タバコ関連の疾病及び死亡対策の転換へ、FDAが包括的規制案を発表

タバコに含まれるニコチンを中毒性のないレベルに下げることで、タバコ規制の将来予測を高めることを目指す

米国食品医薬品局(FDA)は本日、タバコとニコチンの規制に関する新たな包括的計画を発表した。これは、子供たちをさらに十分に保護し、タバコ関連の疾病と死亡を大幅に減らすための複数年のロードマップとして機能するものである。このアプローチは、ニコチンと中毒の問題を当局のタバコ規制努力の中心に置いている。目標は、「家庭内喫煙防止およびタバコ規制法(Family Smoking Prevention and Tobacco Control Act)」を効率的および効果的に実施するため、FDAが適切で科学的な規制基盤を確保することである。FDAがタバコ規制に取り組む一方で、より危険性の低い革新的な、タバコ製品の開発を促す適切なバランスを確保するべく、20165月、タバコの新製品に関するFDA権限を拡大すると定めた最終規制案で、いくつかの予定を一部緩和した。FDAはまた、タバコ製品におけるフレーバーの役割など、重要な公衆衛生上の問題についての意見を求める予定である。

喫煙は、米国では依然として予防可能な疾病および死亡の主な原因であり、毎年48万人以上が死に至る。喫煙を主な原因とする甚大な健康被害に加え、タバコは社会に多額の財政的負担をもたらし、直接医療費および生産性費用の損失の総額は、年間約3000億ドルにも上る。FDAのアプローチで重要な点は、ニコチンに関する認識の高まりを明確に示すことである。ニコチンは中毒性の高い物質であり、一連のリスクをもたらす産生物質によって人体へ送達される。また、可燃性の紙巻きタバコの煙粒子を介して送達される場合に最も有害である。

「タバコに起因する圧倒的な数の疾病や死亡は、タバコ中毒が原因です。意図的に使用される場合には、全長期喫煙者の半分が死に至る、唯一の消費者向けの合法的製品です」と、FDA長官のScott Gottlieb医学博士は述べた。「われわれが方向性を変更しない限り、現在生存中の560万人の若者は、喫煙によって、将来人生を全うしないで亡くなるでしょう。われわれは、ある社会を構想しています。それは、タバコ製品が製造されなくなるか、タバコの中毒性がなくなる社会です。また、依然としてタバコのニコチンから離脱できない成人にとっては、代替製品や害の少ない製品からニコチンを得られる社会です。それには努力基盤が必要です。この共通の認識を追求するためには、この構想が不可欠だと信じています」。

FDAは、達成可能な製品基準を用い、燃焼式紙巻きタバコのニコチン量を中毒性のないレベルまで下げることに関して、市民と意見交換を開始する予定である。当局は、タバコのニコチン低減について、潜在的な公衆衛生上の利益や予測される有害作用についての意見を求めるため、法案事前告知(Advance Notice of Proposed RulemakingANPRM)を発令する予定である。米国では、成人喫煙者の約90%が18歳以前に喫煙を開始し、毎日約2500人の若者が初めて喫煙している。そのため、ニコチン値を低減できれば、次世代の若者がタバコ中毒に陥る可能性が低くなる。また、現在タバコ中毒に陥っている喫煙者に対しては、禁煙できる可能性が高まる。

「ニコチンはその中毒性を検討する際に、問題と解決の両方の中心にあります。そのため、米国の家庭を脅かす壊滅的な中毒危機に対処するには、燃焼式紙巻きタバコのニコチンの中毒値を検討して、FDAの戦略の一部としなくてはなりません」と、Gottlieb長官は述べた。「FDAのニコチンへのアプローチに必要なのは、新たに規制される製品に対し、確固たる基盤で規制と製品の規格化を共に実施することです。単独ではなく一致協力して、これらすべての取り組みを成功させなくてはなりません」。

FDAは次の二つのことを公約に掲げている。一つは革新を推し進め、公衆衛生に大きな変化が生まれる可能性を探ることである。もう一つは、子供たちを最大限保護し、喫煙者に対しては禁煙を援助する政策や取り組みについての情報を提供することである。当局はこの取り組みを成功させるため、201688日時点で販売されている、新たに規制対象となるタバコ製品に対し、タバコ製品審査申請提出のスケジュールを延長する予定である。この措置により当局は、タバコ製品に関する明確で万全な基準を探求する時間的余裕が得られ、毒性、嗜好性、依存性の低減について検討できる。例えば、電子的ニコチン送達システム(electronic nicotine delivery systemsENDS)装置の問題や子供に対する液体ニコチンの曝露に関する懸念など、既知の公衆衛生上のリスクを避けるための製品規格の開発を予定している。また、製造業者に対しては、FDAから追加の指針が通知され、高品質で完成度の高い申請書を作成するため、製品の開発時間が延長される予定である。

