GPRC5D抗原を標的としたCAR-T細胞療法が抵抗性多発性骨髄腫に有効性を示す

ダナファーバーがん研究所、スローンケタリング記念がんセンター、およびロズウェルパーク総合がんセンターの研究者らは、多発性骨髄腫患者を対象として、まだ十分に解明されていない細胞タンパク質を標的とするよう操作された免疫系T細胞による治療法を検討した初の臨床試験において、素晴らしい結果がもたらされたと新たな研究の中で報告した。

 New England Journal of Medicine誌オンライン版に本日掲載された研究によると、この治療法とはすなわちキメラ抗原受容体(CAR)T細胞療法であり、骨髄腫の再発を認めるまたは過去の治療に対する抵抗性を有する患者17人が試験に参加し、そのうち70.6%の患者で奏効が得られた。レスポンダーの多くは、B細胞成熟抗原(BCMA)として知られる細胞抗原を標的とした前世代のCAR-T細胞療法による治療後に再発していた。

この試験結果は、骨髄腫の患者を対象に、GPRC5Dとして知られる抗原を標的とした大規模試験の開始を促した。

「免疫系B細胞に広く存在するタンパク質であるBCMAを標的としたCAR-T細胞療法は、進行性骨髄腫に効果を発揮しますが、多くの患者は再発します」と、ロズウェルパーク総合がんセンターの Renier Brentjens医学博士と共に本試験の共同統括著者を務めるダナファーバーがん研究所のEric L. Smith医学博士は述べている。「我々が同定したGタンパク質共役受容体、クラスCグループ5メンバーD、すなわちGPRC5Dと呼ばれる抗原を標的とするCAR-T細胞を開発し、実験室試験で骨髄腫細胞および骨髄腫の動物モデルに対して有効でした。そしてこれらにはBCMAを標的とするCAR-T細胞にもはや反応しない細胞も含まれていました。今回の第1相試験では、この第2世代CAR-T細胞療法が患者さんを対象に試験が行われた初めての事例です」。

「CAR-T細胞療法は、がんを治療する最も有効な方法の一つです」と、スローンケタリング記念がんセンターの本臨床試験主任研究員および筆頭著者であるSham Mailankody医師(内科学学士/外科学学士)は述べる。「臨床試験はまだ初期段階にありますが、治療後の検査で6人の患者さんが完全奏効を、12人の患者さんが測定可能ながん病変の縮小を示しており、これらの結果に勇気づけられています」。

「これは多発性骨髄腫に対する新たな細胞療法であり、今回実施された初の小規模試験において、もう一つの抗原であるBCMAを標的とした別のCAR-T細胞療法を過去に受けた患者さんにでさえ高い奏効率を示しました」と、ロズウェルパークがん医療の副所長でありKatherine Anne Gioia寄付講座教授のBrentjens医学博士は述べる。「これは原理実証試験ですが、これらの結果は、単一のCAR-T細胞を投与するだけでなく、腫瘍細胞上の異なるタンパクを標的とする複数のCAR-T細胞集団を使用する根拠となるでしょう」。

ほとんどのCAR-T細胞療法と同様に、スローンケタリング記念がんセンターのSmith医学博士らによって開発されたこの治療法は、患者ごとのオーダーメイドである。患者の血液から数百万個のT細胞を採取し、細胞上の特定のタンパク質(この場合はGPRC5D抗原)を標的とするための合成遺伝子を組み込ませる。その後、遺伝的に強化された細胞を患者に再び注入し、抗原を持つ細胞を攻撃する。

「前臨床試験では、多発性骨髄腫に対するCAR-T細胞療法においてGPRC5Dは理想的な標的であることが判明しました」と Smith医学博士は述べた。「正常組織と比較して、GPRC5Dは特に骨髄腫細胞に多く存在することを発見しました」。

Smith医学博士は、GPRC5抗原は謎に包まれており正常な細胞活動における役割は不明である、と付け加えている。さらに研究者は骨髄細胞上の発現に特異的な表面タンパク質を調べたところ、GPRC5Dの存在は際立っていた。

スローンケタリング記念がんセンターで実施された第1相試験に参加した17人の患者は、骨髄腫に対する治療を中央値で6回受けており、その中にはBCMAを標的とするCAR-T細胞療法を受けた患者も含まれている。第2世代のCAR-T細胞療法は4つの用量レベルで試験が行われた。

本試験では、BCMAを標的とするCAR-T細胞療法と副作用は同程度であり、本療法が概ね安全であることが示された。参加者のうち15人は、サイトカイン放出症候群(CRS)を経験した。CRSとは、全身性の炎症を特徴とし、CAR-T細胞治療でよく現れる一時的な症状である。1人(最高用量を投与した患者)を除く全ての患者でCRSは軽度または中等度であった。最高用量群の2人の患者に小脳に関連する可能性のある毒性が現れた。治療に関連する有害事象によって死亡した患者はいなかった。

治療後の検査では全群の70.6%である12人の患者が治療に反応し、測定可能ながんの縮小が確認された。そのうち6人は、がんが検出されない完全奏効を示した。また、2人の患者は、治療後1年以上経過した現在も治療効果が持続している。

現在、再発または治療抵抗性の骨髄腫患者を対象にGPRC5Dを標的とするCAR-T細胞療法の多施設共同臨床試験がダナファーバーがん研究所をはじめとする各医療機関で実施されており、患者の登録が進んでいる。

本試験の筆頭著者は、Sham Mailankody, MBBS, MD, of Memorial Sloan Ketteringで、共著者は以下の通りである。Sean Devlin, PhD, Jonathan Landa, DO, Karthik Nath, MD, Claudia Diamonte, RN, Romany Auclair, MD, Briana Cadzin, RN, Xiuyan Wang, PhD, Devanjan Sikder, PhD, Brigitte Senechal, Vladimir Bermudez, PhD, Kinga Hosszu, PhD, Devin P Mcavoy, Tasmin Farzana, MPH, Elena Mead, MD, Jessica A Wilcox, MD, Bianca Santamasso, MD, PhD, Gunjan L Shah, MD, Urvi Shah, MD, Neha Korde, MD, Alexander Lesokhin, MD, Carlyn Tan, MD, Malin Hultcrantz, MD, PhD, Hani Hassoun, MD, Mikhail Roshal, MD, Filiz Sen, MD, Ahmet Dogan, MD, PhD, Sergio A Giralt, MD, Jae H Park, MD, Saad Z Usmani, MD, MBA, and Isabelle Riviere, PhD, of Memorial Sloan Kettering; Elizabeth J Carstens, MD, and Douglas Russo of Dana-Farber Cancer Institute; Lisa Fitzgerald, MD, of Beth Israel Deaconess Medical Center; Terence J Purdon, MS, of Roswell Park Comprehensive Cancer Center; and Ola Landgren, MD, PhD, of Sylvester Comprehensive Cancer Center.

監訳:喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)

翻訳担当者 三宅久美子

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