濾胞性リンパ腫の新しい予後指標

キャンサーコンサルタンツ
2009年8月

リツキサン(Rituxan)(リツキシマブ)の時代における濾胞性リンパ腫に対する新しい国際予後因子指標(F2 Study)を、国際濾胞性リンパ腫予後因子プロジェクト(International Follicular Lymphoma Prognostic Factor Project)に参加した研究者らが発表した。この新規試験の詳細は、Journal of Clinical Oncology誌2009年8月3日の電子版[1]に掲載されている。

2004年の国際予後指標においては、濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL)の患者の生存率に影響を与える危険因子を以下の5つと定めている。すなわち、年齢60歳以上、Ann-Arbor病期分類においてⅢ~Ⅳ期、ヘモグロビン値(12g/dL未満)、LDH高値、リンパ節病変数が5箇所以上、である。5年生存率は、危険因子が0~1個の場合は88%、2個の場合は71%、3個の場合は57%、4~5個の場合は44%となる。本試験の患者は現在の免疫化学療法の時代以前に治療を受けている。

予後の指標は、実施される治療に依存する場合が多い。近年濾胞性リンパ腫の治療においては進歩がみられるが、これは特にリツキサンの登場によるものであり、従来の予後指標を覆し得る。

今回の試験では、2003年1月から2005年5月までに治療を受けた1,000人以上の濾胞性リンパ腫の患者を対象とした。全生存率ではなく、無増悪生存期間(PFS)が主要評価項目とされた。治療を受けた患者924人のうち、832人に関しては完全なデータが得られ、追跡期間の中央値は38カ月であった。PFS短縮の予測因子は以下の通りである。

・β2ミクログロブリン高値
・6cm以上のリンパ節腫脹
・骨髄浸潤
・ヘモグロビン12g/dL未満
・年齢60歳以上

予後指標2(The Prognostic Index 2)により、患者を3群に層別化し3年無増悪生存率を示した。
・低リスク=91%
・中リスク=69%
・高リスク=51%
3年生存率はそれぞれ99%、96%、84%であった。

コメント:この予後指標により、現在の免疫化学療法の時代における治療失敗の高リスク、低リスク患者を同定できることが示唆された。これは、新規治療の対象となる患者群を同定することや、治療失敗のリスクが低い患者に対する毒性を回避する上でも、有用である。PFSを主要評価項目として選択したことは、有効な救援療法が増えてきており、初期治療の影響力が低下する可能性があることより、適切なことであったと考えられる。

参考文献:[1] Federico M, Bellei M, Marcheselli L et al. Follicular lymphoma international Prognostic Index 2: A new prognostic index for follicular developed by the International Follicular Lymphoma Prognostic Factor Project. Journal of Clinical Oncology [early online publication]. August 3, 2009.


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翻訳担当者 近江屋 芽衣子

監修 吉原 哲(血液内科・造血幹細胞移植/兵庫医科大学病院)

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