2007/4/3号◆癌研究ハイライト「ラパマイシンはマウスにてタバコ誘発性肺癌を予防」

同号原文

NCI Cancer Bulletin2007年4月3日号(Volume 4 / Number 14)

NCIキャンサーブレティン顧問:古瀬清行
●2007/4よりNCI隔週発行となりました
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◇◆◇癌研究ハイライト ◇◆◇

ラパマイシンはマウスにてタバコ誘発性肺癌を予防する

NCIのCenter for Cancer Research(CCR)(癌研究センター)の研究者らは、免疫抑制剤であるラパマイシン[rapamycin]は、通常は,臓器移植および骨髄移植に対する生体の拒絶反応を防ぐため、また心臓ステントをコートするためにも使用されるが,マウスにおいてタバコ関連肺腫瘍の発達を抑制する上で非常に有効であるという新しい所見を報告した。

Clinical Cancer Researchに4月1日付けで公表された本試験結果では、ラパマイシン(シロリムス[sirolimus])は肺腫瘍の発達に重要な役割を担うタンパク質mTORを抑制させたことが示されている。本試験では、肺癌の治療および予防を目的としてラパマイシンについて検討した。

研究者らは、タバコに含まれる前発癌物質NNKにマウスを曝露させた。1週間後から1日置きにラパマイシンを投与させたマウスでは、腫瘍の数が90%減少し、また腫瘍の大きさは74%減少した。NNK曝露後に26週間ラパマイシンを投与させたマウスでは、対照群と同等の割合で腫瘍が発達し続けたが、腫瘍サイズは小さく、急速な発達は認められなかった。

CCRのMedical Oncology Branchにおける情報伝達セクション(Signal Transduction Section)の主任であるPhillip A. Dennis医師は次のように述べている。「我々の試験から、タバコに含まれる重要な発癌物質NNKへの曝露とmTORとの間における興味深い関連性が明らかとなった。重大な問題点は、この方法が肺癌を発症するリスクの高い喫煙者に対して安全かつ有効であるか否かである。ラパマイシンは比較的安価であり、他の適応症に対してFDA承認を受けていることを考慮して、われわれはヒトを対象とした臨床試験を計画しており、これらの問題点に取り組んで近い将来答えを出せるよう望んでいる。」

さらなる研究を実施して、マウスにおける抗腫瘍効果を示すラパマイシンの用量でヒトでも達成可能であるか否か、抗腫瘍効果に十分な用量の投与は容認できないほどの免疫抑制あるいは毒性を引き起こすか否かについて検討する必要がある。

前立腺癌の新ガイドラインは,早期治療か「慎重な待機療法」の熟考を推奨

前立腺癌治療のためのアンドロゲン抑制療法(ADT)に関する米国臨床腫瘍学会(ASCO)発行の最新ガイドラインによると、早期ADTは「慎重な待機療法」よりも、転移性あるいは増殖性疾患を有する男性に対して生存上の優位性を与えるものではなく、早期ADTを強く推奨しないことを述べている。

本ガイドラインはJournal of Clinical Oncologyの4月2日号に掲載され、ASCOウェブサイトで閲覧できる。最新版を作成するために専門勧告委員会が検討した内容の中には、最近のランダム化比較対照試験、メタ解析や体系的レビューの結果、いくつかの進行中試験からのデータが含まれる。

これらの検討結果に基づいて同委員会は、ADTを早期に開始することで前立腺癌を原因とする死亡のリスクが17%減少するが、全体的な死亡リスクが15%増加するため、「慎重な待機療法」よりも好ましい選択肢としてADTを推奨できないと結論付けた。

本ガイドラインの代表執筆者であるトロント・サニーブルック地域がんセンターのAndrew Loblaw医師は、「医師は早期ADTと別の療法のリスクとベネフィットについて患者と話し合うことが望ましく、患者が別の療法を望む場合は、患者は,、疾患をモニターするために3~6ヵ月毎に定期的に受診することが望ましい」と述べている。

また本ガイドラインには、現在あるエビデンスでは,ADT療法開始時には、両側精巣摘出術あるいは黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)が推奨選択肢であることを示唆していると記載されている。さらに同委員会は、精巣摘出術あるいはLHRHを併用する非ステロイド抗アンドロゲン療法である「併用アンドロゲン遮断療法」と呼ばれる選択肢を支持する強力なエビデンスを見つけている。

翻訳担当者 斉藤 芳子  

監修 瀬戸山 修 (薬学)

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原文掲載日 

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