レナリドミドとデキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与は、新たに診断された多発性骨髄腫患者の生存を改善
キャンサーコンサルタンツ
直ちに幹細胞移植を受ける意向がない多発性骨髄腫患者に対する初期療法として、レナリドミド(レブラミド)とデキサメタゾン併用へのプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(ベルケイド)の追加投与は生存の改善を示した。これらの結果は、フロリダ州オーランドで行われた2015年度米国血液学会年次総会で発表された。
多発性骨髄腫は形質細胞と呼ばれる免疫細胞に一定の異常がみられる血液がんである。正常な形質細胞は抗体と呼ばれるタンパク質を産生し、バクテリアやウイルスに対抗する免疫系の防御作用において重要な役割を担う。
がんとなった形質細胞は急速に複製する傾向にあり、機能異常のある抗体を産生するだけではなく、正常な免疫細胞を押し出す。これらの異常な抗体は、感染に効果的に対抗する免疫系の能力を低下させるだけではなく、腎臓に障害を引き起こすことも多い。
新規に診断された多発性骨髄腫患者に対する一般的な標準療法としてはレナリドミドとデキサメタゾンを併用する。研究者らはこうした患者の予後を改善する新たな併用療法の可能性を模索している。
正常な細胞過程では、不要となったタンパク質が分解される。分解されたタンパク質の成分は、新しい有効なタンパク質に再生される。プロテアソームは正常細胞にみられる酵素複合体であり、タンパク質の分解と再生に重要な役割を果たす。
ボルテゾミブはプロテアソーム阻害剤であり、プロテアソームが細胞内の不要なタンパク質を分解しないようにする。これらのタンパク質は細胞内に蓄積し、最終的には細胞死に至らせる。
近年、研究者らは新規に診断された多発性骨髄腫に対するボルテゾミブの有効性を検討する臨床試験を実施した。その臨床試験では48施設からの患者525人を治療対象として、レナリドミド+デキサメタゾン併用へのボルテゾミブ追加、レナリドミド+デキサメタゾン併用のみの2群に分け、直接比較した。本臨床試験に参加した患者は、試験後に幹細胞移植を受ける意向がない患者であった。
・無増悪生存期間(PFS)の中央値は、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法群で31カ月であったのに対して、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与群では43カ月であった。
・全生存期間(OS)の中央値は、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法で63カ月であったのに対して、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与群ではデータ集積時点ではまだ中央値に達していなかった。
・ボルテゾミブ追加投与群では神経障害が多かったことを除いて、副作用は両群とも類似していた。
研究者らは、「前治療歴のない骨髄腫患者に対する導入療法として、レナリドミド+デキサメタゾン併用療法へのボルテゾミブ追加投与は統計学的に有意な結果を示し、全生存期間だけではなく無増悪生存期間においても臨床的に意義のある改善を示した。ボルテゾミブ+レナリドミド+デキサメタゾン併用療法は神経障害を伴うリスクが高まるが、安全性および忍容性プロファイルは許容可能であり、新たな標準療法となる可能性がある」と述べた。
参考文献:
Durie B, Hoering A, Rajkumar V, et al. Bortezomib, lenalidomide and dexamethasone vs. lenalidomide and dexamethasone in patients (pts) with previously untreated multiple myeloma without an intent for immediate autologous stem cell transplant (ASCT): results of the randomized phase III trial SWOG SO777. Proceedings from the 2015 annual meeting of the American Society of Hematology. Abstract #25.
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