固形腫瘍の化学療法後にまれな血液腫瘍の発症リスクが上昇
NCIプレスリリース
2000~2014年の間に化学療法を受けたほぼ全種の固形腫瘍患者は、治療関連骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病(tMDS/AML)を発症するリスクが上昇した、と米国国立がん研究所(NCI)の研究者らは新研究の知見で示した。本研究では米国の人口に基づくがん登録データをNCIの監視疫学遠隔成績(SEER)プログラムから、さらに治療情報をSEER-Medicareデータベースから採用して2018年12月20日、JAMA Oncology誌に掲載した。NCIは米国国立衛生研究所の一部である。
過去数十年間で治療法は進歩し、患者の生存率が向上したがん種は多い。しかし、生存者(サバイバー)では治療に関連した二次がんの発症リスクが上昇する可能性がある。本研究で研究者らは、化学療法を受けた患者において、発症はまれであるが致死的であることが多い血液腫瘍であるtMDS/AMLの発症リスクを数値化することを目指した。
「がん治療の中には細胞を傷つけ、ごくまれな有害事象として骨髄性白血病を発症する治療もあることを、われわれは長年認識していました」と、本研究の筆頭著者であるLindsay Morton博士(上級研究者、NCIがん遺伝学・疫学部門)は述べた。「新たな化学療法薬や薬剤併用療法の導入など、年月とともにがん治療は数多くの変化を遂げてきましたが、そうした変化以降、治療関連白血病リスクが患者にどう及ぶのか、われわれは理解していませんでした」。
tMDS/AMLに関する大部分のデータは、症例集積研究、症例対照研究、臨床試験から得てきたが、まれな疾患であるtMDS/AML症例数は比較的少ないことが多い。本研究では、さらに大規模な症例数および患者を長期間追跡調査した前向き研究データに基づく集団ベースのデータを採用した。
こうしたデータを取得するため、研究者らは2000〜2013年の間に固形がんと診断され、初回化学療法を受け、診断後1年以上は生存した20〜84歳までの米国患者70万人以上のSEER登録データを分析した。このうち2014年にtMDS/AMLを発症した患者は1,619人であった。原発がん種ごとにtMDS/AMLリスクを分析したところ、研究対象とした固形腫瘍23種(大腸がんを除く全がん種)のうち22種で、発症リスクが1.5倍から10倍以上に上昇したことがわかった。
これらの知見によって化学療法後にtMDS/AML発症リスクが高くなるサバイバーの対象者が拡大した。なぜなら、これまでリスクが非常に高くなることが確証されていたのは、肺、卵巣、乳房、軟部組織、精巣、および脳中枢神経系の腫瘍に対する化学療法後に限られていたからである。今回の分析では、固形腫瘍ほぼ全種に対する化学療法から10年経過時点のtMDS/AML累積発生率は1%未満であった。しかし、tMDS/AML診断後の予後は非常に不良であった。
特定の化学療法薬剤に関する情報はSEER登録データから取得できなかったため、研究者らはSEERとMedicareをリンクさせたデータベースを用いて、同期間中における特定の化学療法薬剤の投与パターンを調査した。SEER-Medicareデータベースに含まれる患者のうち、2000~2013年の研究期間内に一次原発固形腫瘍に対する初回化学療法を受けた患者165,000人中、プラチナ製剤を中心とした化学療法薬剤を投与された患者の割合は、2000~2001年の57%から、2012〜2013年の81%まで大幅に上昇した。プラチナ製剤ベースの化学療法薬剤はtMDS/AMLの発症リスクを上昇させることが知られている。
「がん治療アプローチの進化が多くのがん種の予後を改善した一方、現代の治療におけるがん化学療法後に、まれな治療関連白血病を発症するリスクを有する患者数が顕著に増加してしまったことが、本研究の最重要メッセージです」Morton氏は述べた。「初発固形がんの治療におけるリスクと有益性の評価は、上記リスクや他の有害事象と、治療によって得られるであろう生存利益とのバランスを取らなくてはなりません」。
白血病を発症させる化学療法薬剤の投与を最小限に抑え、有効的かつ低毒性の化学療法アプローチを開発する不断の努力が今後も非常に重要であることを本研究は示している、と研究者らは記した。
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