電子たばこを毎日使用すると心疾患リスクが倍増

従来のたばこも合わせて毎日喫煙する場合、心疾患のリスクが5倍になることが研究で明らかになる。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)主導の新規研究によると、電子たばこを毎日使用すると、心臓発作を起こす可能性は2倍近くになるという。

今回の結果は、約10年前に登場し今では普及している電子たばこが健康にかなりの影響を及ぼすことを示す最初のエビデンスであり、これまで考えられていたより危険でありうることが示された。

7万人近い人を対象とした今回の新規研究の結果、電子たばこによる心臓発作のリスクは、従来のたばこの影響に上乗せされることがわかった。電子たばこを毎日使用した場合と、従来のたばこを毎日喫煙した場合のいずれも心臓発作を起こすリスクは3倍近くになるが、両方が重なる場合、まったく喫煙しない人と比べて心臓発作リスクは5倍になる。

この研究結果は、2月24日にボルチモアで開催されたニコチン・たばこ研究学会2018年年次総会で発表された。

「あらゆる喫煙のリスクに加えて、電子たばこの使用により心臓発作のリスクが増すということが特に厄介な問題で、その理由は電子たばこを使用する人の大半は喫煙も継続しているからです」と、研究結果を発表した統括著者のStanton Glantz博士は述べた。Glantz博士はUCSFの医学部教授およびUCSFたばこ管理研究・教育センター長である。

近年、科学界において、電子たばこの健康への影響は論議を呼ぶ話題であるが、電子たばこが直接の健康被害に結び付くとするエビデンスが増えている。

先月の全米科学・工学・医学アカデミーズからの報告は、電子たばこによるニコチンおよび他の有害物質への暴露から、電子たばこの使用が依存症の症状をもたらすという「実質的」エビデンスまで、電子たばこの広範にわたる健康への影響について言及している。報告によれば、電子たばこを使用している人における心臓、がんまたは呼吸器の疾患リスクのエビデンスはまだないが、長期間の使用でこれらのリスクが増す可能性があることが複数の動物実験で裏付けされている。

全米アカデミーズの報告は、電子たばこの健康影響が表れるまでには数十年を要することを指摘する一方、電子たばこの若い喫煙者に対する明らかな影響も示した。「若者は成人より電子たばこ使用率が高いのですが、電子たばこの使用により従来のたばこの喫煙へ移行するリスクが増すという十分なエビデンスがあります」。

電子たばこが送達する発がん性物質は従来のたばこより低いレベルだが、電子たばこの使用者は高レベルの超微粒子および他の毒性物質にも曝露され、それらは心血管疾患および非がん性肺疾患のリスク上昇に関連があると考えられている。これらの疾患による死亡者は喫煙に起因する全死亡者数の半数以上を占めている。

さらに、電子たばこは、一部の科学者および政策立案者が期待していたように従来のたばこから電子たばこへの切替えや完全禁煙を促進するのではなく、喫煙者が禁煙しようとする可能性を低下させるとともに、電子たばこを始める若者を増やすことによりニコチン市場も拡大していることを示す研究報告が増えている。

UCSFおよびジョージワシントン大学による今回の新研究は、69,725人を対象とした2014年および2016年の国民健康聞き取り調査(NHIS)のデータを利用し、従来のたばこの喫煙と、年齢、性別およびBMIなどの人口統計学的特性、高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの健康特性に関して検証した。

他のリスク因子で補正後、毎日の電子たばこの使用は、心臓発作(心筋梗塞)リスクの有意な上昇と関連し(オッズ比[OR]:1.79)、従来のたばこの毎日の喫煙もこれと同様であった(OR:2.72)。電子たばこの過去の使用歴および時々の使用は、心臓発作リスクと有意な関連はなかった一方、従来たばこの過去の喫煙歴および時々の喫煙は習慣的な喫煙者と比較すると小幅であるものの心臓発作リスクの上昇と関連していた。

「電子たばこは禁煙支援として広く促進されていますが、大部分の人においては、禁煙をより困難にしているのが現実であり、電子たばこを使用しながら喫煙を継続する、いわゆるデュアルユーザーになってしまう人が大半です」と、Glantz博士は述べた。「今回の研究は、電子たばこと従来のたばこのリスクは積み上がることを示しています。電子たばこを毎日使用しながら毎日の喫煙を継続する人は、心臓発作のリスクが5倍に上昇します」。

「良いニュースは、禁煙を始めれば速やかに心臓発作のリスクが低下するということです」と彼は加えた。「また、われわれの研究では、過去の電子たばこの喫煙歴があるだけではリスクがほとんどないことが示されています」。

共著者は、Alzahtani Talal医師、 Ivan Pena医師 、Nardos Temesgen医師(全員、ジョージワシントン大学在籍)である。

翻訳担当者 木下秀文

監修 橋本 仁(獣医学)

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