一部の高齢患者で多発性骨髄腫のステロイド治療を中止できる可能性
【ロイター】新たに多発性骨髄腫と診断され、レナリドミド(販売名:レブラミド)とデキサメタゾンの併用療法(Rd療法)を受けている体力が中程度の高齢患者において、導入療法後のレナリドミド減量およびデキサメタゾン中止は安全であるということが、イタリアで行われた新しい研究で示唆された。
導入療法後にレナリドミド減量およびデキサメタゾン中止を行うレジメン (Rd-Rレジメン)群において、28日間サイクルのRdを9回投与する導入療法後、無増悪生存期間や全生存期間を損なうことなく、無イベント生存期間が有意に延長したとBlood誌で報告された。
通常、多発性骨髄腫の患者はステロイドを含む継続的な治療を受けており、患者の病気が進行するか、副作用などで治療が継続できなくなるまで投与されていると、筆頭著者であるトリノ大学のAlessandra Larocca医師はプレスリリースの中で述べている。
さらに、「長期にわたるステロイドの使用は、若年層であっても長期的な忍容性に乏しく、投与量の減量や中断を必要とする患者が多い」とLarocca医師は述べている。
デキサメタゾンを含むレジメンの長期投与は、不眠症、不安、興奮、体重増加、骨粗鬆症、下肢浮腫と関連している。
Larocca医師らは、新たに多発性骨髄腫と診断され、自家幹細胞移植の適応がない患者を対象に、Rd-Rレジメンと標準的な持続Rd療法を比較する第3相試験を実施した。このような試験が実施されるのは初めてであるという。
イタリアの33施設で、65歳から80歳までの患者199人(年齢中央値76歳)が登録された。国際骨髄腫作業部会(International Myeloma Working Group:IMWG)のフレイルスケールで評価し、健康でも虚弱でもない、体力が中程度の高齢者を対象とした。
持続Rd療法群に無作為に割り付けられた98人の患者は、レナリドミド(1日25mg、21日間)とデキサメタゾン(1日目、8日目、15日目、22日目に20mg)を28日間サイクルで投与され、疾患進行または不耐となるまで継続した。
Rd-Rレジメン群に無作為に割り付けられた101人の患者は、上述のように28日間サイクルで9回行う導入療法を受け、その後は疾患進行または不耐となるまで、レナリドミドの維持療法(1日10mg、21日間)のみが行われた。
中央値37カ月の追跡期間中に70人の患者が死亡し(Rd-R群で32人、Rd群で38人)、そのうち各群15人は疾患進行が原因であった。
無イベント生存期間の中央値は、Rd-R群で10.4カ月、Rd群で6.9カ月(P=0.02)、無増悪生存期間は20.2カ月対18.3カ月(P=0.16)、3年全生存率は74%対63%(P=0.06)であった。
有害事象によるレナリドミドの投与中止率は、Rd-R群では24%、Rd群では30%であった。
解析した時点で、58人の患者がまだ治療を継続しており、その内訳はRd-R群34人、Rd群24人であった。
Larocca医師は、幹細胞移植の適応とならない骨髄腫患者の約3分の1が本研究で用いた基準に当てはまると推定しており、今回の結果は診療において重要な影響をもたらす可能性があると述べている。
「本研究の結果が、年齢や併存疾患のために治療毒性や生存率低下のリスクが高いと思われる高齢患者の治療の改善と最適化に役立つと期待している」。
著者らは、ダラツムマブ(販売名:ダラザレックス)などのモノクローナル抗体を用いた治療法と、RdまたはVMP(ボルテゾミブ・メルファラン・プレドニゾロン)療法を併用する治療法が、最近では標準的な治療法となっていることを指摘している。
フランスのde Lille大学病院(Centre Hospitalier Regional Universitaire de Lille)血液疾患部門の責任者であるThierry Facon医師は、ロイター・ヘルスに対しメールで、「そのような治療法(モノクローナル抗体の併用療法)が登場しても、(本研究の新しい)知見の妥当性は低下しない。逆に、デキサメタゾンを減量できる可能性や関心がさらに高まるかもしれない」と述べている。
つまり、(イタリアでの研究結果によれば)Rd療法を使用した場合にはデキサメタゾンを9カ月後に中止できるが、レナリドミドとダラツムマブを併用した場合にも、デキサメタゾンを早期に中止できる可能性があり、有効性を維持しつつ、デキサメタゾン関連の有害事象を少なくできる可能性があると、本研究に関与していないFacon医師は説明している。
ロサンゼルスのシダーズ・サイナイ医療センター(Cedars-Sainai Center)の多発性骨髄腫およびアミロイドーシスプログラム(Multiple Myeloma and Amyloidosis Program)のメディカルディレクターであるRobert A. Vescio医師は、ロイター・ヘルスにメールで、「本研究は、長期的なステロイドの使用が有用でない、あるいは必要でない可能性を示唆している。ステロイドの副作用が出ている患者では、ステロイドを中止する可能性が高くなるだろう」と述べている。
さらに、「ステロイドを継続的に使用した群ではレナリドミドを中止した人が多かったことに注目すべきである。ステロイドの使用は、患者のレナリドミドへの忍容性をより困難にする可能性があり、レナリドミドを早期に減量または中止することは、患者の転帰に最も悪い影響を及ぼす可能性がある」と述べている。なお、Vescio医師も本研究に関与していない。
出典: https://bit.ly/39CTw4N Blood誌、2021年3月19日オンライン版
翻訳担当者 河合加奈
監修 野﨑健司(血液・腫瘍内科/大阪大学大学院医学系研究科)
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