FDAは近々、同指針を発令し、新しい施行方針を説明する予定である。指針変更後のスケジュールによると、葉巻、パイプタバコ、水ぎせるなど、新たに規制される燃焼式製品の申請書の提出は202188日まで可能となる。また、電子タバコ(ENDS)などの非燃焼式製品の申請書の提出は202288日までとなる。FDAはまた、製品の申請書の審査中に製造業者が製品販売を続行すると予想している。

特筆すべきことは、予定されている新施行方針は、紙巻きタバコや無煙タバコなどの現行要件にはいずれも適用されず、葉巻タバコや電子タバコなど、新たに規制されるタバコ製品に対してのみ適用されることである。また、このアプローチは、未成年者への違法販売防止のための義務年齢および写真IDの確認など、遵守期限がすでに通過した最終規定の条項には適用されない。また、同規定の他条項に対する将来の期限にも影響しない。例えば、必須警告文書、成分表示書、保健文書の提出、有害または有害である可能性がある成分の報告、変更リスクの表示(「軽い」、「低い」、「軽度」、または同様の記述)の削除などが含まれるが、これに限定されるものではない。

拡大中のタバコ市場において、公衆衛生面での最善の保護策を模索するため、FDAはさまざまな有用な話題から市民の意見も求める。例えば、電子タバコや葉巻タバコ中の子供が好むフレーバーを規制するアプローチなどである。特に、FDAが法案事前告知(ANPRM)を発令する目的は二つある。

1)タバコ製品のフレーバー(メントールを含む)が果たす役割について市民から意見を求める。フレーバーには、若者向け、また一部の喫煙者に対しては害が少ないと思われる形状のニコチン送達システムへの移行を手助けするものがある。

2FDA2016年の規定に含まれる高級葉巻タバコに関する追加コメントを求め、その使用パターンに関連した科学データ、および公衆衛生へ及ぼす影響についての評価を求める。

FDAはさらに、当局承認の薬用ニコチン製品へのアクセスや使用を増やすための措置を検討する予定である。また、喫煙者の禁煙が容易になる製品においては、安全性および有効性の基準の下でどのような措置を講じることが可能であるのか、製造業者と共に作業を進める予定である。

FDAは今回、タバコとニコチンに対する包括案と徹底したアプローチを行使するにあたり、公衆衛生で最優先される重要な影響力を確保できるように、米議会から権限を委任されています」と、法務博士でFDAタバコ製品センター長のMitch Zeller氏は述べた。「これらの複雑な問題に関する市民の意見は、FDAが適切な科学的根拠に基づく政策を確実に実施することに役立ち、喫煙による健康被害を大幅に削減することになります」。

これら広範囲にわたる包括策の検討事項を補足するため、FDAは公衆衛生における当局の役割を擁護するとともに、製造業者にとって、より効率的で予測可能な透明性の高い製品審査プロセスを行うための基本原則を発行する予定である。特に、市販前タバコ申請(Premarket Tobacco ApplicationsPMTAs)、リスク低下タバコ製品(Modified Risk Tobacco ProductMRTP)申請、および実質的同等性を証明するための報告書に含まれるべき情報内容の概要についての規定を発行する予定である。FDAはまた、ENDSに対するPMTA審査方法の指針も最終決定する予定である。さらに、オンライン情報、会議、オンラインセミナーおよび指針等を通じて、連邦のタバコ規制を遵守するタバコ産業への支援についても強力に推し進める予定である。

翻訳担当者 岐部幸子

監修 辻村信一(獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所) 

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

喫煙に関連する記事

喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのかの画像

喫煙はいかにして乳がん放射線治療を複雑にするのか

放射線治療は基本的ながん治療のひとつであり、乳がんを含むさまざまながん種での治療に用いられている。 
放射線治療は、放射線(通常はX線)を用いてがん細胞のDNAを損傷させ、がん細胞を破壊...
がん診断後の禁煙は多種多様ながんの生存期間を延長の画像

がん診断後の禁煙は多種多様ながんの生存期間を延長

診断後6カ月以内に禁煙したがん患者の寿命が延長したことが判明がんと診断されてから6カ月以内に禁煙した場合、生存転帰が改善されることがテキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研...
喫煙についての画像

喫煙について③:「不平等ながんの重荷、だが解決可能」ーDr. イアン・ウォーカー

いま現在、英国全土における医療機会の平等は実現していない。実際には、国内の健康格差ががんの転帰に大きな違いをもたらしていることがわかっている。
喫煙は政治的に解決できるの画像

喫煙について②:「政治的に解決が容易」ーDr.イアン・ウォーカー

喫煙は、少なくとも15種類のがんに関連している。肺がんは、経済的困窮に起因する過剰症例が圧倒的に多い。タバコを吸う人がいなかったら、イングランドで貧困に起因するがんの症例は61%減少していたかもしれない。独立審査委員会は、イングランドをスモークフリー(喫煙者が成人人口の5%未満)にするために、政府が年間最低1億2500万ポンドを緊急に追加支出する必要があると提言した。