ベルケード、アルケラン、プレドニンが高齢の多発性骨髄腫患者で有効

キャンサーコンサルタンツ
2006年10月

スペインの多施設試験で、標準的アルケラン(melphalan)+プレドニン(MP)療法にベルケード(bortezomib)との併用は、MP療法を受けた歴史的対照群(過去に実施された試験成績を比較の対照とすること)に比較して、新たに診断された高齢の多発性骨髄腫患者の予後が改善されることを示した。この第1相/2相試験の詳細は「Blood」誌2006年10月1号に掲載された。

多発性骨髄腫患者の最適治療は,自己幹細胞を支持療法とする高用量アルケラン(200mg/m2)やサロミドThalomid®(サリドマイド),レブリミドRevlimid®(lenalidomide)およびベルケードのような新しい薬剤の開発により急速に進化している。

新たに多発性骨髄腫と診断された患者の初期治療でサロミド[Thalomid]を含む療法は今もっとも一般的な導入療法である。しかしこれは将来、より毒性の少ないサロミド誘導体であるレブリミド[Revlimid]に代わるであろう。

ベルケードは臨床試験に到達した最初のプロテアソーム阻害剤である。プロテアソームは細胞周期、転写因子活性化、アポトーシス、細胞輸送をつかさどる調節タンパク質の分解に重要であることが明かとなってきた。前臨床および臨床のデータによってプロテアソーム阻害剤は腫瘍増殖、転移、血管新生を阻止するような複数のメカニズムを介して作用することを確認した。プロテアソームは野生型癌抑制タンパク質p53の分解や主要な転写因子NFk-Bの活性化を抑制する。加えてプロテアソームはbcl-2 遺伝子過剰発現によりアポトーシスを無効にする。ベルケードはプロテアソームの活動を抑制する高い特異性を有する。第1相および第2相試験でベルケードは忍容可能でありプロテアーゼ活性に対する用量依存性の効果を示した。最近の臨床試験では難治性骨髄腫にベルケードが有効であることを明示しセカンドライン治療としてFDAの承認に導いた。

現在の臨床試験は骨髄腫患者の初期治療としてベルケードの役割を確立することを目的としている。最近MDアンダーソンがんセンターの研究者はベルケード、サロミドおよびデキサメタゾンの併用で新たに多発性骨髄腫と診断された患者の19%に完全寛解をもたらした。

ベルケードの特有な性質は網膜芽腫遺伝子欠損(Rb欠損)とも呼ばれる第13染色体欠損[欠損(13)]に関係する不良な予後を克服するかもしれないことである。標準治療または自己幹細胞移植を受けた患者の骨髄腫細胞が従来の細胞遺伝学的検査でdel13を含む場合予後が不良である。

最近のスペインの試験はベルケード+MPによる治療を受けた新たに多発性骨髄腫と診断された65歳から85歳までの60人の患者が組み入れられた。この試験で患者の20%はカルノフスキー全身状態(PS)が70未満で、32%の患者は90以上であった。1サイクル以上の治療を終えた53人の患者で奏効が評価された。追跡中央値は16ヶ月であった。ベルケード-MP群と歴史的対照群のMP療法群の比較は以下の表のようになる。

表1:多発性骨髄腫におけるベルケード-MP群と歴史的対照MP療法群の比較

 ベルケードMP歴史的MP療法群
患者数5377
全奏効率   89%35%
完全奏効率32%0%
準完全奏効率11%9%
部分奏効率45%26%
16ヶ月無増悪生存率92%65%
16ヶ月無事象生存率83%51%
16ヶ月全生存率90%62%

これらの著者はベルケードMPの奏効は急速で,奏効期間中央値が2.7ヶ月であることも報告した。またこの試験でdel(13)を持つ患者は13人で8人は治療に奏効したとも報告した。ベルケード-MPは幹細胞移植が適さない骨髄腫患者でたいへん有効な治療法であることを示唆している。

コメント

ベルケードが骨髄腫患者の初期治療として最終的に承認される可能性を示唆するたいへん興味深い結果である。


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翻訳担当者 内村 美里人

監修 瀬戸山 修(薬学)

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