ドナー幹細胞移植後の再発血液腫瘍への免疫療法薬ニボルマブ

【米国血液学会(ASH)2017】

免疫チェックポイント阻害薬として知られる免疫療法薬は、ドナー幹細胞移植後に再発した血液悪性腫瘍患者にかなり有望であることが示されている。これらの患者を対象に行われた、免疫治療薬の一つであるニボルマブの最初の臨床試験の予備成績は、有効な反応が得られたと共に、研究初期に用いられた投与量では重大な副作用を生じることも示された。この結果より、適応外使用を考慮する前に、この患者群を対象としたさらなる臨床試験を行う必要があることが示唆されていると、ダナファーバーがん研究所の研究員は報告した。

アトランタで開催された第59回米国血液学会(ASH)年次総会の口頭抄録セッションで発表された医師主導型多施設試験の結果には、有望な追跡調査データも含まれており、それによると免疫チェックポイント阻害薬イピリムマブに同種(ドナー)幹細胞移植後の再発性血液悪性腫瘍患者のおよそ1/3が治療反応を示したのである。

ニボルマブはがんに対する免疫系の攻撃を鈍らせるPD-1と呼ばれるたんぱく質をブロックする。ニボルマブを用いた臨床試験は、ニボルマブが有効な可能性もあるが、移植片対宿主病などの深刻な副作用を生じることも多いことを示した後ろ向き研究の結果を受け、急ピッチで進められた。移植片対宿主病とは、移植された組織内に含まれる免疫系細胞が患者の健康な細胞を攻撃する病態である。試験の最初の6人には、体重あたり1 mg/kgの用量で投与された。1例の悪性リンパ腫患者で治療に良く反応したが、一方で他の数症例では有害な副作用がみられ、そのうちにはこの治療に関連する可能性がある合併症による死亡2症例が含まれていた。次の8人の参加者には体重あたり0.5 mg/kgが投与され、重篤な副作用の発生は減少したようであると研究者は報告している。

「私たちは今、この低用量が安全でかつ有効であるかを調査しています」。本研究の筆頭著者でありダナファーバーがん研究所慢性リンパ性白血病センター副所長、医学修士のMatthew Davids医師は話す。「毒性に関する懸念があるので、移植後のニボルマブ治療は適応外使用ではなく、臨床試験に参加した上で行われるべきであることを強調したいと思います」。

イピリムマブの臨床試験は、その結果が昨年New England Journal of Medicine誌に掲載されたが、参加者の多くが順調に経過しているとDavids医師は述べる。NEJM誌の論文によると、同種幹細胞移植後に再発した患者に体重あたり10 mg/kgの投与量で治療すると32%が治療に反応したが、3mg /kgでは治療に反応した患者はいなかった。

研究者らは、ASH 総会において10 mg/kgで治療した22人の患者のうち、9人は生存し、3人は試験終了後、無増悪期間中央値15カ月に達したことを報告する予定である。皮膚白血病の患者の1人は初回投与から3年以上完全寛解が続いている。

投与量10 mg/kg と 3 mg/kgでは結果に大きな違いがあるため、研究者らは中間投与量の5 mg/kgで試験し、有効性と安全性の正しいバランスをとることができるかを判断しようとしている。5 mg/kg で治療した15人の患者では、有効性は10 mg/kg投与時よりもわずかに低いようであり、その一方で、毒性は「ほぼ同等」だったとDavids医師は言う。これらの結果は、この群の患者にとっておそらく10 mg/kgが至適用量であることを示しているのだろうと同医師は付け加えた。

本研究の統括著者はダナファーバーのRobert J. Soiffer医師。 共著者は 以下のとおりである:
Haesook T Kim, PhD, Alexandra Savell, Michael Mazzeo, Vincent T Ho, MD, Corey S. Cutler, MD, MPH, John Koreth, MBBS, DPhil, Edwin Alyea III, MD, Joseph H. Antin, MD, Pavan Bachireddy, MD, Catherine J. Wu, MD, Jerome Ritz, MD, and Philippe Armand, MD, PhD, of Dana-Farber; Nicole R. LeBoeuf, MD, MPH, of Dana-Farber and Brigham and Women’s Hospital; Caitlin Costello, MD, of San Diego Moores Cancer Center, University of California; Alex F. Herrera, MD, of City of Hope; Frederick L. Locke, MD, of H. Lee Moffitt Cancer Center and Research Institute; Peter McSweeney, MD, of Colorado Blood Cancer Institute; Rodrigo O. Maegawa, MD, of Eastern Maine Medical Center; David E. Avigan, MD, of Beth Israel Deaconess Medical Center; Yi-Bin Chen, MD, of Massachusetts General Hospital Cancer Center; Howard Streicher, MD, of the National Cancer Institute; Edward D Ball, MD, of University of California, San Diego; and Asad Bashey, MD, PhD, of Georgia, Northside Hospital, Atlanta, Ga

翻訳担当者 白鳥 理枝

監修 喜安 純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性の画像

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性

免疫療法薬ニボルマブ(オプジーボ)が、進行した古典的ホジキンリンパ腫を患う10代以上の患者に対する一次治療の一部を成すことが、NCI資金提供による大規模臨床試験の最新結果で示された。

約...
CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知るの画像

CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知る

2023年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、CAR-T細胞療法を受けた人において二次がん、特にT細胞リンパ腫が発生した20例以上を調査中であると発表した。いくつかの例では、CAR-...
ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)の画像

ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)

米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)年次総会で発表された研究結果
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、中枢神経系(CNS)リンパ腫、乳がん、神経膠芽腫の患者の治療において有望な結果をも...
抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解の画像

抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解

米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らは、化学療法を用いない治療法を開発した。この療法は、再発した、あるいは標準治療が効かなくなったアグレッシブB細胞リンパ腫の一部の患者に対し...