禁煙は段階的に減らすよりも即座にやめた方が成功しやすい

英国医療サービス(NHS) 

「禁煙したい?本当に喫煙の習慣をやめたいと思うのなら、『きっぱりやめる』のが最良の選択肢。徐々に減らそうとは考えないで」というのはMail Online紙の見出しである。

そのニュースは、英国を拠点とする研究者らが、禁煙には段階的に減らしてやめる方法と、即座にやめる方法のどちらが良いかを評価した試験について報告している。

研究者らは約700人を、喫煙を段階的にやめる群(訳者注:以下「段階群」とする)と即座にやめる群(訳者注:以下「即座群」とする)に、無作為に割り付けた。4週間後、禁煙を継続していた参加者は、段階群が39.2%、即座群は49.0%であった。

両群とも禁煙開始日以降、パッチやガムなどのニコチン置換療法を受けていた。6カ月の時点で禁煙を継続している参加者の割合は、段階群が15.5%、即座群が22.0%に減少していた。

本試験の結果は有望であるが、「即座にやめる」という見出しの言葉は全ての人に適するわけではないようだ。

とは言え、「禁煙開始日」と呼ぶ日をセッティングすることは有益であり、禁煙の機会を高める「戦略」の環境を整えることができる。

戦略にはニコチン置換療法に用いる製品が十分に得られること、または自身ですべきことを探す、といったごく単純なことも含まれる。またパワーストーン・ブレスレットを頼りにする人もいる。

英国医療サービス禁煙ウェブサイトで近隣のNHS Stop Smoking Serviceを検索できる。または番号0300 123 1044のSmokefree National Helplineに電話すると訓練を受けたアドバイザーに相談することができる。

最も効果的な置換療法

最も一般的なニコチン置換療法は電子タバコである。しかし電子タバコに批判的な人々は、電子タバコには「出口戦略」がみあたらないという。つまり、単に長期のニコチンの供給システムを他の形に替えただけだというのだ。

ガム、パッチ、咽頭スプレーのような他のタイプのニコチン置換療法は、数か月間かけてニコチン常習性を絶つように設計されている。当初の常習性のレベルにより、8週~12週間で効果が得られる。

治療薬としては、bupropion〔ブプロピオン〕(Zyban〔商標名:ザイバン〕)とバレニクリン(商標名:チャンピックス)の2種類があり、喫煙欲求を軽減するのに役立つ。

研究の出典

本研究はオクスフォード大学、バーミンガム大学、ロンドンカレッジ大学の研究者らによって行われた。British Heart Foundationから資金提供を受けた。

本研究はピアレビュー誌であるAnnuals of Internal Medicineに掲載された。

研究は、メディアに正しく発表された。しかし、6カ月の時点で禁煙している人が減少していること、すなわち長期の禁煙に良い方法であるか否かについては言及されていない。

報道では、即時にやめることが困難だと感じた人々は、何もしないよりも減らすことを試したほうが良いと説明している。

報道の多くに「きっぱり断ち切る」という言葉がみられる。しかし即座にやめる人々はニコチンの離脱症状に対抗するための補助治療を行わないかのように解釈されかねないので、この言葉は不親切である。

実際に、ニコチン置換療法は喫煙欲求を有意に減らすことができる。ニコチン置換療法を用いて禁煙した人は、意思の力だけで禁煙しようとした人よりも成功しているようである。

研究の種類

本試験は段階的にやめる方法と即座にやめる方法を比べて、禁煙の成功を評価することを目的としたランダム化対照試験である。

本試験デザインは、上記のような調査をするのに最適なものである。理論上は、両群は可能性がある交路因子のバランスが取れているはずであり、結果に生じた相違は介入が原因であるといえる。

