ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性
免疫療法薬ニボルマブ(オプジーボ)が、進行した古典的ホジキンリンパ腫を患う10代以上の患者に対する一次治療の一部を成すことが、NCI資金提供による大規模臨床試験の最新結果で示された。
約1,000人の患者を対象とした本試験では、ニボルマブと3剤化学療法AVDによる治療は、この疾患の現在の標準的な初期治療である、AVDと標的療法 ブレンツキシマブ(アドセトリス)併用よりも、悪性腫瘍の排除と進行抑制への効果が高かった。
治療開始から2年後、 ニボルマブ-AVD群に無作為に割り当てられた試験参加者の約92%が、がんが再発することなく生存(無増悪生存)していたのに対して、ブレンツキシマブ+AVD群では83%であった。また、ニボルマブ+AVD群では全体的に副作用が少なく、重篤な副作用も少なかったとの調査結果が、10月17日にNew England Journal of Medicine誌で報告された。
この試験の代表研究者のJonathan Friedberg医師(ロチェスター大学ウィルモットがん研究所所長)は、過去の記録からみて、進行ホジキンリンパ腫患者において、初回治療を終えてから2年以内に腫瘍が再発しなかった患者の大半は治癒していると説明した。
Friedberg医師は、今回の最新知見に基づき、ニボルマブ+AVD療法によって「かなり多くの患者が治癒していると考えます」と述べた。
Friedberg医師は、研究結果についての記者会見で、試験参加者の4分の1が12歳から17歳であったにもかかわらず、薬物治療を終えた後に放射線治療を受けたのはわずか7人であったと説明した。
この年齢層でホジキンリンパ腫と診断された人の多くは、がんの再発を防ぐための予防策として放射線治療を受ける。しかし、放射線には二次がんのような長期的な健康問題を引き起こすことなど、深刻な副作用を伴う可能性があると同医師は言う。こうした長期的副作用を抑えるため、この年齢層では非常に厳しい条件下に限って放射線治療を行うように試験が設計された。
Friedberg医師は、ニボルマブ+AVD治療を受けた患者での予後が優れていたことから、腫瘍専門医はこの治療法を自信をもって実施してよいだろうと述べた。
「初回治療の一環としての放射線療法は、ほぼ除外されています」と同医師は言う。「現在は、より効果的で毒性の少ない治療法があり、短期的な副作用だけでなく長期的な副作用も少ないはずです」。
ブレンツキシマブからニボルマブへの移行
古典的ホジキンリンパ腫と診断された人のほとんどは、進行期で診断された人であっても治癒する。
ブレンツキシマブ+AVDは、進行ホジキンリンパ腫の標準初回治療として約10年間使用されてきた。ブレンツキシマブは無増悪生存をわずかに改善することが示されているが、手足の激しい痛みやチクチク感(末梢神経障害)のほか、下痢などの胃の不調など、相当な副作用を伴う可能性がある。実際、副作用のためにこの治療法を中止する人が多くいる。
ニボルマブは、初回治療後に再発した進行ホジキンリンパ腫の単剤治療としてすでに使用されている。ニボルマブを二次治療として使用した結果は非常に良好であり、次の論理的なステップは初回治療の一環としてニボルマブを検証することだとFriedberg医師は言う。
無増悪生存率の向上、副作用の減少、放射線はほぼ実施せず
NCIが資金提供する臨床試験グループSWOGがん研究ネットワークによって実施されたこの研究には、全米の病院から約 1,000人の参加者が登録された。Friedberg医師によれば、参加者の 12%が黒人、13%がヒスパニック系であり、この多様性から、研究結果はこの疾患患者全般に当てはまることを意味している。
ホジキンリンパ腫は、青少年期に診断される最も一般的な腫瘍の 1 つであるが、青少年と成人は一般的に同じ臨床試験には参加しておらず、同じ治療を受けていない。今回の試験については、NCI資金提供の「小児腫瘍グループ」研究者とSWOG研究者が協力し、成人だけでなく青少年も参加する研究を計画したとFriedberg医師は言う。全体で約240人の参加者の年齢は12歳から17歳であった。
この共同研究の一環として、放射線療法の使用が許可される条件の策定が行われた。この基準では、薬物治療を終えた後、非常に特殊な条件を満たす画像スキャンで腫瘍残存の証拠が示された患者にのみ放射線療法を使用することができた。それ以外の場合、放射線療法を用いることはできなかった。
