三環系抗うつ剤は非ホジキンリンパ腫の発生率を増加させる可能性がある

キャンサーコンサルタンツ
2008年7月

三環系抗うつ剤による薬物治療を長期間受けた患者は、非ホジキンリンパ腫(NHL)の発生率が53%増加するとデンマークの研究者らは報告した。[1] このデータはEpidemiology誌の7月号にも掲載された。[2]

NHLの発生率は過去数十年間増加しているが、増加の原因は分かっていない。実際、特定の細菌(胃リンパ腫におけるヘリコバクターピロリ)またはEBウイルス(バーキットリンパ腫)やHIV関連リンパ腫、体腔リンパ腫(ヒトヘルペスウイルス8型)、T細胞リンパ腫(HTLV-1)のようなウイルスが原因の比較的少数のリンパ腫を除いて、大半のリンパ腫は原因が分かっていない。また、これらの特定原因のいずれも、近年みられるリンパ腫の発生率増加を説明するものではない。溶剤や殺虫剤、除草剤、硝酸塩で汚染された水のなどの化学薬品に曝露することが、NHLの発生率増加の原因であると憶測されている。最近の報告で、殺虫剤や除草剤、薫蒸剤といった農薬曝露によって、t(14;18)陽性の非ホジキンリンパ腫(NHL)の発生率が増加するが、t(14;18)陰性NHLは増加しないと示唆された。他の報告では、ベンゼンやキシレン、トルエンのような溶剤の職業的曝露によって、NHLおよびホジキンリンパ腫の進行リスクが増加する可能性があると示唆された。

1989年から2003年にかけてデンマークの北部ユトランドにおいて、抗うつ剤のいずれかを治療に用いた43,932人のNHL発生率を測定したところ、三環系抗うつ剤を使用すると、不使用と比較してNHLの発生率が全体で53%増加したと研究者らは報告した。処方が10回よりも多く、追跡期間が5年以上の患者では、リスクがより高くなった(発生率比=2.50)。他の抗うつ剤を使用した場合、NHLの発生リスクは増加しなかった。

コメント

これらは非常に興味深い結果であり、他の研究で裏づけされれば、この結果のメカニズムに対する調査を必要とするだろう。

参考文献

[1]Dalton SO, Paulsen AH, Noergaard JK, et al. Tricyclic antidepressant medication use and non-Hodgkin lymphoma: A Danish population-based cohort study. Journal of Clinical Oncology. 2008;26:abstract 8578
[2]Dalton SO, Paulsen AH, Noergaard JK, et al. Tricyclic antidepressants and non-Hodgkin lymphoma. Epidemiology. 2008;19:546-549


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 大内 英利子

監修 林 正樹(血液・腫瘍医)

原文を見る

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

リンパ腫に関連する記事

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性の画像

ニボルマブは進行ホジキンリンパ腫の治癒率向上につながる可能性

免疫療法薬ニボルマブ(オプジーボ)が、進行した古典的ホジキンリンパ腫を患う10代以上の患者に対する一次治療の一部を成すことが、NCI資金提供による大規模臨床試験の最新結果で示された。

約...
CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知るの画像

CAR-T細胞療法後の二次がんリスクを知る

2023年11月、米国食品医薬品局(FDA)は、CAR-T細胞療法を受けた人において二次がん、特にT細胞リンパ腫が発生した20例以上を調査中であると発表した。いくつかの例では、CAR-...
ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)の画像

ASCO2024:ダナファーバーがん研究所の発表(リンパ腫、乳がん、脳腫瘍)

米国臨床腫瘍学会(ASCO2024)年次総会で発表された研究結果
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、中枢神経系(CNS)リンパ腫、乳がん、神経膠芽腫の患者の治療において有望な結果をも...
抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解の画像

抵抗性アグレッシブB細胞リンパ腫への5剤併用療法で持続的寛解

米国国立衛生研究所(NIH)の研究者らは、化学療法を用いない治療法を開発した。この療法は、再発した、あるいは標準治療が効かなくなったアグレッシブB細胞リンパ腫の一部の患者に対し...