研究内容

研究者らは、たばこに依存しているものの、禁煙を希望する成人喫煙者を参加させた。

下記の事項のいずれかに該当するものを常習性と定義する。

・1日にすくなくとも15本の紙巻きタバコを吸う。

・1日にすくなくとも12.5gの葉タバコ(標準手巻きタバコの小さめの包装)を吸う。

・呼気の一酸化炭素濃度がすくなくとも15ppmであること。これは人が呼吸時にどれほど一酸化炭素を吐き出すかを計測したものである。

以下に該当する参加者は除外した。

・最近禁煙治療を受けた者。

・ニコチン置換療法が不可能な者。

・他の臨床試験に参加している者。

・試験の要求に応じられない者。

参加者を無作為に、即座群と禁煙開始前2週間以内に75%減らす段階群とに割り付けた。

両群の参加者に、試験参加2週間後、「禁煙開始日」を設定するように依頼した。

段階群は喫煙量を最初の1週間に50%減らし、さらに2週目の終わりには25%まで減らした。即座群の参加者には、参加日から禁煙開始日までの間は減らさず普通に喫煙するよう依頼した。

禁煙開始日まで、段階群に長時間作用性のニコチンパッチと、短時間作用性のニコチン置換療法補助剤(ガムやスプレーなど)を使用し、即座群には、ニコチンパッチのみ使用した。さらに禁煙開始日以降は、両群に行動カウンセリング、ニコチンパッチ、短時間作用性ニコチン置換療法を施行した。

参加者の特性は、試験の開始時に収集した。項目は以下であった。

・喫煙歴

・ニコチン依存性

・禁煙法は段階的と即座のどちらを好むか

クリニックでのフォローアップの診察では、喫煙により唾液に含まれるコチニン量(タバコの煙への曝露のマーカーとして使用される)と吐き出された一酸化炭素濃度を測定して評価した。さらにタバコの離脱症状は、standardised mood and physical symptoms scale(MPSS)を使用して評価した。

研究者らは禁煙開始日から4週間後と6カ月後に禁煙の状況を評価した。分析では追跡調査が不能となった参加者は、喫煙者とみなした。

結果

2009年6月から2011年12月まで総計697人が本試験に参加した。355人を即座群に、342人を段階群に割り付けた。

4週間後、段階群の39.2% (95% 信頼区間[CI] 34.0%対44.4%)、即座群の49.0%(95% CI 43.8%対54.2%)が禁煙を続けていた。

この結果は、即座群の禁煙率が約20%上昇(相対リスク[RR] 0.80、95% CI 0.66対0.93)したことを示している。

長期の結果では、6カ月の時点で禁煙を継続している参加者の割合は、段階群は15.5%に、即座群は22.0%に減少していた。

結果の解釈

研究者らは、「たとえ当初は段階的に減らして禁煙することを望んでいても、即座にやめるほうが、減らしてやめるよりも永久的な禁煙に繋がりやすいようである」と結論付けた。

結論

本試験は、禁煙には段階的にやめる方法と、即座にやめる方法のどちらが最もふさわしいかを評価することを目的とした、適切なデザインのランダム化対照試験である。

研究者らは、4週間と6カ月の時点で、即座群は、段階群よりも禁煙を継続している参加者が多いことがわかった。

デザイン、方法、分析などの本研究の長所を生かし、可能な限りバイアスのリスクを最小限にしようと試みた。

参加者数が多く、この結果はただ単に偶然ではないという、より強い確信を得た。

6カ月の追跡調査期間に研究者らは禁煙方法の長期にわたる影響を評価した。

筆者らが述べているように、研究の限界として、非白色人が参加者全体の6%に過ぎず、参加者が英国の人種の混在を代表しているわけではないことが挙げられる。

本試験は主要な公衆衛生上の問題に取り組んでいる。これまで最良で最も効果的な禁煙の方法、特に長期的な方法を見つけるために数多くの研究がデザインされてきた。

禁煙という観点から、喫煙を即座にやめるという方法は、徐々に減らすよりも有効であり、可能性が高いようである。

ニコチン中毒を皮膚に貼付した絆創膏に例えると、痛みを伴いながらゆっくり剥がすよりも絆創膏を完全に一気に剥がす方が効果的であるのと同様である。

禁煙しようとするとき、全ての人々に合う方法はない。Stop Smoking Service や総合診療医に助力を求める必要があるだろう。そこでは各々のニーズに応じた禁煙法に関する支援を受けることができる。

【画像キャプション】:ニコチン置換療法は喫煙欲求を軽減するのに役立つ

翻訳担当者 白鳥理枝

監修 田中謙太郎(呼吸器・腫瘍内科、免疫/福岡東医療センター)

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原文掲載日 

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