臍帯血移植と血縁者間幹細胞移植で同等の成績(東京大学)

キャンサーコンサルタンツ
2007年2月

血液悪性疾患において、臍帯血移植を受けた患者の治療成績は、HLA適合血縁者間移植を受けた患者の成績と同等であることが日本の研究者らから報告された。この研究の詳細は2007年2月号のBlood誌に掲載された。

同種造血幹細胞移植は成人急性白血病の重要な治療法のひとつである。幹細胞のドナー候補の筆頭はHLA適合血縁者であるが、そのような理想的なドナーが見つかるのは患者のほんの少数にすぎず、結果的にドナー検索の範囲を拡大する必要に迫られる。HLA抗原のひとつだけが不適合の血縁者も幹細胞ドナーに適していると確認されている。過去20年で非血縁者間の移植件数がめざましく増加し、血縁者間移植の治療成績に近い成績が得られている。しかしながら、とくに少数民族で頻繁に見受けられるHLAの珍しい型をもつ患者のように、遺伝学的に一致しないためにHLA適合非血縁者ドナーを見つけることができない患者が多い。遺伝学的な問題に加えて、非血縁者ドナーの検索は長期にわたることがあり、ドナーがみつからないまま死亡する患者も多い。

臍帯血はこれに代わる幹細胞の供給源で、直ちに手に入り、また、HLA抗原不適合の度合いが骨髄や血中幹細胞ほどではないとする研究成績もある。臍帯血移植の大きな制約は幹細胞の数が少なく生着が遅れたり生着しなかったりすることである。成人患者の完全生着に1単位の臍帯血で十分かどうかが疑問視されてきた。

先に行われた日本の研究によると、成人患者の臍帯血移植は非血縁者間幹細胞移植に比べて迅速に行うことができ、また治療成績も良いという(関連ニュース省略)。今回の研究は同じ移植チームによるもので、臍帯血移植の件数が66件から100件に増加している。この100件の臍帯血移植の治療成績が、血縁者から提供を受けた55件の骨髄移植および16件の末梢血幹細胞移植の治療成績と比較された。患者は全員が12 Gyの全身放射線照射を含むレジメンを受けた。試験参加者は、急性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、骨髄異形成症候群、リンパ腫の患者であった。解析のため、患者は標準リスク群と高リスク群に分けられた。全員が16歳以上で、年齢の中央値は55歳であった。しかしながら、体重の中央値はわずか55kgと、米国人の平均体重に比べると低い。

以下の結果が観察された:

•3年治療関連死亡率は、臍帯血移植で9%、骨髄あるいは末梢血移植で13%であった。
•3年再燃率は、臍帯血移植で17%、骨髄および末梢血移植で26%であった。
•3年無病生存期間は臍帯血移植で70%、骨髄および末梢血移植で60%であった。
•標準リスク群の3年無病生存期間は、臍帯血移植で93%、骨髄および末梢血移植で85%であった。
•高リスク群の3年無病生存率は、臍帯血移植で56%、骨髄および末梢血移植で45%であった。
•移植片対宿主病発症頻度は臍帯血移植後のほうが低かった。

著者らは、非血縁者間臍帯血移植は血縁者間骨髄幹細胞移植あるいは末梢血幹細胞移植と同じ程度に安全で有効であると結論づけている。

コメント

日本からはこれまでに、臍帯血移植は非血縁者からの幹細胞移植に比べて生存期間に対する効果が優れているという報告が行われていた。今回の試験では血縁者間移植と臍帯血移植の同等性が示されている。このふたつの試験および他のデータは、臍帯血移植は非血縁者間幹細胞移植に代わることのできる有効な治療法であるという考えを裏付けるものである。臍帯血移植で最も重要な点は適合ドナーを見つけることではなく、幹細胞を獲得するその迅速さにあるのかもしれない。患者の中には非血縁ドナーを探しているあいだに死亡する人も多いが、こうした有望な試験結果でこの状況が変化するかもしれない。この試験結果が米国やヨーロッパで再現性があるかどうかに多大な関心が寄せられるであろう。

参考文献

Takahashi S, Ooi J, Tomonari A, et al. Comparative single-institute analysis of cord blood transplantation from unrelated donors with bone marrow or peripheral blood stem-cell transplants from related donors in adult patients with hematologic malignancies after myeloablative conditioning regimen. Blood 2007;109:1322-1330. (PMID: 17038536


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翻訳担当者 なかむら

監修 瀬戸山修(薬学)

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