研究ハイライト2022/1/26:甲状腺がん、多発性骨髄腫

新たな併用療法はBRAFV600E変異陽性の甲状腺未分化がん(ATC)に有望な治療法となる

甲状腺未分化がん(ATC)は、まれではあるが悪性度の高い疾患であり、生存期間の中央値が5カ月、1年生存率が20%である。そのため、長期の利益が得られるより効果的な治療法が必要とされている。Vivek Subbiah医師とMaria Cabanillas医師が主導した第2相Rare Oncology Agnostic Research(ROAR)バスケット試験の最新の解析で、BRAFV600E変異ATCおよびその他の希少がん患者に対しダブラフェニブ(販売名:タフィンラー)に加えトラメチニブ(販売名:メキニスト)を投与して、安全性と有効性を評価した。今回の最新の解析で、本併用療法(ATC治療薬として初めて米国食品医薬品局(FDA)により承認された薬剤)は、臨床効果が大きく毒性は管理可能であることが確認され、3つの完全奏効を含む奏効率56%を達成した。1年無増悪生存率は43.2%、全生存率は51.7%であった。これらの知見は、このようなまれではあるが悪性度の高いがんの患者に、長期生存率の改善につながる有意義な治療選択肢であるダブラフェニブとトラメチニブの併用療法を提供できることを裏付けている。詳細はAnnals of Oncology誌を参照。

幹細胞移植後の多発性骨髄腫患者に対する併用維持療法の安全性と有効性

新たに診断された多発性骨髄腫の標準治療は、導入化学療法、自家幹細胞移植(ASCT)、レナリドミド(販売名:レブラミド)による維持療法である。しかし、これは一般的に治療効果のある方法ではない。Krina Patel医師を筆頭とする研究者らは、ASCT後の経口維持療法としてレナリドミドとイキサゾミブを併用するレジメンの安全性と有効性を検討した。本レジメンについて、毒性が有意に増加せず、ASCT後に新たに診断された多発性骨髄腫患者の臨床反応が改善するかどうかの確認を試みた。単群試験に参加した64人のうち39人の患者に奏効率の改善がみられた。完全奏効率は43%、無増悪生存期間中央値は73カ月であった。副作用は、好中球減少、白血球減少、肺感染症、下痢などであった。毒性により投与量を減らす必要があった患者数はイキサゾミブが20人、レナリドマイドが31人であった。全体として、本併用療法は安全であり、副作用は管理可能であり、レナリドミド単剤での維持療法の試験で報告された過去のデータと比較して、新たに診断された多発性骨髄腫に対し期待以上の無増悪生存期間が得られた。詳細はClinical Cancer Research誌を参照。

テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MDアンダーソンの専門家によって最近発表されたがんの基礎研究、トランスレーショナル(橋渡し)研究および臨床研究を一部紹介している。甲状腺がんや多発性骨髄腫の併用療法をはじめ、CRISPR/Cas9ゲノム編集の改良、免疫療法反応のバイオマーカーの特定、骨肉腫に対するT細胞療法の活用、ERKシグナル伝達を制御するLIP-1の役割解明に関する発見など、現在の臨床研究は進歩している。

翻訳担当者 松長愛美

監修 高光恵美 (生化学、遺伝子解析)

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