非小細胞肺がんにトリパリマブ+化学療法で無イベント生存を改善

米国臨床腫瘍学会(ASCO)

ASCOの見解

「この研究は、外科的に切除可能なIII期の非小細胞肺がん患者において、外科的切除前に行う術前免疫療法薬+化学療法という現在の標準治療に、新しく周術期免疫療法のパラダイムを立てる可能性を示しています」
- ASCOの肺がん専門医であるCharu Aggarwal医師・公衆衛生学修士


周術期化学療法にtoripalimab[トリパリマブ]を追加することによって、III期の切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)の無イベント生存期間が改善したとの研究結果が、米国臨床腫瘍学会(ASCO)プレナリーシリーズの2023年4月セッションで発表される。 

第3相Neotorch試験の解析では、中国のIII期NSCLC患者404人を、抗PD-1モノクローナル抗体トリパリマブまたはプラセボのどちらかと化学療法とを組み合わせて、3週間ごとに手術前3サイクルおよび手術後1サイクルを行い、その後トリパリマブまたはプラセボ単剤を3週間ごとに13サイクル行うように、1対1で無作為に割り付けた。中央値18.3カ月の追跡調査後、トリパリマブ投与群において無イベント生存期間が有意に改善した。無イベント生存期間中央値は、トリパリマブ投与群では未到達(すなわちがんが再発または進行した患者は半数以下)、プラセボ投与群では15.1カ月だった。

主要な病理学的奏効率(major pathological response rates、残存腫瘍細胞が10%以下)および病理学的完全奏効率(pathologic complete response rates、活性がん細胞が消失)は、プラセボ群と比較してトリパリマブ群で高かった(それぞれ48.5% vs 8.4%、24.8% vs 1.0% )。また、全生存期間は、プラセボ+化学療法と比較して、トリパリマブ+化学療法に有利な傾向が観察された。全生存期間については、引き続き追跡調査を行う。

無イベント生存期間の延長はPD-L1発現が陽性の患者でより顕著であったが、PD-L1発現の状態にかかわらず、すべてのNSCLC患者にトリパリマブ治療の効果が認められた。

「Neotorch試験は、早期NSCLCにおける周術期治療としての抗PD-1抗体の有効性と安全性に関するデータを提示したはじめての試験であり、抗PD-1抗体治療の投与量と治療期間の選択に関する根拠を提供しました」と、本研究の主執筆者である上海交通大学のShun Lu博士は述べた。「これらの知見は、抗PD-1抗体治療+化学療法を切除可能なNSCLCの治療の柱として確立すべき根拠を示しており、近い将来、臨床診療を変えることになるでしょう」。

アブストラクトとプレゼンテーション

  • 監訳 川上正敬(肺癌・分子生物学/東京大学医学部附属病院 呼吸器内科)
  • 翻訳担当者 奥山浩子
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  • 原文掲載日 2023/04/19

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