NSCLCにおいて確認されたネクサバールの役割

キャンサーコンサルタンツ
2006年11月

2006年11月にニューヨークで開催された第24回Chemotherapy Foundation Symposium(化学療法基金シンポジウム)でフォックス・チェイスがんセンターのCorey Lange博士が非小細胞肺癌の治療におけるNexavar (sorafenib) の状況について概説した。

ネクサバール[Nexavar]は経口で有効なマルチキナーゼ阻害剤で、進行性の腎細胞癌の治療に対する米国食品医薬品局(FDA)の承認を得ている。ネクサバールは広範囲の抗腫瘍効果があり前立腺癌およびメラノーマなど他の多様な癌についても研究されている。ネクサバールは非小細胞肺癌の治療においても有意な有効性を示している。本シンポジウム、会議でLanger博士は非小細胞肺癌の治療におけるネクサバールの最新のデータを確認し、進行中の臨床試験について述べた。[1]

Langer博士は2005年および2006年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)の会議で発表された、非小細胞肺癌をネクサバールで治療したデータを検証した。

あるパイロット研究で、再発性の非小細胞肺癌の患者6例にネクサバールR単剤を投与した。[2]本試験では単剤では患者2例が部分奏効し、他の2例で疾患の安定が見られた。この結果、再発性非小細胞肺癌の患者52例に対してネクサバールR単剤での大規模臨床試験を行うことになった[3]。この臨床試験において、部分奏効または完全奏効した患者はいなかったが、59%で病勢の安定が見られた。無進行生存期間の中央値は2.7ヵ月で全生存期間の中央値は205日であった。グレードIVの毒性は認められなかった。ネクサバールの副作用として出血の可能性があるが、試験中に8%の患者で出血が認められた。試験において3例の患者が手足症候群、リパーゼ上昇、心筋梗塞のためにネクサバールの投与を中止した。クオリティ・オブ・ライフ(生活の質)の研究では、患者自身の報告によるとネクサバールは転帰と治療中の症状反応に悪影響を与えないと結論づけた。[4] 

難治性または再発性非小細胞肺癌の患者32例を対象としたNexavarとイレッサR(ゲフィニチブ)の併用療法を評価した第1相臨床試験の結果は、2005年次ASCO会議で発表された[5]。 部分奏効率は3%で得られ、疾患の安定は63%で得られた。無進行生存期間の中央値は4.5ヶ月であった。患者の10%が副作用のため本レジメンを中断した。ネクサバールとイレッサの併用は非小細胞肺癌の治療に対して安全であると結論づけられた。

他の第1/2相臨床試験において、増殖の早い進行非小細胞肺癌の患者15例の治療にネクサバールとタキソールR(パクリタキセル)およびパラプラチンR(カルボプラチン)を併用した。部分奏効率は29%で病勢安定は50%であり、病勢コントロール率は79%であった。奏効期間の中央値は25週、無進行生存期間の中央値は7.5ヶ月であった。ネクサバールにタキソールおよびパラプラチンを付加することで毒性は増加しないように思われた。

Langer博士は、進行した非小細胞肺癌の患者においてネクサバールを評価する現在実施中の臨床試験(ECOG 2501)について概説した。本試験は、ネクサバールを単独投与され、奏効および安定が得られた患者を維持療法としてのネクサバール投与群、または疾患の進行時点での投与群に無作為に割り付けた。Langer博士によると、この試験は予定された患者数の3分の2が登録されている。

コメント

非小細胞肺癌の治療においてネクサバールは有意な活性があるようであり、疾病経過の初期にテストされることは間違いないだろう。

参考資料
[1] Langer C. Emerging role of Sorafinib for the treatment of non-small cell lung cancer. Presented at Chemotherapy Foundation Symposium XXIV in New Your in November of 2006
[2] Liu B, Barrett P, Choyke K, et al. A phase II study of BAY 43-9006 (sorafenib) in patients with relapsed non-small cell lung cancer (NCLC). Journal of Clinical Oncology, 2006 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I, Vol 24, No 18S (June Supplement), 2006:abstract 17119.
[3] Gatzemeier U, Blumenschein F, Fosella R, et al. Phase II trial of single-agent sorafenib in patients with advanced non-small cell lung carcinoma. Journal of Clinical Oncology, 2006 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I, Vol 24, No 18S (June Supplement), 2006:abstract 7002.
[4] Gondek K, Dhanda R, Simantov R, et al. Health-related quality of life measures in advanced non-small cell lung cancer patients receiving sorafenib. Journal of Clinical Oncology, 2006 ASCO Annual Meeting Proceedings Part I, Vol 24, No 18S (June Supplement), 2006:abstract 17085.
[5] Adjei AA, Mandrekar S, Marks S, et al. A phase I study of BAY 43-9006 and gefitinib in patients with refractory or recurrent non-small cell-lung cancer (NSCLC). Journal of Clinical Oncology 2005 ASCO Annual Meeting Proceedings. Vol 23, No. 16S, Part I of II (June 1 Supplement), 2005:abstract 3067.


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翻訳担当者 吉村 祐実

監修 林 正樹(血液・腫瘍科)

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