米2学会が電子タバコに関する共同方針を発表ーAACR/ASCO
2022年10月26日
米国癌学会(AACR)と米国臨床腫瘍学会(ASCO)は本日、電子タバコおよびその他の電子タバコ(電子ニコチン送達システム:ENDS、*以下、「電子タバコ」とする)の使用に関する最新の研究と、公衆衛生を守るためのこれらの製品の規制に関する勧告をまとめた共同方針声明を発表した。本声明は、AACRのClinical Cancer Research誌およびASCOのJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。
「青少年やタバコを吸わない成人の間で電子タバコが広がりを見せていることは、依然として公衆衛生上の重大な問題であり、数十年に及ぶ喫煙対策を頓挫させるおそれがあります」と語るのは、AACR会長でAACRフェローのLisa M. Coussens博士である。「これらの製品を使用する高校生が急増しているだけでなく、電子タバコが使用者を発がん性物質にさらし、他のタバコ製品を使い始める可能性も高めるというエビデンスが相次いで報告されていることから、私たちASCOの専門家らはともに危機感を覚えています。今日発表された声明は、これらの製品の脅威を軽減し、喫煙が引き起こす多くのがんに対抗する勢いを維持するために、大胆な規制措置とさらなる研究が急務であることを強調しています」
本声明は、青少年や若年成人の電子タバコ使用率の上昇に対処するため、このような製品を規制するよう米国食品医薬品局(FDA)に求めた2015年発表の電子タバコに関するAACR/ASCO共同声明に基づいてる。青少年や若年成人、さらには喫煙経験のない人の電子タバコ使用率が2015〜2019年に劇的に上昇したことから、規制が急務となっている。
COVID-19のパンデミックは、これらの製品のリスクに関する社会的認知の高まりやタバコ製品を購入できる最低年齢を21歳に引き上げる法律と相まって、2020~2021年の電子タバコ使用率の低下に寄与した可能性があるが、この低下は一時的なものであった。残念ながら、米国青少年タバコ調査の最新結果では、高校生の電子タバコ使用率は再び上昇を示している。2022年には推定200万人の高校生が電子タバコを使用しており、これは、2021年と比較して24%の上昇である。この状況は、電子タバコによる公衆衛生上のリスクに対する規制と科学的な注視を継続することの必要性を浮き彫りにした。
米国癌学会(AACR)と米国臨床腫瘍学会(ASCO)は共同で、ENDSに関する既存の研究を要約し、これらの製品によって引き起される潜在的な害を軽減するための方針を提案した。声明によると、
●電子タバコ(電子ニコチン送達システム:ENDS)は燃焼式タバコよりも発がん性物質の放出は少ないが、それでも、ENDSの使用とがん発症の重要なステップであるDNA損傷および炎症とを関連付ける予備的なエビデンスがある。
●2020年の調査では、電子タバコを使用する青少年の82%以上がタバコフレーバー以外のフレーバー付き製品を使用していると報告されており、魅力的なフレーバーは青少年の電子タバコ使用を促進する大きな要因となっている。
●最近、FDAがポッド式またはカートリッジ式電子タバコにタバコおよびメンソール以外のフレーバーを使用することを制限しているが、フレーバー付きのオープンタンク式製品や使い捨て製品は依然として市販されており、中高生の間で劇的に人気が高まっている。
●電子タバコを使用している青少年は、後に燃焼式タバコを吸うようになる可能性が高く、電子タバコを使用する人は電子タバコを使用したことがない人に比べて、燃焼式タバコを吸う可能性が2.9~4倍高いという研究結果がある。
「電子タバコの使用が健康に及ぼす長期的影響を十分に理解するにはさらなる研究が必要ですが、ニコチン中毒の、特に青少年に対する害はよく知られています」と、ASCO会長でASCOフェローのEric P. Winer医師は語る。「さらに、電子タバコが使用者を発がん性物質にさらし、青少年が燃焼式タバコを吸うようになる確率を高めることが次第に明らかになっていることから、州および連邦政府の政策立案者は、他の関係者と協力して、非喫煙者の電子タバコ使用を抑制する政策を進め、これらの製品が健康に及ぼす長期的影響を研究によって明らかにしていかなければなりません」
AACRとASCOは、政策立案者、規制当局、および研究団体に対し、特に青少年における電子タバコ使用を阻止するための対策を講じ、エビデンスに基づく禁煙治療を支援するよう呼びかけている。方針声明における具体的な勧告は以下のとおり。
●タバコフレーバー以外のニコチン含有製品はすべて禁止する
●天然または合成ニコチン含有するすべての製品に課税することで喫煙を減らし、公衆衛生を促進する
●タバコの販促広告の慣行、特に青少年に向けたものを規制する
●電子タバコを含むタバコ製品の販売は、入店時に年齢確認が必要な店舗または店舗内のエリアに限定し、タバコ製品を合法的に購入できる最低年齢の法執行を強化する
●電子タバコ使用が健康に及ぼす長期的影響を理解するために研究を支援する。
「このような重要なテーマについて、世界をリードする2つのがん研究機関の間で合意形成を図るこの取り組みの委員長を務められたことを誇りに思います」と語るのは、電子タバコ声明作成委員会およびAACR科学政策・政府問題委員会の委員長であり、イェールがんセンター副所長のRoy S. Herbst医学博士である。「電子タバコが特に青少年や非喫煙者に健康リスクをもたらすことは科学的に明らかです。この声明は、電子タバコの影響、およびニコチン中毒を減らすために政策立案者に何ができるかについて、待望の指針と最新の科学研究につながるでしょう」。
監訳:前田 梓(医学生物物理学/トロント大学)
翻訳担当者 工藤 章子
原文掲載日
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