3剤併用療法により多発性骨髄腫患者の生存期間が延長
新たに診断された多発性骨髄腫患者で、自家造血幹細胞移植を二次治療以降へ後回しにすることを検討されている人 に対して、分子標的薬ボルテゾミブ(ベルケイド)を2剤併用療法に追加することで、2剤併用療法のみと比較して生存期間が延長することが新たな臨床試験で示された。
一部の多発性骨髄腫患者は自家造血幹細胞移植を一次治療の一部として受けることがある。しかし、この治療には時間がかかり、重篤な副作用が生じる可能性があるため、患者は移植を(二次治療以降に)後回しにする、または、全く受けない可能性がある。
診断後 に一次治療として自家造血幹細胞移植を受ける予定がない多発性骨髄腫患者を対象とする本ランダム化第3相臨床試験は、標準治療であるレナリドミド(レブラミド)+デキサメタゾンの2剤併用療法へのボルテゾミブの追加による利益を直接評価する最初の試験である。
本臨床試験から、3剤併用療法は2剤併用療法より優れていることが明らかになり、移植を一次治療として受ける予定がない患者に対する3剤併用療法の有用性が示されました」と本臨床試験の著者であるAngela Dispenzieri医師(メイヨー・クリニック、ミネソタ州ロチェスター市)は述べた。
「多発性骨髄腫関連団体の大多数はこの結果が得られるか懐疑的でした」とDickran Kazandjian医師(米国食品医薬品局/米国国立がん研究所(NCI)臨床試験責任医師、NCIがん研究センター腫瘍内科部局)は述べた。同氏は本試験に関与していない。「本臨床試験の結果から、3剤併用療法は新たに診断された多発性骨髄腫に対する標準治療になるはずです」とも言い添えた。
本臨床試験の結果はThe Lancet誌電子版2016年12月23日号に発表された。
3剤併用療法は2剤併用療法より優れている
一般的に、他に健康上の問題がない75歳以下の多発性骨髄腫患者は、自家造血幹細胞移植に適している。その一方で75歳以上の患者は、体力および他の健康上の問題を有することがあるため通常は移植に適さない、とDispenzieri氏は述べた。
しかし、特に効果の高い薬物療法のレジメンがもう一つの治療選択肢になっている現在、一部の移植適格患者は、移植による毒性リスクと二次原発がん発症リスクがあるため、自家造血幹細胞移植を後回しにすることを選択することがある、とKazandjian氏は解説した。
以前に実施された早期臨床試験から、多発性骨髄腫における一次治療としてのボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用療法の安全性と有効性は示されていた。しかしこれらの臨床試験では引き続き自家造血幹細胞移植を受けた患者が大半を占めており、2剤併用療法と3剤併用療法を直接比較することはできなかった。
「自家造血幹細胞移植なしにこの3剤併用療法を行った時にどのような結果になるかに関しては、あまり良いデータは存在しませんでした。本当に2剤併用療法よりも優れているのか疑問でしたし、毒性がより強くなりかねないという懸念もありました。われわれはこうした疑問に答えるために本臨床試験を実施しました」とDispenzieri氏は述べた。
Brian G. M. Durie医師(the Cedars-Sinai Samuel Oschin Cancer Center)が主導する本オープンラベル臨床試験は、一次治療としての自家造血幹細胞移植予定のない未治療多発性骨髄腫患者525人を登録した。
患者らは3週間に8回の3剤併用療法群、または4週間に6回の2剤併用療法群に無作為に割り付けられた。両群はいずれかのレジメンを終了後、レナリドミド+デキサメタゾンによる維持療法を受けた。
本臨床試験の解析時に、2剤併用療法と比較して、3剤併用療法による患者の無増悪生存期間(本臨床試験の主要評価項目)中央値が13カ月延長した(2剤併用療法群の30カ月対3剤併用療法群の43カ月)ことをDurie氏らは突き止めた。副次的評価項目である全生存期間中央値は11カ月延長した(2剤併用療法群の64カ月対3剤併用療法群の75カ月)。
また、3剤併用療法がより深い奏効をもたらす、すなわち、より多数の患者が最良部分奏効 、完全奏効、およびDNAシークエンシングなどのより高感度の検査法で評価される完全奏効を得ることもDurie氏らは見出した。
「奏効が大きいほど、患者の無増悪生存期間と全生存期間が延長する可能性が高くなります」とKazandjian氏は解説した。
本臨床試験の登録患者の約10%はその後自家造血幹細胞移植を受けた。Durie氏らが自家造血幹細胞移植患者を解析から除外しても、3剤併用療法は2剤併用療法と比較して、全生存期間を11カ月延長させたことを示していた。
治療に対する影響
3剤併用療法群内のより多数の患者で高グレードの有害事象が認められ、その大部分は感覚障害と胃腸障害であった。こうした副作用はボルテゾミブの静脈内投与によるもので、本臨床試験開始時における標準的な投与法であったとDurie氏らは記した。 現在の標準的な投与法である皮下投与は末梢神経障害の発生率を低下させるとDurie氏らは解説した。
以前の臨床試験で得られたエビデンスに基づき、自家造血幹細胞移植を予定している多発性骨髄腫患者の約半数は3剤併用療法をすでに受けている、とDispenzieri氏は述べた。
「自家造血幹細胞移植を受ける可能性が低い75歳以上の患者は、大多数が2剤併用療法を受けています。しかし、本臨床試験は、こうした患者やそれ以下の年齢の患者に対してどのような標準一次治療を行うべきかを課題にしています」とDispenzieri氏は言い添えた。
また研究者らは、さらに有効な他の併用療法に関する臨床試験を実施している。
実例として、単群第2相試験で、レナリドミド+デキサメタゾン+カルフィルゾミブ(カイプロリス)併用療法が新たに診断された多発性骨髄腫患者に大きな奏効をもたらすことをKazandjian 氏らは見出した。また現行の第3相試験ではレナリドミド+デキサメタゾン+カルフィルゾミブ投与患者の転帰と、レナリドミド+デキサメタゾン+ボルテゾミブ投与患者のそれを比較している。
これらの臨床試験から、(ボルテゾミブやカルフィルゾミブなどの)プロテアソーム阻害剤+(レナリドミドなどの)免疫調節薬+(デキサメタゾンなどの)ステロイドという特定の併用療法が抗多発性骨髄腫活性を増強する可能性が示唆される、とKazandjian氏は述べた。
また、もう1つの現在実施中の臨床試験では、さらにダラツムマブ(ダルザレックス)をボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用療法に追加した場合の有効性を評価中である。
【図のキャプション】
ボルテゾミブは、損傷を受けた、または、すでに不要なタンパク質を分解し再利用する細胞内複合体であるプロテアソーム(上図)の作用を阻害する。
解説:Andreas Martin、ハワード・ヒューズ医学研究所
原文掲載日
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