サバイバー全体で受動喫煙は減少するも、特定集団ではいまだ高い傾向
喫煙に関連のあるがんサバイバーと社会経済的に不利な状況にあるサバイバーは、受動喫煙率が高い傾向
1999/2000年から2011/ 2012年の期間において、非喫煙成人がんサバイバーの受動喫煙が39.6%から15.7%に低下した。一方で、喫煙に関連のあるがんに罹患したサバイバーの受動喫煙率は他のがんのサバイバーより高く、連邦貧困水準以下で暮らすサバイバーの受動喫煙率は、高所得サバイバー群に比べて高かった。この結果は米国がん学会のCancer Epidemiology、Biomarkers&Prevention誌に掲載された。
「喫煙しない成人がんサバイバーの受動喫煙率が米国の一般成人群に関して報告された受動喫煙率の数値と近いことがわかり、驚きました。」と、Montefiore New Rochelle Hospital(ニューヨーク州New Rochelle) 内科チーフ・メディカル・レジデントのOladimeji Akinboro医師(公衆衛生学修士)は述べた。「これは憂慮すべき状況です。なぜなら、がんに罹患している、もしくは罹患していた方々の健康転帰は、能動喫煙、受動喫煙のいずれかにかかわらず、たばこ曝露で悪影響を受けるからです」。
「がん患者やサバイバーに対して、家や車を禁煙とするルールを自ら設定したり、家の外で不本意にたばこの煙に曝されそうな状況を避けるなどして、自ら受動喫煙から身を守るよう促すべきです」とAkinboro医師は付け加えた。「がん患者やサバイバーの周りの家族や知人でたばこを吸う人も協力する必要があります。社会としては、職場、公共の場や共同住宅で喫煙を禁止する、地域、州、および連邦レベルの措置や政策を強化することにより、受動喫煙を減らすことができます 」と述べた。
Akinboro医師らは、米国の非喫煙成人がんサバイバーのうち受動喫煙歴のある人の割合を推定することに着手した。
同医師は、がん患者の受動喫煙が、死亡率の上昇など臨床転帰悪化、さらに、がん現病歴または既往歴を持つ喫煙者の禁煙傾向低下につながることが確認されていることから、この研究は重要であると説明した。また、受動喫煙は、がんに罹患したことのない人の場合と同様にがんサバイバーにおける脳卒中や心臓発作の発生率の上昇も招くと述べた。
研究者らは、米国国民健康栄養調査の連続7サイクルの結果から、がん罹患歴のある非喫煙成人686人(1999/2000年調査から82人、2001/2002年調査から106人、2003/2004調査から118人、2005/2006年調査から79人、2007/2008年調査から145人、2009/2010年調査から87人、2011/2012年調査から69人)の面談データおよび血清コチニンデータを使用した。
血清コチニン濃度が0.05 ng /ml〜10 ng/mlの場合に受動喫煙があったと定義した。
調査対象の成人全員のうち、28.26%に受動喫煙が認められた。以下に示す通り、特定の集団区分は他の区分と比較して受動喫煙の割合が高かった。
・非ヒスパニック系黒人の55.64%に受動喫煙が認められたのに対し、非ヒスパニック系白人では26.14%だった。
・喫煙に関連のあるがんに罹患した成人の35.54%に受動喫煙が認められたのに対し、喫煙に関連のないがんに罹患した成人では26.33%であった。
・所得が連邦貧困レベルを下回っている成人の53.25%に受動喫煙が認められたのに対し、連邦貧困レベルの3倍以上の所得がある成人では22.8%だった。
連続する2回の調査サイクルの間で、受動喫煙した成人の割合は、平均6.31%減少していた。
調査対象となった成人のうち4.53%が喫煙者のいる家庭で暮らしていると回答していた。
「コチニンの血中濃度で判定された受動喫煙率と、自己申告による家庭内受動喫煙率の差は顕著でした」とAkinboro医師は述べた。「この違いは、共同住宅内の他住居、クラブ、バーや公共スペースでたばこの煙を吸い込んでいることに関連していると考えれば説明がつき、これは住宅管理や公共住宅の所管官庁が共同住宅での禁煙方針の普及を促進する等、さまざまな政策に関わると思われます」。
Akinboro医師によれば、この研究の主な制約は、ある単一時点において無作為に選ばれた、がんサバイバーを含む米国の成人から収集されたデータを分析したことにある。個人を経時的に追跡することがなかったため、人種や民族、所得レベル、がん種などの要素はいずれも受動喫煙の原因とみなすことができず、単に関連付けることしかできない、とAkinboro医師は述べた。
Akinboro医師は、利益相反はないと宣言している。
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