非小細胞肺癌における免疫抱合体であるSGN-15+タキソテール

キャンサーコンサルタンツ
2006年10月

多施設試験に携わった研究者の報告によれば、難治性非小細胞肺癌の治療に、免疫抱合体であるSGN-15にタキソテールを追加すると、タキソテール単剤治療よりも高い効果が得られる可能性がある。このランダム化試験については、Lung Cancer誌2006年10月号に詳細が掲載された。SGN-15は、キメラ化抗ルイスY(LeY)モノクローナル抗体BR96で構成されドキソルビシンと結合した、モノクローナル抗体とドキソルビシンの免疫抱合体である。ルイスY抗原は、悪性肺腫瘍上皮の90%に存在する糖タンパク質である。ルイスY抗体は、ルイスY抗原の細胞表面に結合し、ドキソルビシンの投与部位で内在化する。ドキソルビシンは理論上腫瘍細胞のみを標的とし、正常細胞は対象としない。

アメリカのさまざまな研究所の研究者らは、転移性もしくは再発性の非小細胞肺癌に対し、SGN-15にタキソテールを併用した治療法を評価する臨床試験を実施した。この試験は、癌腫瘍にLeYを発現した患者62名を対象とし、SGN-15にタキソテールを併用した治療群と、タキソテール単剤治療群に分けた。

●1年生存率は、SGN-15とタキソテール併用治療群で29%、タキソテール単剤治療群で24%であった。
●18ヶ月生存率は、タキソテール単剤治療群が8%しかなかったのに対し、SGN-15とタキソテール併用治療群では18%であった。
●副作用については、報告によれば両群ともに軽度であった。
SGN-15による治療を受けた患者の生活の質(QOL)を分析すると、実際に著しく改善していた。

上記の研究者達は、転移性もしくは再発性非小細胞肺癌患者に対し、SGN-15とタキソテールの併用治療が、タキソテール単剤治療に比較して18ヶ月生存率が良好であったと結論づけた。研究者達は、この治療困難な疾病患者へのSGN-15使用の可能性を探るためには、他の化学療法との併用を評価する試験が今後も必要であると述べている。

コメント

SGN-15は有望な薬剤ではあるが、Seattle Genetics社が第二世代の免疫抱合体のために本剤の臨床試験を中止すると発表しており、今後の試験計画については不明である。


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 Chachan 

監修 瀬戸山修(薬学)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性の画像

肺がん患者は病気や治療を肯定的に捉えると転帰が改善する可能性

世界的に肺がんはがんによる死亡原因のトップであるが、その心理的、身体的な影響についてはほとんど研究されていない。オハイオ州立大学総合がんセンター アーサー・G・ジェームズがん病院および...
欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライトの画像

欧州臨床腫瘍学会(ESMOアジア2024)ハイライト

ESMOアジア会議2024は、アジア地域における集学的腫瘍学に特化した年次イベントである。新しい治療法、特定のがん種の管理に関する詳細な議論、アジア全域を対象とした臨床試験、アジア地域...
米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認の画像

米FDAが、非小細胞肺がんと膵臓腺がんにzenocutuzumab-zbcoを迅速承認

2024年12月4日、米国食品医薬品局は、以下の成人を対象にzenocutuzumab-zbco[ゼノクツズマブ-zbco](Bizengri[販売名:ビゼングリ]、Merus NV社...
STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効の画像

STK11/KEAP1変異肺がんに免疫療法薬2剤+化学療法が有効

進行非小細胞肺がんでSTK11/KEAP1変異を有する患者への併用療法により転帰が改善

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、腫瘍抑制遺伝子であるSTK11/KEAP1に...