【ASCO2024年次総会】多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン追加で進行・死亡リスク減

ASCOの見解(引用)

(原文6月2日)「DREAMM-8試験から、再発または難治性多発性骨髄腫患者において、ファーストインクラスのBCMA標的抗体薬物複合体であるベランタマブ マホドチンとポマリドミドおよびデキサメタゾンの併用(BPd)はPVdレジメン(ポマリドミド、ボルテゾミブ、デキサメタゾン)よりも有意に有効であり、病勢進行や死亡のリスクがほぼ半減したことが示されました。本試験の結果は、BPdが再発または難治性多発性骨髄腫の新たな治療戦略となる可能性があることを示唆しています」。- Oreofe O. Odejide医師、公衆衛生学修士、ダナファーバーがん研究所医学部助教授

研究要旨

テーマ再発または難治性の多発性骨髄腫
対象者再発または難治性の多発性骨髄腫患者302人
主な結果骨髄腫の併用療法にベランタマブ マホドチン[belantamab mafodotin]を追加すると、現行の標準治療レジメンよりも再発骨髄腫の進行を阻止する効果が高いとみられる。
意義・骨髄腫治療の進歩により、初回診断時にプロテアソーム阻害薬、免疫調節薬および抗CD38抗体など、いくつかの重要な薬剤クラスを組み込んだ併用療法が使用されるようになった。
・この手法は転帰を改善した一方で、再発した場合、ほとんどの患者は標準的な抗骨髄腫治療薬をすでに投与され、これらに抵抗性であることが多く、治療選択肢がほとんどないことを意味する。
・再発に対する現行の戦略には、同じ3つの主要クラスの他の薬剤の使用が含まれ、異なる機序の治療薬を使用する新しい併用レジメンの必要性が浮き彫りになった。

新たな試験によると、再発または難治性多発性骨髄腫の治療において、ポマリドミド(販売名:ポマリスト)とデキサメタゾンにベランタマブ マホドチンを追加したところ、現行の標準治療であるボルテゾミブ(販売名:ベルケイド)+ポマリドミド+デキサメタゾンと比較して、より効果的に病勢進行や死亡を遅らせた。本研究は、5月31日~6月4日にイリノイ州シカゴ開催の2024年米国臨床腫瘍学会(ASCO)年次総会で発表された。

研究について

ベランタマブ マホドチンは抗体薬物複合体であり、骨髄腫細胞上のBCMAと呼ばれるタンパク質に結合し、その後化学療法薬を送達して細胞を破壊する。最近のDREAMM-7臨床試験では、ベランタマブ マホドチン+ボルテゾミブ+デキサメタゾンの併用療法は、ダラツムマブ(販売名:ダラザレックス)+ボルテゾミブ+デキサメタゾンと比較して、初回治療が奏効しなかった場合に多発性骨髄腫の進行を遅らせることが示された。DREAMM-8試験では、ベランタマブ マホドチンと別の一般的な骨髄腫治療薬であるポマリドミド(免疫系を刺激する薬)およびデキサメタゾン(ステロイド)を併用している。

DREAMM-8試験では、1回以上の治療(レナリドミドを含む)後に疾患が進行した再発難治性多発性骨髄腫患者を、ベランタマブ マホドチン+ポマリドミド+デキサメタゾン(BPd)併用療法(n=155)、またはポマリドミド+ボルテゾミブ+デキサメタゾン(PVd)併用療法(n=147)に無作為に割り付けた。全参加者のうち60%が男性、86%が白人、平均年齢は約67歳であった。参加者の追跡期間は中央値で約22カ月であった。

主な知見

  • 追跡期間中央値22カ月後、BPd群の無増悪生存期間(PFS)中央値は未到達であった。PVd群のPFS中央値は12.7カ月であった。
  • 1年目終了時の無増悪生存期間はBPd群で71%であったのに対し、PVd群では51%であった。
  • 全奏効率はBPd群で77%であったのに対し、PVd群では72%であった。さらに、BPd群の40%が完全奏効以上を示したのに対し、PVd群では16%であった。
  • 治療に奏効した患者の奏効期間の中央値は、BPd群で未到達であり、PVd群では17.5カ月であった。

BPd群のほぼ全員(99%超)に副作用が認められ、PVd群では96%に認められた。角膜の変化やかすみ目など、目に関連する副作用が多く、BPd群では89%、PVd群では30%の患者にみられた。眼に関連する副作用は多くの場合消失し、ベランタマブ マホドチンの用量を調節するか、休薬することによって管理することができたため、ほとんどの患者は試験治療を継続して受け、利益を得ることができた。

「このレジメンは、多発性骨髄腫患者の初回再発時およびその後の再発でも重要な治療選択肢となる可能性があります。このレジメンは幅広い患者に適しており、専門的ながんセンターの支援を必要とせず、地域のがん診療の場で投与することができます」と、試験の筆頭著者で、オンタリオ州トロントのプリンセス・マーガレットがんセンター准教授のSuzanne Trudel氏(理学修士、医師)は述べた。

次のステップ

研究者らは試験参加者の追跡調査を継続し、患者がより長く生存し、無病状態が続くかどうかを評価する。また、BPd群の無増悪生存期間と奏効期間の中央値を明らかにするため、引き続きデータを収集する。

本試験はGSK社から資金提供を受けた。

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  • 監訳 喜安純一(血液内科・血液病理/飯塚病院 血液内科)
  • 翻訳担当者 坂下美保子
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  • 原文掲載日 2024/06/02

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