骨髄異形成症候群に対するエピジェネティック薬の治療効果を検出する正確なマーカーを同定
• 現在使われているマーカーは不正確であることが示された
• 研究者らは2つのバイオマーカーを同定し、検証した
• 簡単な尿検査によりエピジェネティック薬治療の効果の検出が可能となることが研究で明らかになった
南カリフォルニア大学(ロサンゼルス)の博士研究員であるXiaojing Yang博士によると、研究者らは骨髄異形成症候群(MDS)患者におけるエピジェネティック薬の効果を、医師がより正確に判断できる2つのDNAメチル化マーカーを同定し、検証した。Yang氏は4月6日~10日にワシントンD.C.で開催された2013年度AACR年次総会において、そのデータを発表した。
「エピジェネティック薬が患者に実際に効いているかどうかわからないというのが現段階の医師の評価です。そのため治療を止めるべきか、投与量を増やすべきかを決定するのが難しくなっているのです」とYang氏は述べた。「われわれはなぜかと考えました。なぜ現行のマーカーはうまく機能しないのか、より正確なマーカーを探すべきではないでしょうか?」
Yang氏によれば、DNAメチルトランスフェラーゼ阻害剤(DNMTi)と呼ばれる薬は、癌の発生を抑制する遺伝子を発現させることにより効果を発揮する。MDS患者では、DNA骨格へのメチル基の付加(メチル化と呼ばれる一種のエピジェネティック修飾)により癌抑制遺伝子の発現が阻止されており、DNMTiはDNAへのメチル基の付加を阻害する。
現在、LINE-1エレメントとして知られるDNA配列のメチル化の変化を測定することが、DNMTiが効いているか否かの予測因子として広く使われているが、最近の研究から、DNMTiの中断後、LINE-1の再メチル化が他の領域より早く起こることがわかった。つまりLINE-1のメチル化の変化はDNMTiによる全体的な脱メチル化効果を反映していないことを意味しているとYang氏は述べた。
Yang氏らは、DNAメチル化状態を検出するより正確なマーカーを探した。Infinium DNAメチル化プラットフォームを使って27,000のゲノム領域のメチル化プロファイルを評価した。研究チームは、正常および腫瘍膀胱組織サンプル、また健康なドナー由来の白血球について、このゲノム領域のメチル化プロファイルを調べた。3つ全てのサンプルで常にメチル化されている1,429の領域を同定した。
次にT24膀胱癌細胞株およびHL60白血病細胞株をDNMTiで24時間処理し、この1,429領域のメチル化プロファイルを調べた。これらのうち79の領域が脱メチル化治療に顕著に反応し、脱メチル化状態は30日以上続いた。さらなる解析では、正常および腫瘍サンプルで恒常的な過剰メチル化が見られた上位2つの領域に着目した。
Yang氏らは研究結果を実証するために、DNMTiであるアザシチジン治療を受けた7人のMDS患者の尿サンプルについて、それら2つのマーカーのDNA脱メチル化のレベルを調べた。明らかな減少傾向が見られなかったLINE-1メチル化とは対称的に、2つのマーカーは顕著に脱メチル化されていた。
これらの研究結果から、簡単な尿検査を行うことで、DNMTiに対する効果が検出できることになるかもしれないとYang氏は述べた。
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