デュルバルマブ術前/術後療法は切除可能な非小細胞肺がんの転帰を改善

米国がん学会(AACR)

AEGEAN試験において、手術前後にデュルバルマブ(販売名:イミフィンジ)をベースにした治療を行った患者は、疾患の再発や進行イベントのリスクが32%低下した。

第3相プラセボ対照AEGEAN臨床試験において、治療歴のない切除可能な非小細胞肺がん(NSCLC)患者のうち、術前デュルバルマブ療法+化学療法と術後デュルバルマブ単剤療法を受けた患者は、術前化学療法のみを受けた患者よりも無イベント生存期間(EFS)が延長し、病理学的完全奏効(pCR)が得られた。この試験結果は、4月14日~19日開催の2023年米国がん学会(AACR)年次総会で発表された。
 
発表者であるテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの胸部・頭頸部腫瘍内科部長のJohn V. Heymach医学博士は、次のように述べた。「非小細胞肺がんは、依然としてがん死因の第1位であり、切除した患者の約半数は再発しています。非小細胞肺がん患者の治癒率を高められる治療法があれば、飛躍的な進歩となるでしょう」。
 
最近の研究により、非小細胞肺がん、特にPD-1陽性の腫瘍を有する患者において、手術前に免疫チェックポイント阻害薬を用いる有益性が示されているが、より包括的な治療法で転帰を改善できるか否かについてはまだ確証がない、とHeymach博士は説明した。

ランダム化二重盲検プラセボ対照試験AEGEANでは、PD-L1発現の有無にかかわらず、治療歴のない切除可能な非小細胞肺がん患者802人を術前デュルバルマブ+プラチナベース化学療法と術前プラセボ+プラチナベース化学療法のいずれかに無作為割付(1:1)して3週ごとに4サイクル投与し、手術後にデュルバルマブまたはプラセボのいずれかを4週ごとに最長12サイクル継続投与した。

腫瘍にEGFR/ALK変異がある患者を除外した後、修正ITT解析(治療意図による解析)対象患者740人について、予定されていた今回の中間解析において、主要評価項目である無イベント生存期間(無作為割付から、根治的手術が不可能な病勢進行、疾患再発、死亡などのイベントまでの期間と定義)を評価した。最終解析において、追加の主要評価項目である病理学的完全奏効(術前療法後の切除標本(リンパ節を含む)に生存腫瘍が残存していない状態と定義)を評価した。

術前療法後の病理学的完全奏効では、治療群では17.2%、プラセボ群では4.3%であり、13.0%の差が認められた。

全体として、術前療法後に手術を受けた患者は、治療群では77.6%、プラセボ群では76.7%であった。

Heymach博士は、次のように語った。「試験前には、術前免疫療法を行うことで、一部の患者が手術に進むことが難しくなるのではないかという懸念がありました。しかし実際には、うれしいことに両群でほぼ同数の患者が手術を受けられ、術前免疫療法を追加しても根治的手術に至る患者数は減少しないということが示唆されました」。

追跡期間の中央値11.7カ月後、無イベント生存期間の中央値はデュルバルマブベース治療群では未到達、化学療法単独群では25.9カ月であった。デュルバルマブベース治療群は、化学療法単独群と比較して、根治的手術を必要とする病勢進行、病勢再発、死亡のリスクが32%減少した。
  
何らかの原因によるグレード3~4の有害事象については、デュルバルマブベース治療群では42.3%、化学療法単独群では43.4%に認められた。Heymach博士は、有害事象に関するデータは先行試験と一致しており、治療関連の予期せぬ有害事象は観察されなかったことを指摘した。

Heymach博士は、次のように述べた。「本試験において、主要評価項目である病理学的完全奏効が改善し、病勢進行、再発、死亡の可能性も有意に低下したことをうれしく思います。現在、転帰の改善を示す複数の治療法が存在することは、非小細胞肺がん患者にとっては朗報です。今回の試験で、この効果的なバックボーンをうまく用いて新たな併用療法の設計を可能にする基礎が築かれました。
 
本件は、非小細胞肺がん患者集団に対する新たな治療方針ですが、集学的チームからの投入が必要であり、腫瘍内科、分子病理学、外科腫瘍学チームの統合が進み、臨床転帰を改善するために、すべてのチームが協力する必要があります」。

治療歴のない切除可能な非小細胞肺がん患者に対する本治療法の影響を完全に理解するためには、全生存期間を含む副次評価項目に関するデータが今後必要になるとHeymach博士は指摘した。

  • 監訳 小宮武文(腫瘍内科/Penn State College of Medicine)
  • 翻訳担当者 平 千鶴
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  • 原文掲載日 2023年4月18日

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