妊娠はホジキンリンパ腫の再発リスクを高めない
ASCOの見解
ASCOのリンパ腫専門家Merry-Jennifer Markham医師
「これはホジキンリンパ腫から寛解状態に入り、妊娠を望んでいる女性にとって喜ばしく、励みになる知らせです。本研究はまた、がん寛解後の妊孕性が依然として多くの患者にとって重大な関心ごとだと思い出させるものであり、この話題は医師と患者の間でより頻繁に話し合われるべきです」。
12月14日付のJournal of Clinical Oncology誌に掲載されたスウェーデンの研究によると、ホジキンリンパ腫の寛解期に妊娠する女性でがん再発リスクは増加しない。
著者らによると、本研究は、ホジキンリンパ腫サバイバーにおける再発の潜在的なきっかけとしての妊娠を特別に検討する初の大規模研究である。知見は過去に行われた小規模研究の結果と一致している。
研究者らは、1992年から2009年の間にホジキンリンパ腫と診断された18~40歳の女性449人のスウェーデンヘルスケア登録と診療記録のデータを分析した。妊娠期間中または出産から5年以内に再発した場合を、妊娠に関連した再発と定義した。ホジキンリンパ腫の診断を受けた6カ月後から女性患者らのフォローアップを開始した。
449人の女性のうち114人がフォローアップ期間に妊娠したが、そのうち1人だけが妊娠から5年以内に再発した。寛解期に妊娠しなかった女性では46人が再発した。したがって、統計上の有意差はなかったものの、新たに妊娠した女性は妊娠しなかった女性よりも再発率が低かった。
「これらの知見に基づくと、妊娠したホジキンリンパ腫サバイバーの方が再発リスクが高まるというエビデンスはありません」と、筆頭研究著者で、スウェーデン、ストックホルムにあるカロリンスカ研究所の医学疫学・生物統計学部の博士課程であり生物統計学者でもあるCaroline Weibull氏(自然科学修士)は述べた。
ホジキンリンパ腫は青年、青少年でもっとも頻度の高いがんであり、ホジキンリンパ腫サバイバーの多くが妊娠可能年齢の女性である。ホジキンリンパ腫は生存率が比較的高く、45歳未満の女性において特に高い。
「臨床医同様、ホジキンリンパ腫サバイバーも、支持する経験的なエビデンスがないにもかかわらず、妊娠によって再発リスクが高まるのではないかという不安を呈しているため、われわれは本研究を実施しました」と、共著者であるスウェーデン、ウプサラにあるアカデミスカ病院の腫瘍専門医であり、ウプサラ大学の免疫学、遺伝学、病理学部およびカロリンスカ研究所の内科学部門に所属の研究者でもあるIngrid Glimelius医学博士は述べた。「今回の厳密な研究は、こういった不安を軽減する一助になるはずです」。
フォローアップ期間に妊娠した女性の再発が少なかったことに対して考えられる説明の一つに、“healthy mother effect”という選択バイアスがある。これは病気が重篤でない女性の方が妊娠しやすく、かつ再発リスクが少ないと仮定するものである。
「今回の研究では“healthy mother effect”のエビデンスは認められませんでした」と、Caroline Weibull氏は述べた。「年齢と病気の重症度の差を考慮した後、病気が進行していた女性と初期の女性、つまり異なった化学療法を受けた患者で、妊娠の可能性に著しく異なる点はみられませんでした」。
本研究はスウェーデンがん学会、カロリンスカ研究所のStrategic Research Program in Epidemiology、Swedish Society of Medicine、Swedish Society for Medical Researchから助成を受けた。
以下のCancer.Net、ASCOのがん情報ウェブサイトへのリンクが参考になる。
Guide to Hodgkin Lymphoma
Having a Baby After Cancer: Pregnancy
Understanding Cancer Risk
Journal of Clinical Oncology誌はがん患者の治療にあたる医師を始めとした、世界を牽引する専門家の団体である米国臨床腫瘍学会(ASCO)の3カ月毎に発行されるピアレビュー誌である。
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