【ASH24】 多発性骨髄腫で早期発見と阻止の研究が有望
ダナファーバーがん研究所の研究者らは、多発性骨髄腫の早期発見と阻止に関する有意な結果を伴う3件の異なる研究を主導している。研究チームは、2024年12月7日から10日にサンディエゴで開催される第66回米国血液学会(ASH)年次総会・展示会で研究成果を発表する予定である。ASHは年間で世界最大かつ最も包括的な血液学のイベントである。
多発性骨髄腫疑いの数値は骨髄腫の前駆症状に対する早期介入の指針となる可能性
ダナファーバーの研究者らは、前駆症状を有する患者が多発性骨髄腫に進行するリスクが高いかどうかを臨床医が正確に予測するのに役立つ、ゲノムマーカーに基づく「Multiple Myeloma-like」(MM-like)スコア(多発性骨髄腫疑いのスコア)を開発した。このツールは、進行を予防または遅らせるための早期介入が有益となる可能性のある患者を臨床医が特定するのに役立つ可能性がある。ゲノム変化は、多発性骨髄腫の前駆病態である意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS)やくすぶり型骨髄腫(SMM)でよく見られる。このスコアを開発するために、研究者らは、前駆病態または多発性骨髄腫の患者1,000人以上の全ゲノム配列データに基づき、MGUSまたは多発性骨髄腫疾患に多く見られるドライバーゲノム変化を特定した。MM-like スコアは、これまでに発表された進行リスクモデルよりもゲノムを広く捉えており、この分野の予後診断ツールボックスに新たな要素を加えるものである。
研究タイトル:多発性骨髄腫とその前駆段階の1,000ゲノムマップと臨床結果への影響
口頭発表アブストラクト番号:1019
セッション:652。MGUS、アミロイドーシス、およびその他の非骨髄腫形質細胞異形成: 臨床および疫学:遺伝子、細胞、アルゴリズム:MGUSおよびSMMの進行を予測する新しい方法
血液疾患のトピックとパスウェイ: 研究、橋渡し研究、バイオインフォマティクス、ゲノミクス、計算生物学、生物学的プロセス、テクノロジーと医療処置、オミクステクノロジー
発表者・筆頭著者: Jean-Baptiste Alberge博士
上級著者: Irene Ghobrial医師
多発性骨髄腫発症の初期段階を解明する研究
ダナファーバー研究者による研究では、Mタンパクと呼ばれ、モノクローナル ガンモパシー(意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症(MGUS))とも呼ばれる血中タンパク質異常が、MGUSや多発性骨髄腫と診断される22年も前から存在し、検出できる可能性があることが判明した。この研究により、多発性骨髄腫の発症の初期段階が明らかになり、多発性骨髄腫の予防、早期発見、阻止のための新たな戦略開発が可能となった。研究チームはこれまでに、質量分析法を用いてMGUSを検出できることを明らかにしている。今回の研究では、早期前駆状態または多発性骨髄腫と診断される前の患者から採取した血液サンプルを調べた。質量分析法を用いることで、研究チームは最も初期のMGUSを同定し、それを生成する特定のB細胞クローンを追跡することで、MGUSを経時的に追跡することができた。その結果、77%の症例で、1つの優勢なB細胞クローンが出現し、病勢が進行するまで持続することが判明した。残りの23%の症例では、進行前のさまざまな時点で異なるクローンが優勢であった。
研究タイトル: 早期血清タンパク質のクローン進化と競合は、意義不明の単クローン性免疫グロブリン血症および多発性骨髄腫診断の何年も前から先行する
口頭発表アブストラクト番号: 3279
セッション: 651。多発性骨髄腫と高月病: 基礎研究と橋渡し研究: ポスターⅡ
血液疾患のトピックとパスウェイ: 研究、基礎科学、橋渡し研究
発表者・筆頭著者: Sabine Allam医師
上級著者: Irene Ghobrial医師
新規ツールでくすぶり型多発性骨髄腫の予測が向上
ダナファーバーの研究者らは、顕性多発性骨髄腫への進行リスクに基づき、くすぶり型多発性骨髄腫患者の層別化を改善するPANGEA2.0と呼ばれるツールを開発した。このモデルは、ダナファーバー、国立カポディストリアコス・アテネ大学(ギリシャ)、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン(英国)、ナバラ大学(スペイン)などの4つの国際的な施設で、くすぶり型多発性骨髄腫と診断された1,431人の臨床データを用いて作成および検証された。研究チームは、PANGEA2.0により予測された病状経過を、くすぶり型多発性骨髄腫患者を層別化するための現在の至適基準である20/2/20により予測された病状経過と比較した。PANGEA2.0は、20/2/20によるリスク予測を改善し、特にバイオマーカー値が進展している患者について改善した。研究チームは、国際共同研究にPANGEA2.0の病状経過予測を追加することを提唱している。
研究タイトル:Pangea2.0モデルの病状経過データを用いたくすぶり型多発性骨髄腫(SMM)のリスク層別化の改善:1,431人を対象とした多施設共同研究
口頭発表アブストラクト番号:1017
セッション:652。MGUS、アミロイドーシス、およびその他の非骨髄腫形質細胞異形成:臨床および疫学:遺伝子、細胞、アルゴリズム:MGUSとSMMの新しい進行予測法
血液疾患のトピックとパスウェイ:研究、臨床研究、形質細胞疾患、バイオフォマティクス、疾患、リンパ系悪性腫瘍、テクノロジーと医療処置
発表者・筆頭著者:Floris Chabrun博士、薬剤師
上級著者:Irene Ghobrial医師
これらの知見は、ダナファーバー所属の研究者らが主導した100以上の研究の一部である。
第66回米国血液学会(ASH)年次総会・展示会におけるダナファーバーの発表の全リストはこちら。
- 監修 東 光久 (総合診療、腫瘍内科、緩和ケア、血液とリウマチ・膠原病/奈良県総合医療センター総合診療科)
- 記事担当者 山口みどり
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- 原文掲載日 2024/12/4
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