汎デアセチラーゼ阻害剤パノビノスタットのボルテゾミブ+デキサメタゾンとの併用で再発性骨髄腫患者の無増悪生存期間が改善

キャンサーコンサルタンツ

San-Miguelらは、汎デアセチラーゼ阻害剤のパノビノスタット[panobinostat]をボルテゾミブ(ベルケイド)+デキサメタゾンと併用することで、再発性または再発・難治性の多発性骨髄腫患者の無増悪生存期間が改善されることを認めた。この第3相PANORAMA1臨床試験結果がLancet Oncology誌で報告された。

多発性骨髄腫は、身体の免疫システムを構成する白血球の特別な一種、形質細胞のがんである。多発性骨髄腫患者では異常な形質細胞数が増加し、血液中や尿中で検出される機能不全となった抗体量が増加する可能性がある。

パノビノスタットは、細胞分裂を遅らせ、細胞死を引き起こすタンパク質の産生量を増やすことで作用するヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害剤の一種であり、骨髄腫と同様に他の血液がんや固形腫瘍の分野でも研究されている。初期試験から、ボルテゾミブ+パノビノスタットの併用療法は、それぞれの単剤治療に比較して、より効果的に骨髄腫細胞を死滅させることがわかっている。

今回の臨床試験では、34カ国の215施設において、再発性または再発・難治性の多発性骨髄腫患者768人に対して、パノビノスタット+ボルテゾミブ+デキサメタゾンの併用治療か、あるいはボルテゾミブ+デキサメタゾンのみの標準治療を実施して、直接比較した。

パノビノスタット治療群の患者では、下痢、および血小板数と白血球数の減少がみられる傾向が強く、治療中止となることも多かった。しかしながら、パノビノスタット治療群の患者では無増悪生存期間が8カ月に対して12カ月まで改善し、2倍以上の患者が治療から2年間生存した。

パノビノスタットは特に骨髄への毒性を伴うが、ボルテゾミブ治療レジメンに追加することで、無増悪生存期間は明らかに改善された。より長期にわたる追跡調査を進めて、全生存期間の改善を判定する必要がある。骨髄腫治療レジメンにおいて早期にパノビノスタットを使用することは、副作用をさらに軽減できる可能性がある。

参考文献:

San-Migule J, Hungira V, Yoon S-S, et al. Panobinostat plus bortezomib and dexamethasone versus placebo plus bortezomib and dexamethasone in patients with relapsed or relapsed and refractory multiple myeloma: a multicentre, randomised, double-blind phase 3 trial. The Lancet Oncology, Volume 15, Issue 11,
Pages 1195 – 1206, October 2014.


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翻訳担当者 日ノ下満里

監修 辻村信一 (獣医学・農学博士、メディカルライター/メディア総合研究所)

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