バーキットリンパ腫に対する低強度化学療法が非常に有効であると米NIH臨床試験で判明

米国国立がん研究所(NCI)プレスリリース

原文掲載日 :2013年11月13日

新しい臨床試験で得られた知見によれば、バーキットリンパ腫として知られるがんを有する成人患者では、低強度化学療法を受けた後の長期生存率が90%以上と良好であった。バーキットリンパ腫の標準治療は、死亡する可能性もある毒性の高い大量化学療法を伴い、成人患者の治癒率は60%に止まっている。この試験は、米国国立衛生研究所(NIH)の一部門である米国国立癌研究所(NCI)の研究者らが主導し、結果は New England Journal of Medicine 誌 2013年11月14日号に掲載された。

バーキットリンパ腫は、リンパ腫の中でも悪性度が最も高く、免疫系の細胞から生じるがんである。本疾患は欧米よりも赤道アフリカ諸国によく見られる。例えばウガンダでは、この疾患の推定罹患率は人口10万人中に5~20例である。その一方で米国においては、2001年から2009年のNCIの統計データベースによると10万人あたり0.4例である。欧米での小児のバーキットリンパ腫の治癒率は90%にのぼり、これは今回の治療に向けた新しい手法を用いる以前の成人における治癒率より高い一方、アフリカの小児では、安全な高用量化学療法の投与技術が低いために患者の30~50%しか治癒しない。このような状況があり、毒性が低く効果の高い治療法が求められている。

NCIリンパ腫治療科部長のWyndham H. Wilson医学博士らはNIH臨床センターで試験を実施した。試験ではEPOCH-R療法を2通り検証した。EPOCH-Rはエトポシド(E)/プレドニゾン(Prednisone)/ビンクリスチン(Oncovin)/シクロホスファミド(C)/ドキソルビシン(Hydrodoxorubicin)+リツキシマブ(R)の薬剤から構成される併用化学療法である。EPOCH-Rは、高濃度の薬剤に短時間曝露させる代わりに、低濃度で長時間曝露させる。Wilson博士のチームは以前にEPOCH-Rがバーキットリンパ腫とは全く違う原発性縦隔大細胞型B細胞リンパ腫に非常に有効であることを発見していた。

未治療のバーキットリンパ腫患者30人を本試験の対象とした。患者は個々のヒト免疫不全ウイルス(HIV)感染の状況に応じて2通りのEPOCH-R療法のうち1つを受けた。バーキットリンパ腫は、免疫能が低下したAIDS患者にしばしば合併する疾患である。HIV陰性患者19人が用量調節 (Dose-Ajusted)-EPOCH-R療法を受け、HIV陽性患者11人はSC-EPOCH-RR療法を受けた。SC-EPOCH-RR療法は標準のEPOCH-Rより短期間(Short Course)の治療サイクルで、リツキシマブを倍量投与する。DA-EPOCH-Rよりは低強度の治療法となる。患者の化学療法に対する耐容性に基づいた至適投与量の薬剤を規定する試みとして薬剤使用量の調整がなされている。患者の年齢の中央値は33歳で、大半が中等度から高度の疾患リスクを有していた。試験で観察された主な毒性は発熱および好中球減少症(白血球数の低値)で、治療関連死はなかった。追跡期間中央値はDA-EPOCH-Rで86カ月、SC-EPOCH-RRで73カ月であり、全生存率は前者で100%と後者で90%であった。

「バーキットリンパ腫におけるEPOCH-Rベースの治療法の毒性は、標準治療法における報告よりも大幅に少ない上に、この2つの治療法は、小児患者と比較して著しく転帰の悪い成人患者において非常に有効なのです。」とWilson氏は述べた。

「低毒性治療法による有望な結果から、このアプローチは有効で、成人患者はもちろんのこと、バーキットリンパ腫の罹患率が高い地理的、経済的に困窮した地域において研究を行う価値があると考えられます」と本試験の筆頭著者であるNCIのKieron Dunleavy医師は述べた。

この結果に基づき成人および小児のバーキット患者におけるEPOCH-R療法の有効性を確かめるべく2つの試験が現在進行中である。

原文画像:この画像はバーキットリンパ腫における主要な15の遺伝子発現レベルを、比較的多いタイプのリンパ腫の同じ遺伝子と比較したものである。赤い点は遺伝子発現レベルの高さを表し、バーキットリンパ腫に多く見られる。緑の点は遺伝子発現レベルの低さを示している。

参考文献:Dunleavy K, Pittaluga S, Shovlin M, Steinberg SM, Cole D, Grant C, Widemann B, Staudt LM, Jaffe ES,  Little RF, and Wilson WH . Low-Intensity Therapy in Adult Burkitt Lymphoma. NEJM. Nov. 14, 2013.  DOI: 10.1056/NEJMoa1308392.

原文

翻訳担当者 岡田 章代

監修 佐々木裕哉(血液内科/小倉記念病院)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性の画像

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性

免疫療法薬ニボルマブ(オプジーボ)が、進行した古典的ホジキンリンパ腫を患う10代以上の患者に対する一次治療の一部を成すことが、NCI資金提供による大規模臨床試験の最新結果で示された。

約...
CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知るの画像

CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知る

2023年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、CAR-T細胞療法を受けた人において二次がん、特にT細胞リンパ腫が発生した20例以上を調査中であると発表した。いくつかの例では、CAR-...
ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)の画像

ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)

米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)年次総会で発表された研究結果
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、中枢神経系(CNS)リンパ腫、乳がん、神経膠芽腫の患者の治療において有望な結果をも...
抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解の画像

抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解

米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らは、化学療法を用いない治療法を開発した。この療法は、再発した、あるいは標準治療が効かなくなったアグレッシブB細胞リンパ腫の一部の患者に対し...