欧州医薬品庁(EMA)がPI3K阻害剤イデラリシブのレビューを実施

実施中の臨床試験における重篤な有害事象の問題でレビューを実施

 ・トピック:血液腫瘍/抗がん剤と生物学的療法

欧州医薬品庁(EMA)は、欧州委員会の要請を受け、idelalisib[イデラリシブ](商品名:Zydelig[ザイデリグ])のレビューを開始した。同薬剤は、リツキシマブとの併用療法として、慢性リンパ性白血病(CLL)成人患者で少なくとも1回の前治療歴を有する患者への適応、17p欠損ないしTP53変異がみとめられ化学・免疫療法が不適当な患者に対する初回治療としての適応が欧州で承認されている。また、2種類の前治療で不応性を示した濾胞性リンパ種成人患者に対する単剤療法としても適応されている。

レビューが開始された理由は、イデラリシブとほかのがん治療薬との併用を調査している3つの臨床試験において、死亡(そのほとんどが感染症による)などの重篤な有害事象の発生率が上昇したためである。これらの臨床試験は、CLLおよび低悪性度非ホジキンリンパ腫の患者が参加していたが、CLLの試験では現在承認されていない薬剤との併用を調査し、低悪性度非ホジキンリンパ腫の試験では現在承認されている適応とは異なる疾患特徴を有する患者が含まれていた。

現在、イデラリシブに関するすべての臨床試験の試験責任医師は、実施中の試験に対して取るべき処置についての情報が提供されている。

EMAはまもなく上述の試験からのデータをレビューし、イデラリシブで承認されている使用方法に影響があるかどうかを評価する。その間、イデラリシブ治療を開始する、もしくはイデラリシブで治療中の患者に対しては、感染の徴候を注意深く監視する必要がある。イデラリシブの忍容性が良好であれば、治療は中止するべきではない。

EMAは、レビュー実施中にほかの早急な対策が必要かどうかを検討している。EMAはさらに連携を深め、医師と患者の双方に適切な情報を提供し続けるとしている。

治療について質問のある患者は、医師にご相談ください。

イデラリシブのレビューは、指令(Directive)2001/83/EC第20条の下、欧州委員会の要請を受けて開始された。

レビューは、ヒト用医薬品の安全性評価を担当する医薬品安全性監視リスク評価委員会(PRAC)によって実施されており、今後、勧告が出される。同委員会による勧告は、ヒト用医薬品に関する問題を取り扱う欧州医薬品委員会に渡され、そこで最終意見が採択される。

レビューの最終段階では、欧州委員会により、EU全加盟国に適用される法的拘束力のある決定が採択される。

翻訳担当者 白石里香

監修 林 正樹(血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性の画像

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性

免疫療法薬ニボルマブ(オプジーボ)が、進行した古典的ホジキンリンパ腫を患う10代以上の患者に対する一次治療の一部を成すことが、NCI資金提供による大規模臨床試験の最新結果で示された。

約...
CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知るの画像

CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知る

2023年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、CAR-T細胞療法を受けた人において二次がん、特にT細胞リンパ腫が発生した20例以上を調査中であると発表した。いくつかの例では、CAR-...
ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)の画像

ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)

米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)年次総会で発表された研究結果
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、中枢神経系(CNS)リンパ腫、乳がん、神経膠芽腫の患者の治療において有望な結果をも...
抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解の画像

抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解

米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らは、化学療法を用いない治療法を開発した。この療法は、再発した、あるいは標準治療が効かなくなったアグレッシブB細胞リンパ腫の一部の患者に対し...