モメロチニブは骨髄線維症の症状や貧血を有意に改善
第3相試験により標準療法を上回る意味のある効果が報告された
骨髄線維症を標的治療薬モメロチニブで治療した場合、疾患関連症状(貧血や脾臓肥大など)に臨床的に有意な改善がみられたことが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究者が主導する国際共同第3相試験MOMENTUMの結果により明らかになった。
この結果はThe Lancet誌で本日発表されたが、一次治療に抵抗性、不応性または不耐性の骨髄線維症、特に症状や貧血のある患者に対して、標準治療ダナゾール(販売名:ボンゾール)の代わりに強力なACVR1/ALK2およびJAK1/2阻害剤であるモメロチニブを使用することを支持するものであった。
「これまでの骨髄線維症患者の貧血治療は、あまり効果がなく一時的なものしかなかったので、今回の結果は大変うれしいです」と、試験責任者の白血病学部教授 Srdan Verstovsek医学博士は述べた。「この試験結果により、モメロチニブが安全で忍容性が高いこと、この患者集団に頻発し患者を消耗させる臨床課題のひとつを改善できることが示唆されました」。
骨髄線維症は、骨髄増殖性腫瘍として知られる疾患群の一部である稀な骨髄腫瘍である。この疾患の特徴はJAKシグナルの伝達異常であり、これにより体内の血液細胞の正常な生産が妨げられ、脾臓の肥大や貧血といった一般的な症状が生じる。この疾患の患者における慢性的な貧血は、予後不良につながる。
現在承認されているJAK阻害剤は、脾臓の反応やその他の疾患関連症状を改善することができるが、貧血を悪化させる可能性もある。本試験において、モメロチニブは、JAK阻害剤での治療歴がある骨髄線維症患者の貧血を改善し、輸血依存度を減少させた。モメロチニブは、他のJAK阻害剤のように骨髄活性を抑制しないため、最大量の投与と維持が可能である。
MOMENTUM試験は、骨髄線維症および貧血の患者を対象に、JAK1/2およびACVR1/ALK2阻害剤を評価したはじめてのランダム化第3相試験である。本試験は、症状のある骨髄線維症患者の貧血治療に現在使用されている合成アンドロゲン、ダナゾールと、モメロチニブの臨床的有用性を比較するようデザインされた。
本試験では、21カ国107の研究施設から195人の成人患者が登録された。試験参加者は、モメロチニブ+プラセボ投与群とダナゾール+プラセボ投与群に無作為に割り付けられた(2:1)。参加者の63%が男性、37%が女性であり、参加者の年齢中央値は、モメロチニブ群が71歳、ダナゾール群が72歳であった。
本試験の主要評価項目は、投与24週時の症状の軽減であり、骨髄線維症症状評価フォームの総症状スコア(Myelofibrosis Symptom Assessment Form Total Symptom Score)が50%以上軽減したことと定義された。モメロチニブ投与群(25%)では、ダナゾール投与群(9%)と比較して、有意に高い割合の患者で疾患症状の改善がみとめられた。
また、モメロチニブを投与された患者では、脾臓の容積が有意に縮小し、24週間の治療後に25%が奏効した。さらに、これらの患者では、ダナゾール投与群と比較して、輸血の必要回数が減少した。
モメロチニブの安全性プロファイルは、これまでの臨床試験と同等であった。モメロチニブ群の試験参加者が経験した最も一般的な非血液学的副作用は、下痢、吐き気、脱力感、皮膚のかゆみまたは刺激感などだった。
Verstovsek医学博士は、「モメロチニブが承認されれば、骨髄線維症患者にとって、貧血、脾腫、その他の疾患関連症状を改善するために、これまでに承認された他の薬剤よりも有効な選択肢となる可能性があります」と述べた。「また、モメロチニブは、骨髄線維症の症状のさらなるコントロールに向けて開発中の他の治験薬と組み合わせる場合に、理想的なパートナーとなる可能性があります」。
患者のフォローアップは継続中であり、長期生存率のモニタリングが継続されている。
本研究は、Sierra Oncology社の支援を受けた。共同研究者一覧、その開示情報および論文全文はこちら。
- 監訳 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)
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- 原文掲載日 2023/01/27
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