複製過程初期のDNA切断はB細胞腫瘍と関連する
NCIニュースノート
NCI(米国国立癌研究所)の研究者による研究が、細胞内で複製過程の初期に切断されるDNA部分の新たなクラスを見つけた。彼らは、びまん性大細胞B細胞リンパ腫のような、B細胞腫瘍に良く見られる損傷とこれら切断部分が関連していることを発見した。全ての細胞には、細胞分裂の前に全ゲノムをコピーするDNA複製という過程がある。DNA鎖を構成する遺伝子の中には、癌リスクを大きくし、複製ストレスを引きおこし、切断などのDNA損傷を細胞にもたらす可能性を高くする結果になるものがある。複製ストレスは、癌を発症させる不安定なゲノムにつながる、ごく初期の事象の一つである。これは、これまで説明できなかったB細胞腫瘍のゲノム不安定性のメカニズムの元を説明する最初の研究である。この研究はNCI癌研究センターのゲノム安定性研究室(Laboratory of Genome Integrity)の長であるAndre Nussenzweig博士が率い、2013年1月31日付けのCell誌に掲載された。
Nussenzweig博士と同僚たちは、DNA切断という結果を起こす原因になる、細胞のDNA内でコピーが難しい特定の部分があれば、発見したいと考えていた。モデルとしてマウスの免疫システムを使用し、健康な細胞を分離し、健康な細胞の変異がどのように起こるかを理解するために細胞のDNA損傷の開始を観察した。損傷した部分を結合することでDNAを修復するタンパク質を全ゲノムシーケンス法によりマッピングした。研究者らは次に、モデルのマウスのDNA損傷部分とヒトのびまん性大細胞B細胞リンパ腫細胞試料の変異部分を比較し、それによりマウス及びヒトの細胞の両方で似た傾向のゲノム不安定性が見られる重要な証拠を得た。結果、マウスでの発見はヒトのB細胞リンパ腫の発症と増殖に重要であることが分かった。次の段階として、他の種類の細胞での癌の増殖における関与を研究するために、研究者らは、他の細胞の複製によるDNA損傷をマッピングし始める予定である。
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