トリセノックス、インターフェロンα、およびレトロビルの成人T細胞白血病リンパ腫に対する有効性
キャンサーコンサルタンツ
2009年5月
成人T細胞白血病リンパ腫(ATL)患者に対する、トリセノックス®(亜ヒ酸)、インターフェロンα、およびレトロビル®(ジドブジン)のレジメンが高い効果を示したことをイランとフランスの研究者が報告した。本研究の詳細は、Blood誌早期オンライン版に2009年5月1日掲載された。
急性T細胞白血病リンパ腫は、通常は非常に悪性度の高い非ホジキンリンパ腫NHL)の一型である。HTLV-1がATLの原因であることを示すいくつかのエビデンスがある。そのエビデンスには、本疾患患者からの頻繁なHTLV-1分離とHTLV-1プロウィルスゲノム検出などがある。アメリカでは、HTLV-1感染者はまれであるとみられる。HTLV-1抗体の研究では、本ウィルスは日本南部、カリブ海沿岸、およびアフリカで特有のものであることを示している。アメリカでの感染率は、南東部に住むアフリカ系アメリカ人の間で最も高いと考えられている。ニュージャージーのアフリカ系アメリカ人静注薬物乱用者の間では罹患率30%で、ニューオリンズの同様の集団においては罹患率49%である。HTLV-1感染者中、ATL発症者は比較的まれである。ATLの全発症率は、年間で成人HTLV-1キャリア1500人あたり1人であると推定されている。報告されている症例は、ほとんどカリブ海沿岸の人々や南東部のアフリカ系アメリカ人に生じている。HTLV-1感染からATL発症までは長い潜伏期間があるとみられる。
ATLは、通常B細胞非ホジキンリンパ腫(NHL)に比べると治療薬に対する反応が不良である。過去10年間B細胞非ホジキン腫に対して、リツキサン®(リツキシマブ)療法が著しい効果を上げてきたが、T細胞リンパ腫の治療には、これに相当するT細胞抗体はない。自家幹細胞移植を併用した高用量化学療法は、ATL患者の治療に用いられ、いくらかの成功を収めてきた。しかし、自家幹細胞移植後ですらATL再発の可能性は高い。同種幹細胞移植は治癒療可能性がより高いアプローチだが、移植関連の死亡率は高い。ATL治療の最善のアプローチは未だに不明であり、多くの患者は予後不良である。
最新の研究は、トリセノックス、インターフェロンα、およびレトロビルを、新たにATLと診断された10人の患者に投与する第2相評価試験である。患者全員が奏効を示し、7人が完全寬解となった。2人は5%を超える循環芽球を残し完全寛解となり、1人は部分奏効を示した。
コメント:試験結果はめざましいが、患者が治癒したかどうかは明らかではない。アメリカの患者に対する本試験の妥当性は確定されていないが、HTLV-1抗体を持つATL患者のサブセットに対する重要なレジメンとなる可能性がある。
参考文献:
[1] Kchour G, Tarhini M, Kooshyar M-M, et al. Phase II study of the efficacy and safety of the combination of arsenic trioxide, interfereon alfa, and zidovudine in newly diagnosed chronic ATL. Blood [early on-line publication]. May 1, 2009.
[2] Wikepedia. http://en.wikipedia.org/wiki/Adult_T-cell_leukemia.
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監修 林正樹(血液・腫瘍内科)
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