EGFR阻害薬耐性肺がん細胞に新たな標的CD70を発見

MDアンダーソンがんセンター

前臨床試験で、CD70を標的とした細胞療法、抗体薬物複合体による耐性腫瘍細胞の除去を確認


テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らは、EGFR変異型非小細胞肺がん(NSCLC)の薬剤耐性がん細胞にCD70が高発現していることを突き止め、一般的に使用されているEGFRチロシンキナーゼ阻害薬 (TKI) による治療後に残存する耐性細胞を除去するための新しい治療標的となる可能性があることを強調した。本日、Cancer Cell誌に掲載された。

前臨床研究を主導したのはMonique Nilsson博士と、胸部および頭頚部腫瘍内科の部長である共著者のJohn Heymach医学博士である。研究者らは、免疫細胞に通常みられる細胞表面タンパクであるCD70が、TKI治療直後の残存がん細胞だけでなく、耐性細胞にも高度に過剰発現していることを発見した。彼らは、実験室モデルにおいて、CD70を抗体薬物複合体 (ADC) または細胞療法でこれらの細胞を標的とするために効果的に使用できることを示した。

「TKI治療で残存したがん細胞は、本質的に将来の耐性細胞が成長するための貯蔵庫です」 とHeymach氏は述べた。「これらの研究結果は、最初に効果的な治療を行い、すぐにこれらのCD70標的薬を使用して残存細胞を除去するという、非常に有望なアプローチの土台作りに寄与しました」 。

NSCLC患者の約10~15%にEGFR変異が認められる。EGFR TKIによる治療はほとんどのがん細胞を死滅させるのに有効であるが、少数の薬物耐性細胞は残存する。このような細胞は、長期間休眠状態で、目に見えないことさえあるが、やがて増殖し転移する。

腫瘍細胞は、上皮間葉転換(EMT)を含むいくつかの機序により、EGFR TKIに対して耐性を獲得することができる。EMTを経た腫瘍は、ほとんどの既存の薬剤に対して広範な耐性を獲得するため、再発患者の予後は悪く、この獲得耐性の背後にある機序を理解するために重大な、未だ達成されていないニーズを強調している。

本試験の研究者らは、治療抵抗性NSCLC細胞の細胞表面タンパクの統合解析を行い、CD70を特定した。さらに調査を進めると、残存する薬剤耐性細胞でもCD70の過剰発現が亢進されていることが確認され、CD70の増加が耐性疾患発症の初期イベントであることが示唆された。

「CD70が薬剤耐性の進展の初期段階で亢進されることを発見できたことは、本当に励みになりました。なぜなら、CD70が完全な耐性を獲得するのを待たずに、治療抵抗性NSCLC細胞を迅速に標的にできるからです」とNilsson氏は述べています。

この発見に基づき、研究者らは、in vitroおよびin vivoの双方で治療抵抗性NSCLC細胞を標的とするためにCD70を効果的に使用できることを実証した。抗CD70 ADCならびにCD70標的キメラ抗原受容体(CAR)T細胞、およびCARナチュラルキラー(NK)細胞はそれぞれ、実験室モデルで薬剤耐性のある残存細胞を除去し、顕著な抗腫瘍活性を示した。

本試験では肺がんとの関連でCD70に着目したが、この過剰発現は乳がん、膵臓がん、卵巣がん、腎臓がん、メラノーマなどのさまざまながんの種類でも認められる。

「EGFR阻害薬耐性から得られた教訓は、より広範に適用可能であり、これらの変異を越えて、EMTまたは他の種類の治療抵抗性機序を最終的に発現する他の腫瘍型にも適用できる可能性があると考えている」とHeymach氏は述べた。

著者らは、CD70に基づく治療戦略は現在、他の悪性腫瘍を対象とした臨床試験が行われており、次段階として、この特定の肺がんにも適用することを挙げている。

本試験は、Mugnaini Fund、David Bruton, Jr.Chair、Rexanna's Foundation for Fighting Lung Cancer、National Institutes of Health/National Cancer Institute (5 P 40 CA 070907、CA 016672、1 R 01 CA 247975、1 R 01 CA 190628、1 R 50 CA 265307、1 R 01 CA 240257、および1 R 01 CA 234183-01 A 1)、MD Anderson's Lung Cancer Moon Shot ®、Lerryn M.Carl Endowment for Lung Cancer Research、Stading Fund for EGFR inhibitor resistance、Fox Lung EGFR Inhibitor Fund、Hanlon Fund、Richardson Fund、The Kopelman Foundation、Hallman Fund、Exon 20 Group、およびCancer Prevention and Research Institute of Texas (CPRIT) から支援を受けた (RP 120348およびRP 170002) 。共著者の全リストと著者の開示はこちら

  • 監訳 稲尾崇 (呼吸器内科/神鋼記念病院)
  • 翻訳担当者 三宅久美子
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  • 原文掲載日 2023/02/13

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