補助療法としてのパクリタキセル+カルボプラチンにIB期NSCLCの生存期間延長効果は認められない

キャンサーコンサルタンツ
2008年11月

CALGB試験9633に属する研究者らは、補助化学療法を受けたIB期非小細胞肺癌(NSCLC)患者の生存期間に統計学的に有意な優位性は認められないと報告した。この研究の詳細はJournal of Clinical Oncology誌の2008年11月1日号で発表された[1]。

米国臨床腫瘍学会ガイドラインではNSCLCの補助療法について、シスプラチンをベースとした補助化学療法はIIA期、IIB期、IIIA期のNSCLC患者に対し日常的に使用することを推奨すると提示されている。補助化学療法はIA期NSCLC患者に用いることは推奨されていない。IB期NSCLCの場合の補助化学療法の有用性はまだ明らかにされておらず、ガイドラインはIB期NSCLC患者に補助化学療法を日常的に使用することは薦めていない。

Cancer and Leukemia Group B (CALGB)試験9633は、IB期NSCLCに対して特に計画された唯一の無作為化臨床試験である。IB期NSCLC患者344人が、術後4-8週間以内に補助化学療法群(パクリタキセル+カルボプラチン)または経過観察群のいずれかに無作為に割り付けられた。患者の経過観察期間の中央値は74ヵ月であった。化学療法群(173人)では、補助療法の忍容性は高く治療による死亡はみられなかった。主な毒性はグレード3-4の好中球減少で、患者の35%にみられた。

研究者らは試験データの解析を行ったが、両群の生存期間に統計学的な有意差はみられなかった(補助化学療法群では74人、経過観察群では81人が死亡)。さらに探索的データ解析が行われ、腫瘍サイズと化学療法による有用性の相関関係が検討された。この解析により、直径4cmを超える腫瘍を有する患者が補助化学療法を受けた場合には有意な延命効果が得られることが認められた。

コメント:

これらの研究者は、生存期間に有意な優位性は示されなかったことから、補助化学療法はIB期NSCLCの標準治療として考えるべきではないと結論づけた。しかしこれら研究者は、腫瘍径が大きいIB期NSCLC患者には補助化学療法を検討すべきであると提言している。

参考文献:
[1] Strauss GM, Herndon JE, Maddaus MA, et al. Adjuvant paclitaxel plus carboplatin compared with observation in stage IB non-small cell lung cancer: CALGB 9633 with the Cancer and Leukemia Group B, Radiation therapy Oncology Group and Nort Central Cancer Treatment Group study groups. Journal of Clinical Oncology. 2008; 26: 5043-5051.


 c1998- 2009CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 河野裕子

監修 古瀬清行(呼吸器内科)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

肺がんに関連する記事

【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等の画像

【ASCO2024年次総会】進行肺がんの早期緩和治療で遠隔医療と対面ケアの有効性は同等

ASCOの見解(引用)「進行非小細胞肺がん患者において、早期の緩和ケアは生存期間を含む患者の転帰を改善することが研究で示されています。この大規模ランダム化試験で、遠隔医療による...
【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長にの画像

【ASCO2024年次総会】進行肺がん(NSCLC)、ロルラチニブで無増悪生存期間が最長に

ASCOの見解(引用)「これらの長期データの結果は並外れて良く、この研究でALK陽性非小細胞肺がん患者に対する一次治療薬としてのロルラチニブ(販売名:ローブレナ)の優れた持続的...
【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性の画像

【ASCO2024年次総会】オシメルチニブは局所進行EGFR変異NSCLCの標準治療を変える可能性

ASCOの見解(引用)「LAURA試験は、切除不能なステージIII疾患におけるEGFR標的療法の役割を明確にした最初の試験である。本試験ではオシメルチニブと現在の標準治療である...
周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善の画像

周術期ニボルマブ+化学療法が肺がんの転帰を改善

周術期におけるニボルマブ+化学療法併用により、化学療法単独と比較して疾患の再発、進行、または死亡の確率が有意に低下することが第3相試験で明らかに

テキサス大学MDアンダーソンがんセンター...