幹細胞移植が重度の多発性硬化症の治療に有効であることを示す第2相臨床試験
キャンサーコンサルタンツ
多発性硬化症(MS)の重症例に対し、幹細胞移植は薬剤ミトキサントロンより有効な治療になり得るとの研究がNeurology 誌で発表された。その研究の表題は、「多発性硬化症の自家造血幹細胞移植」である。
MSは、身体の自分自身の免疫系が中枢神経系(脳や脊髄神経)を攻撃する免疫介在疾患である。造血幹細胞移植は白血病やリンパ腫の治療に一般的に行われているが、現在、MSのような重度の自己免疫疾患の治療法としての可能性が研究されている。
研究者らは、MS患者21人(平均年齢36歳)を対象としたランダム化第2相臨床試験を策定した。参加者のMSによる身体機能障害は、従来の薬物療法を受けていたにもかかわらず前年より悪化していた。参加者の平均的な身体機能障害の程度は、歩行に松葉杖や杖を必要とするレベルであった。試験の目的はMSの疾患活動性において、強力な免疫抑制に続く自家造血幹細胞移植あるいはミトキサントロン(MTX)投与の有効性を判定することであった。
参加者全員に免疫抑制剤を投与した。その後、参加者12人には免疫抑制剤MTXを投与し、残り9人には彼らの骨髄から採取した造血幹細胞を注入した。幹細胞は免疫抑制の後、静脈内投与され、 骨髄に生着して新たな免疫細胞を産生した。参加者全員について最長4年間にわたって追跡調査を行った。
「この過程は免疫系をリセットするとみられる」と主著者のGiovanni Mancardi医師はニュースリリースで述べた。「これらの結果から、幹細胞治療がこの病気の経過に多大な影響を与える可能性があると推測できる」。
研究者らは、強力な免疫抑制療法に続く幹細胞治療は、MTX治療と比較して病気の進行を著しく遅らせることを発見した。幹細胞治療を受けたMS患者は、MTX治療を受けた患者と比較して新たな脳損傷部位(T2病変)数が79%減少した。MS患者にみられる別の病変であるガドリニウム増強病変は、試験期間中、幹細胞治療を受けた患者では検出されなかった。一方、MTX治療を受けた患者の56%には、少なくとも1つの新たな病変がみられた。研究者らは、強い免疫抑制療法に続く自家造血幹細胞移植は重症のMS活動性を減退させる上でMTX治療より有効であると結論づけた。
「さらに多くの患者を幹細胞移植または承認済み治療のいずれかに無作為に割り付けて、研究を進める必要がある。しかし、標準的治療が十分に奏効しなかった重度MS患者に対して、今回の治療法が現行の治療に対して高い優越性を示す可能性があることがわかり、大変素晴らしい」とMancardi医師は締めくくった。
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