に対するアバスチン+化学療法の安全性が臨床試験で評価

キャンサーコンサルタンツ
2010年7月

進行非小細胞肺癌患者(ただし、扁平上皮癌患者を除く)に対するアバスチン(ベバシズマブ)+標準化学療法に関して第3相試験で報告された安全性と有効性が実地臨床でも当てはまることが、大規模な第4相試験により確認されている。この結果は先頃、Lancet Oncology誌で発表された。[1]

肺癌は米国と欧州で癌死亡原因の第1位である。肺癌で最も多いタイプは非小細胞肺癌(NSCLC)である。

アバスチンは、VEGFと呼ばれるタンパク質を阻害する分子標的薬剤である。VEGFは血管新生において重要な役割を果たしている。アバスチンは、VEGFを阻害することにより、癌から栄養と酸素を奪い、癌の増殖を抑制する。アバスチンは、乳癌、肺癌、大腸癌、腎臓癌、神経膠芽腫患者の一部に対する治療で承認されている。

先の第3相試験で、進行したNSCLCの初回治療として、アバスチンと化学療法の併用は、化学療法単独と比べ、転帰予後が良好であることが実証されている。[2][3] 最近になって、臨床試験と比較して、実地臨床でのアバスチンの安全性を検討する試験が実施された。この種の試験を第4相試験という。

この試験では、局所進行性、転移性、あるいは再発性の非扁平上皮NSCLC患者2,200人が評価された。患者はアバスチン+化学療法を6サイクル受け、その後癌が進行するまでアバスチンを単独投与された。

実地臨床における副作用の発生率は、予想されたとおり、臨床試験で報告された発生率とほぼ同程度であった。重篤な副作用(グレード3以上)には以下が含まれる。

* 高血圧(6%)
* 悪心・嘔吐(3%)
* 好中球減少(6%)
* 発熱性好中球減少症(3%)
* 血栓症(8%)
* 出血(4%)

今回の試験で報告された全生存期間の中央値は14.6カ月であった。全体的に見て、アバスチンと併用された標準化学療法のレジメンの種類にかかわらず、有効性は一貫していた。

研究者の結論によれば、進行した非扁平上皮NSCLC患者に対し、アバスチン+標準化学療法の後アバスチンを単独投与するレジメンは、良好な安全性プロファイルを有し、日常診療において臨床的有用性が認められる。

参考文献
[1] Crinò L, Dansin E, Garrido P, et al. Safety and efficacy of first-line bevacizumab-based therapy in advanced non-squamous non-small-cell lung cancer (SAiL, MO19390): a phase 4 study. The Lancet Oncology. [Early online publication July 21, 2010].

[2] Reck M, von Pawel J, Zatloukal P, et al. Phase III trial of cisplatin plus gemcitabine with either placebo or bevacizumab as first-line therapy for nonsquamous non-small-cell lung cancer: AVAil. Journal of Clinical Oncology. 2009;10;27:1227-34.

[3] Sandler A, Gray R, Perry MC, et al. Paclitaxel-carboplatin alone or with bevacizumab for non-small-cell lung cancer. New England Journal of Medicine. 2006; 355: 2542-2550.


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翻訳担当者 丸野有利子

監修 田中文啓(呼吸器外科/兵庫医科大学病院・准教授)

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