イレッサ®が高齢の非小細胞肺癌(NSCLC) 患者で有効性が確認される

キャンサーコンサルタンツ
2008年10月

イレッサ(ゲフィチニブ)は、高齢の非小細胞肺癌(NSCLC)患者の初期治療に有効かつ忍容性も高いと、日本の研究者らが報告した。この試験の詳細は、Journal of Thoracic Oncology誌の2008年10月号に掲載された。

イレッサの経口剤は、米国においてプラチナ製剤およびタキサン系抗癌剤が奏効しなかった進行NSCLCの単剤療法として承認されている。イレッサは、上皮増殖因子受容体(EGFR)であるチロシンキナーゼを選択的に阻害する。EGFRは、NSCLC等、多くのヒト固形腫瘍で発現、過剰発現、または異常に調整されている。この受容体を活性化すると、アポトーシスをブロックし、細胞の増殖や接着、浸潤能力および運動性を増大させることによって、腫瘍の増殖を促進すると考えられている。奏効性のある肺腫瘍は、腺癌または細気管支肺胞上皮癌である可能性が高く、非喫煙者や女性により多く奏効がみられた。また、EGFRに特異的な変異がある症例のほうが奏効することが多かった。

高齢の進行NSCLC患者に対する緩和治療は、化学療法に関連した重篤な毒性をおこす場合が多い。NSCLC治療にイレッサを使用する主な利点は、難治性の患者で有害な副作用なしに単剤で奏効が得られることと思われる。イレッサは、骨髄毒性はないものの、嘔気、嘔吐、下痢、発疹、にきびや肌の乾燥を引き起こす。最近実施されたイタリアの試験の結果、イレッサが高齢の再発進行NSCLC患者で有効性が確認された。主要な副作用の発生は、年齢差がないとみられ、これらの研究者は、イレッサが高齢NSCLC患者の緩和治療には安全な薬剤だったと結論づけている。しかし、進行NSCLCの初期治療でのイレッサの有効性データは限られている。

今回の試験は、75歳以上(中央値80歳)の未治療の進行NSCLC患者49人を対象とした。49人のうち40人は腺癌で、32人は女性であった。奏効率は25%で、1年生存率は50%であった。発疹が最も多くみられた副作用であった。EGFR変異があった7人のうち、5人に部分奏効がみとめられた。著者たちは、「ゲフィチニブ単剤療法は、高齢で未治療の進行NSCLC患者に対して有効性があり、忍容性も比較的高い」と、結論づけている。

コメント: 

これはイレッサ単剤療法が一部の高齢の進行NSCLC患者に著しい緩和をもたらすことのさらなるエビデンスである。

参考文献:
1Ebi N, Semba H, Tokunaga SJI, et al. A phase II trial of gefitinib monotherapy in chemotherapy-naive patients 75 years or older with advanced non-small cell lung cancer. Journal of Thoracic Oncology 2008;3:1166-1171.


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翻訳担当者 廣井 初美

監修 林  正樹 (血液・腫瘍科)

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