ニボルマブ+AVD群では2年無増悪生存率が大幅に改善したにもかかわらず、2年時点での全生存率では両治療群でほとんど差がなく、99%対98%だった。しかし、これらのデータは短期間の追跡調査に基づいているため、これは予想通りだとFriedberg医師は述べた。腫瘍が再発した人でも、二次治療で治癒したり、何年も生存する可能性がある。
ほぼすべての副作用はブレンツキシマブ+AVD群で不良であり、特に末梢神経障害が顕著であった。重篤とみなされる副作用もこの群でより多くみられ、副作用のために治療を完全に中止した患者も多かった。
ニボルマブ+AVD群では7人が死亡し、そのうち3人は治療に関連していると判断された。一方、ブレンツキシマブ+AVD群では 14 人死亡し、そのうち 8人が治療に関連していた。
ウィスコンシン小児病院でリンパ腫治療を専門とするPaul Harker-Murray医師によると、この研究結果は説得力があるという。
この試験で使用されたニボルマブ+AVD療法と放射線治療へのアプローチは、「多くの[がん]センターで青少年期および若年成人層に対する新たな標準治療となる可能性が非常に高い」と、本研究には関与していないHarker-Murray医師は言う。
多くのホジキンリンパ腫研究者は、進行ホジキンリンパ腫を現在の治療法で治す能力は「おそらく最大限に発揮されている」と考えていた、とJames Armitage医師(ネブラスカ大学医療センター)とDan Longo医師(ハーバード大学医学部)は、この試験結果に付随する論説で書いている。SWOG試験は「その想定を覆す」と両医師は記す。
治療が長期にわたってどのように持続するかを判断するには、試験参加者をより長期間追跡する必要があるが、ニボルマブ+AVD療法が有望視される理由は十分にあると彼らは続けた。
「免疫チェックポイント阻害薬と化学療法の併用によって誘発される寛解が化学療法単独によって誘発される寛解と異なるものでない限り、晩期再発は起きないと思われる」と記している。
進行ホジキンリンパ腫の新たな標準治療
ニボルマブを製造するブリストル・マイヤーズスクイブ社の広報担当者は、食品医薬品局(FDA)に承認を申請する計画についてはコメントしないと述べている。そのため、この薬がこの特定の用途でいつ承認される可能性があるかは不明である。
FDAの承認がない場合でも、成人および小児のホジキンリンパ腫の治療に関する専門家ガイドラインが改訂され、進行疾患の患者に対して望ましい初回治療としてニボルマブ+AVDが推奨される見込みであるとFriedberg医師は言う。
Armitage医師とLongo医師の説明によれば、今回の結果は、若年患者よりも「治療転帰がはるかに悪い」ことが多い60歳以上の患者にとって特に重要である。ニボルマブ+AVD治療を受けた、この年齢層の患者の2年無増悪生存率は88%で、「おそらくこれまで報告された中で最高の数字である」と両医師は記している。
さらに、ブレンツキシマブ+AVD療法は「高齢患者において特に容認できない副作用プロファイルを示し、3分の1がすべての治療を予定より早く中止した」とFriedberg医師らは記している。「これらの知見に基づくと、高齢患者では[ブレンツキシマブ]+AVDの使用はおそらく避けるべきである」。
試験研究者らは現在、試験参加者から採取した血液サンプル中の腫瘍DNAレベルを分析している。これらの研究結果は、循環腫瘍DNAレベルが臨床医による治療決定の微調整に役立つかどうかについての将来の研究の指針になる、とFriedberg医師は言う。
Harker-Murray医師によると、青少年期のホジキンリンパ腫患者にとってより安全な治療方法を試す研究がいくつか進行中だという。また、初回治療としてニボルマブとブレンツキシマブを併用する可能性もあると同医師は続けた。この2剤はすでに、複数の療法後に腫瘍が再発した患者の一部に併用されている。
「この組み合わせはこれらの患者に非常に有効であり、副作用も限られている」と彼は述べた。
- 監修 佐々木裕哉(血液内科/筑波大学血液内科)
- 記事担当者 山田登志子
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- 原文掲載日 2024/11/14
【この記事は、米国国立がん研究所 (NCI)の了承を得て翻訳を掲載していますが、NCIが翻訳の内容を保証するものではありません。NCI はいかなる翻訳をもサポートしていません。“The National Cancer Institute (NCI) does not endorse this translation and no endorsement by NCI should be inferred.”】
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