研究報告:開発中の治療薬の進歩

即日発表 2011年6月4日

現場報道室:312-949-3232

シカゴ-本日、進行癌に対する治療薬の改善や新たな治療方法の開発を伝える複数の報告が米国臨床腫瘍学会(ASCO)の第47回年次総会の記者会見で発表された。

「本日ここで発表された研究は、転移性黒色腫や骨髄線維症など、治療がきわめて難しい疾患の分子生物学に狙いを定めた治療開発の最新状況をお伝えするものです」と記者会見司会を務めたシカゴ大学医学部准教授のSonali Smith医学博士は述べた。「同時にまたわれわれは、患者の評価と転帰予測を向上させるための分子的アプローチを使ったいくつかの革新的戦略も知ることができました」。

記者会見で取りあげられた研究は以下の通りである:

肺癌遺伝子変異コンソーシアム(LCMC)が進行癌において新たに同定した腫瘍「ドライバー」変異は治療選択肢に改善をもたらす: 14の施設で構成されるLCMCは、ある前向き試験において進行肺癌患者の3分の2近くの腫瘍に認められている10種類の「ドライバー」変異のうち、少なくとも1種類を同定した。試験責任医師らは、診断時に系統だったやり方で患者の腫瘍に対して変異解析を実施できるようになるかもしれないことを示した上で、LCMCプログラムは治療及び研究にとって重要なモデルとなりうると述べた。

ある試験で前立腺癌の末梢血循環腫瘍細胞が生存に関する評価項目の代用となりうることを示す有望な結果が示された。これにより、薬剤に関する試験や承認が迅速化されるかもしれない:ある薬剤により転移性去勢抵抗性前立腺癌(mCRPC)における全生存期間の延長がもたらされたため、その薬剤の有効性が示された第3相ランダム化前向き試験の解析の中で、末梢血循環腫瘍細胞(CTC)――腫瘍から離れて血流に入る腫瘍細胞――の値が生存期間に相関することがわかった。この種の転移性前立腺癌における生存期間を予測するバイオマーカーとしてCTCが有用性であることを支持する根拠は、最終的にはこのような初回報告や引き続き行われる追跡研究から出てくることになろう。

経口標的治療薬を組み合わせると進行性黒色腫に対して早期に抗腫瘍効果が示される:進行性黒色腫患者に経口標的治療薬2剤(経口MEK阻害薬[GSK212]と経口BRAF阻害薬[GSK436])を併用投与したところ、安全性が高く、また予備的な抗腫瘍活性が認められたことが、第1相試験から明らかになった。2種類の経口標的治療薬により進行性黒色腫に対する抗腫瘍活性に相乗効果がもたらされることが期待できるため、この試験結果はきわめて重要となりうるものである。

JAK阻害薬が高リスク骨髄線維腫患者の奏効率を向上させる:欧州で行われた第3相ランダム化試験では、ヤヌス・キナーゼ(JAK)阻害薬であるルクソリチニブ(ruxolitinib)が3タイプの骨髄線維症(MF)における奏効率を劇的に改善させた。骨髄線維症は白血病となる場合が多く、死に至る確率が極めて高い骨髄障害である。この試験(略称COMFORT II試験)と同時に行われている第3相試験(COMFORT I試験)は、骨髄線維症に対して初めて実施された薬剤のランダム化試験である。

上記試験やその他120種の癌に関する患者の立場に立った情報はASCOの患者向けウェブサイト(www.Cancer.Net)をご覧ください。

翻訳担当者 窪田美穂

監修 大渕俊朗(呼吸器・乳腺内分泌・小児外科/福岡大学医学部)

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