ポマリドミドと低用量デキサメタゾンの併用が再発・難治性の多発性骨髄腫に有効

キャンサーコンサルタンツ

Lancet Oncology誌の電子速報版に掲載された研究結果によると、再発・難治性の多発性骨髄腫患者において、ポマリドミド[pomalidomide]と低用量デキサメタゾンの併用が、高用量デキサメタゾンと比べて無増悪生存期間および全生存期間を有意に延長することがわかった。

多発性骨髄腫は、身体の免疫システムの構成要素である白血球の特殊なタイプである形質細胞の癌である。多発性骨髄腫患者では、異常な形質細胞数が増加し、血液中や尿中で検出される機能不全となった抗体量が増加する。レブラミド(レナリドミド)やベルケイド(ボルテゾミブ)に不応性(もしくは抵抗性)となった多発性骨髄腫患者では治療選択肢が限られる。このような患者に対する標準治療がないため、通常予後が不良となり、全生存期間中央値は9カ月である。

ポマリドミドは、ボルテゾミブ、サリドマイドおよびレナリドミドに不応性となった多発性骨髄腫患者に活性を示した免疫調節薬であり、血管新生や骨髄腫細胞の増殖を直接阻害することにより働く。ポマリドミドは経口投与薬であり、身体の免疫システムに働きかけて、癌細胞を破壊し、その増殖を阻害する。それまでに少なくとも2種類の治療を受け、治療が奏効せず最後の治療から60日以内に疾患進行を示した(再発・難治性)患者が投与対象となる。

ポマリドミド単独では、再発性の多発性骨髄腫患者での有効性が限られていたが、デキサメタゾンと併用した場合には相乗効果がみられた。研究者らは、これらの患者において、ポマリドミド+低用量デキサメタゾンの併用療法と高用量デキサメタゾン単独療法の有効性と安全性を比較した。国際非盲検試験は、難治性または再発・難治性の多発性骨髄腫患者455人を対象とした。患者は、ポマリドミド+低用量デキサメタゾン併用群と高用量デキサメタゾン単独群に無作為に割り付けられた。適格患者は、それまでにレナリドミドおよびボルテゾミブによる少なくとも2種類の治療を受け、無効であった者とした。

追跡期間中央値10カ月後、無増悪生存期間(PFS)中央値はポマリドミド群で4.0カ月であったのに対し、対照の高用量デキサメタゾン群では1.9カ月であった。サブグループ解析から、ポマリドミド群ではPFS中央値が前治療に関係なく有意に延長することが明らかとなった。全生存期間中央値もポマリドミド群で有意に延長した(12.7カ月対高用量デキサメタゾン群8.1カ月)。全奏効率は、ポマリドミド+低用量デキサメタゾン併用群の31%に対し、高用量デキサメタゾン群では10%であった。

ポマリドミド+低用量デキサメタゾン併用群と高用量デキサメタゾン群で最も頻繁にみられたグレード3または4の血液学的有害事象は、好中球減少症(48%対16%)、貧血(33%対37%)および血小板減少症(22%対26%)であった。グレード3または4の非血液学的有害事象には、肺炎(13%対8%)、骨痛(7%対5%)および疲労感(5%対6%)などがあった。グレード3以上の発熱性好中球減少症は、ポマリドミド群では10%にみられたのに対し、高用量デキサメタゾン群では1%未満であった。

ポマリドミド群では、患者の67%に投与の中断、27%に投与量の減量が求められたのに対し、高用量デキサメタゾン群ではそれぞれ28%と32%であった。

研究者らは、ポマリドミドと低用量デキサメタゾンの併用を再発・難治性の多発性骨髄腫の新たな治療選択肢として考えるべきと結論づけた。

参考文献:
San Miguel J, Weisel K, Moreau P, et al. Pomalidomide plus low-dose dexamethasone versus high-dose dexamethasone alone for patients with relapsed and refractory multiple myeloma (MM-003): a randomised, open-label, phase 3 trial. Lancet Oncology. Published early online September 3, 2013. doi:10.1016/S1470-2045(13)70380-2


  c1998- CancerConsultants.comAll Rights Reserved.
These materials may discuss uses and dosages for therapeutic products that have not been approved by the United States Food and Drug Administration. All readers should verify all information and data before administering any drug, therapy or treatment discussed herein. Neither the editors nor the publisher accepts any responsibility for the accuracy of the information or consequences from the use or misuse of the information contained herein.
Cancer Consultants, Inc. and its affiliates have no association with Cancer Info Translation References and the content translated by Cancer Info Translation References has not been reviewed by Cancer Consultants, Inc.
本資料は米国食品医薬品局の承認を受けていない治療製品の使用と投薬について記載されていることがあります。全読者はここで論じられている薬物の投与、治療、処置を実施する前に、すべての情報とデータの確認をしてください。編集者、出版者のいずれも、情報の正確性および、ここにある情報の使用や誤使用による結果に関して一切の責任を負いません。
Cancer Consultants, Inc.およびその関連サイトは、『海外癌医療情報リファレンス』とは無関係であり、『海外癌医療情報リファレンス』によって翻訳された内容はCancer Consultants, Inc.による検閲はなされていません。

翻訳担当者 寺本瑞樹

監修 金田澄子(薬学)

原文を見る

原文掲載日 

【免責事項】
当サイトの記事は情報提供を目的として掲載しています。
翻訳内容や治療を特定の人に推奨または保証するものではありません。
ボランティア翻訳ならびに自動翻訳による誤訳により発生した結果について一切責任はとれません。
ご自身の疾患に適用されるかどうかは必ず主治医にご相談ください。

骨髄腫に関連する記事

骨髄性悪性腫瘍の精密医療による治療:NIH臨床試験の画像

骨髄性悪性腫瘍の精密医療による治療:NIH臨床試験

国立衛生研究所 (NIH) は、急性骨髄性白血病 (AML) および骨髄異形成症候群 (MDS) 患者の腫瘍細胞における特定の遺伝子変化を標的とした治療薬の新たな組み合わせに関して、概...
NPM1変異を有する骨髄腫瘍では骨髄芽球の割合との相関は認められないの画像

NPM1変異を有する骨髄腫瘍では骨髄芽球の割合との相関は認められない

MDアンダーソンがんセンター骨髄芽球が20%未満のNPM1変異陽性骨髄腫瘍はまれであり、その分類には一貫性がない。Guillermo Montalban Bravo医師が主導した新しい...
【ASCO2024年次総会】多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン追加で進行・死亡リスク減の画像

【ASCO2024年次総会】多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン追加で進行・死亡リスク減

ASCOの見解(引用)(原文6月2日)「DREAMM-8試験から、再発または難治性多発性骨髄腫患者において、ファーストインクラスのBCMA標的抗体薬物複合体であるベランタマブ ...
再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるかの画像

再発難治性多発性骨髄腫にベランタマブ マホドチン3剤併用療法は新たな選択肢となるか

米国臨床腫瘍学会(ASCO)ASCO専門家の見解「多発性骨髄腫は 血液腫瘍の中では2 番目に多くみられ、再発と寛解を繰り返すのが特徴です。ダラツムマブ(販売名:ダラキューロ)、...