【米国血液学会(ASH)】全身性肥満細胞症に経口ベズクラスチニブは疾病負荷を軽減し、症状を改善
MDアンダーソンがんセンター
ベズクラスチニブは非進行期全身性肥満細胞症患者を対象とした第II相試験において、安全性が認められ、かつ疾病負荷マーカーを急速に低下させた。
演題アブストラクト:77
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者らが報告した第II相SUMMIT試験の結果によると、標的治療薬bezuclastinib[ベズクラスチニブ]は安全であり、非進行期全身性肥満細胞症と呼ばれる希少血液疾患患者の症状を改善すると同時に、疾病負荷マーカーを急速に減少させた。
本日、2023年米国血液学会(ASH)年次総会で発表された研究結果によると、ベズクラスチニブを投与した参加者全例において腫瘍量を示すマーカーが少なくとも50%低下し、12週間以内に参加者の63%が疾患症状の緩和を報告した。さらに8週間の投与延長後に、この数字は78%に増加し、その時点で全患者が疼痛症状の改善も報告した。
「標的治療の時代は、単に症状を緩和するだけでなく、病態の根源に迫る希望を持たせてくれます」と、治験責任医師である白血病学教授のPrithviraj Bose医師は述べた。「ベズクラスチニブは、類似薬によくみられる中枢神経系や出血の副作用を伴わず、精度の高い標的指向性をもたらします」。
全身性肥満細胞症(SM)は、骨髄および他の組織への悪性肥満細胞の蓄積を特徴とする希少疾患である。異常な肥満細胞がこのように高レベルで存在すると、メディエーターと呼ばれる化学物質の放出によって多くの症状が引き起こされる。SMは非進行期(NonAdvSM)から進行期(AdvSM)まであり、症状は脳霧や皮膚の発疹から消化管症状、生命を脅かすアナフィラキシーまで多岐にわたる。
患者の最大95%では、全身性肥満細胞症はKIT-D816V遺伝子変異によって引き起こされる。この変異キナーゼを標的とする治療法は、進行期全身性肥満細胞症(AdvSM)に対して用いられてきたが、標的以外の部位に活性を有することが知られており、これによって投与が制限される毒性が生じ、結果として有効性が制限される可能性がある。
非進行期全身性肥満細胞症(NonAdvSM)には、低悪性度全身性肥満細胞症(ISM)とくすぶり型全身性肥満細胞症(SSM)の2つの病型がある。ISMはSM患者の過半数に認められ、肥満細胞の脱顆粒化とメディエーター放出に関連した症状が主な特徴である。一方、SSMは、血清トリプターゼのような血中酵素が高値となることで示される肥満細胞数がより多くなって同定されるが、結果として生じる臓器障害は認められない。
ベズクラスチニブは強力な1型チロシンキナーゼ阻害薬で、変異型KIT-D816Vの活性を阻害する一方、他のキナーゼの活性は温存するため、標的以外の副作用の可能性を最小限に抑えることができる。
別の先行研究において、本剤は実験モデルで脳への浸透が極小であることが示され、AdvSM患者では中枢神経系毒性は認められなかった。
SUMMIT試験の第1パートでは、NonAdvSM患者20人を7カ月間(中央値)にわたり追跡した。大半は女性(75%)で、年齢中央値は50歳であった。
患者の75%がKIT-D816V変異を有し、全員が中等度から重度の症状を有していた。患者にはベズクラスチニブ100mgまたは200mg、またはプラセボのいずれかを投与した。試験期間中、患者全員にベースラインの抗メディエーター薬治療を継続した。
ベズクラスチニブの有効性は、患者が報告した複数の転帰指標および血清トリプターゼ、骨髄肥満細胞率、KIT-D816V変異対立遺伝子負荷などの疾病負荷マーカーの変化に基づき、研究者らが評価した。
100mg投与した患者では、12週間後における症状減少の中央値が48.5%であった。この期間中、プラセボ群では、症状全体の有意な改善を報告した患者はいなかった。しかし、これらの患者をベズクラスチニブ治療に移行させたところ、4週後には67%の患者が症状の改善を報告した。
20週後には、12週後と比較して、皮膚症状(78%)、胃腸症状(33%)および認知症状(33%)に大幅な改善が認められた患者の数が増加した。
有害事象は概して軽度かつ可逆的であり、最も頻度が高かった有害事象は髪の色の変化、吐き気、末梢浮腫であった。100mg群および200mg群では、ベズクラスチニブに関連する重篤な有害事象は報告されなかった。
「この薬剤は、非進行期全身性肥満細胞症の治療に大きな可能性をもたらすかもしれません」とBose氏は述べた。「今後は、高い安全性プロファイルを維持しながら投与量を最適化することがわれわれの目標です」。
非進行期全身性肥満細胞症患者における本剤の有効性をさらに評価するため、SUMMIT試験の次のステップでは、至適用量が確実に判明した時点で、ベズクラスチニブをプラセボと比較する。本試験のパートIbでは、異なる剤形を用いて1日用量100mgおよび150mgが検討され、2024年にその結果が得られる予定だとBose氏は説明した。
本研究の情報開示については、原文を参照のこと。
- 監訳 東 光久(総合診療、腫瘍内科、緩和ケア/奈良県総合医療センター)
- 翻訳担当者 菊池明美
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- 原文掲載日 2023/12/08
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