あらゆる病期の肺癌において外科手術は生存率を改善しうる
キャンサーコンサルタンツ
2006年9月
ノルウェーの研究者らは、局所進行型や転移した肺癌患者を含む同疾患患者の治療成績が、肺癌の外科的切除により改善され得ると報告した。この試験の詳細は、Thoraxの2006年8月号に掲載されている。
肺癌の治療は主として病期、すなわち、肺癌の進行度に基づいている。また、適切な治療を選択する際は、患者の全体的な健康度も考慮する。一般的に、肺癌の切除はI~Ⅱ期の切除可能な状態にある患者に対して行われる。さらに進行した肺癌患者に対しては、放射線療法や化学療法を用いて治療する。疾患の全体的な管理に肺癌の原発巣の切除が及ぼす影響に関するデータは、たとえ存在したとしてもわずかである。しかし、腎細胞癌などの他の進行性疾患あるいは転移性疾患では、原発性癌を切除することが有益となることがある。これは、免疫機序が腎細胞癌の管理に関与するためであろう。
非小細胞肺癌(NSCLC)患者について、手術可能なⅠ期の治療に対して放射線療法が手術と同等に効果的であることを示唆するエビデンスがある(関連ニュース略)。これらのデータにより、肺癌の外科的切除は重要であるという概念に疑問が生じる。
最近行われた本試験では、1993年~1999年に肺癌と診断されて外科的切除を受けた患者3,211名のデータが用いられた。この患者集団の長期生存に関するデータは限られているため、生存率について評価した。
- 5年生存率は、Ⅰ期の肺癌と診断された患者では58.4%、Ⅱ期の患者では28.4%、ⅢA期の患者では15.1%、ⅢB期の患者では24.1%、Ⅳ期の患者では21.1%であった。
- 以下の特性を有する患者では、それ以外の患者と比較して、生存率が低下する傾向にあった:男性、高齢、上葉切除術または中葉切除術(肺葉の切除)以外の手術手技を施されたこと、腺癌および大細胞癌以外の種類の癌であったこと、手術部位が体の右側であったこと、外科的に切除された癌標本の端に癌細胞が認められたこと、癌のサイズが大きかったこと。
標準療法と比較して、肺癌を外科的に切除された患者では、たとえ病期が進行している患者であっても5年生存率は非常に良好と思われる、と研究者らは結論付けた。さらに、「これらの結果から、腫瘍の大きさと多発腫瘍のカテゴリー化に関する肺癌の最新TNM分類について、その妥当性が疑われる」と述べている。このコメントが意味するのは、今回の試験結果から、肺癌患者の治療法を決定する際に用いる標準的手段について、問題が提起されたということである。
コメント:
この試験は、進行型肺癌に対する手術により肺癌患者のアウトカムが改善されるということを証明してはいない。しかし、フォローアップするべき興味深い試験である。通常、この試験で示されているように、治療としての切除術を受けることのできない患者には手術を避けるが、総合的な治療計画としては大部分の腫瘍を切除することは有益であると考えられる。この問題は、標準療法に加えて手術を受ける群もしくは受けない群に比較可能な患者を割付ける、プロスペクティブなランダム化試験においてのみ、解決することができるであろう。
参考文献:
Strand T-E, Rostad H, Moller B, Norstein J. Survival After Resection of Primary Lung Cancer: a Population Based Study of 3211 Resected Patients. Thorax. 2006; 61:710-715.
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