ゼヴァリンを使った放射線免疫療法による自家移植前処置はびまん性大細胞型リンパ腫患者の全生存率を向上させる

キャンサーコンサルタンツ

びまん性大細胞型リンパ腫患者への自家幹細胞移植前にゼヴァリン®(イブリツモマブチウキセタン)を用いた放射線免疫療法を行うと、全身照射の場合と再発率は近似であるが、毒性はより低く、全生存率は高くなる、とする研究結果がBiol Blood Marrow Transplantに掲載された。

非ホジキンリンパ腫(NHL)はいろいろな免疫系細胞を原発とする癌の一群である。びまん性大細胞型(DLCL)は、進行性の高いタイプの非ホジキンリンパ腫とされている。

ゼヴァリンは、抗CD20モノクロール抗体と放射線を運ぶ放射線同位体・イットリウム90で構成されており、放射線免疫療法(RIT)においてモノクロール抗体・リツキサン®(リツキシマブ)と併用される。体内に注入されると、B細胞の表面に特異的なタンパク質CD20に付着する(非ホジキンリンパ腫の多くの型で癌化したB細胞が見られる)。付着先のB細胞にイットリウム90の放射線が照射され、破壊する。ゼヴァリンを用いる放射線免疫療法は、健常組織を保護する手法である。

ゼヴァリンには、立証済みの高い治療効果に加え、投与期間が短いというメリットがある。ゼヴァリンは外来ベースで投与され、総治療日数も10日に満たない。忙しい患者にとっては、従来の化学療法に比べ、拘束される時間が少なくて済む。

研究者らは、患者92人を対象に、びまん性大細胞型非ホジキンリンパ腫患者向けの自家移植前処置に関するマッチ化コホート分析を実施した。患者は、ゼヴァリン+BEAM(BCNU、エトポシド、シタラビン、メルファラン)(Z-BEAM)、もしくは、全身照射法(TBI)+エトポシド+シクロホスファミド、のいずれかによる治療を受けた。

4年目時点の結果は、Z-BEAM群の全生存率が81%であったのに対し、TBI群52.7%であった。同4年間の累積再発・増悪率はZ-BEAM群40.4%、TBI群42.1%であった。非再発死亡率は、Z-BEAM群0%、TBI群15.8%、とZ-BEAM群のほうが優れていた。心毒性率はTBI群のほうが高く、肺毒性率はZ-BEAM群のほうが高かった。

研究者らは、ゼヴァリンを用いる放射線免疫療法を基本とする前処置は、全身照射法と再発率はあまり変わらなかったが、全生存率、特に2回以上の治療歴のある患者のそれを向上させた、と結論した。

参考文献:
Krishnan A, Palmer JM, Tsai NC, et al. Matched-cohort analysis of autologous hematopoietic cell transplantation with radioimmunotherapy versus total body irradiation-based conditioning for poor-risk diffuse large cell lymphoma. Biol Blood Marrow Transplant. 2012; 18: 441-450.


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翻訳担当者 村上智子

監修 林 正樹 (血液・腫瘍内科/社会医療法人敬愛会中頭病院)

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