次世代BTK阻害薬ザヌブルチニブが再発慢性リンパ性白血病の無増悪生存を改善

再発または難治性の慢性リンパ性白血病(CLL)および小リンパ球性リンパ腫(SLL)患者を対象とした臨床試験の結果、次世代BTK阻害剤であるzanubrutinib [ザヌブルチニブ](販売名:BRUKINSA、BeiGene社)は、同疾患における現在の標準治療である第一世代BTK阻害剤イブルチニブ(販売名:イムブルビカ)より疾患進行抑制効果が高く、忍容性も高いことが判明した。

第3相ALPINEランダム化試験では、ザヌブルチニブがイブルチニブよりも良好な全奏効率(ORR)を達成することが既に示されていた。 ダナファーバーがん研究所のJennifer R. Brown医学博士がニューオーリンズで開催された第64回米国血液学会(ASH)年次総会の後期口頭発表で発表した新しいALPINE試験の結果によれば、ザヌブルチニブで治療した患者は、フォローアップ29.6カ月時点で無増悪生存期間(PFS)が延長した。ランドマークの2年PFS率は、ザヌブルチニブが79.5%であったのに対し、イブルチニブは67.3%であった。ザヌブルチニブのPFS中央値はその時点では未到達だったが、イブルチニブのPFS中央値は35.0カ月だった。

Brown医学博士(ダナファーバー血液悪性腫瘍科CLLセンター長)によれば、ALPINEは、はじめて奏効率および無増悪生存期間の両方でザヌブルチニブの優位性を証明したBTK阻害剤の直接比較試験であり、治療中止率もイブルチニブの41.2%に対して26.3%と低かった。ザヌブルチニブ投与群では、心臓障害による治療中止率が低く、死亡に至る心事故も少なかった。

「これらのデータは、再発または難治性のCLLまたはSLLに対する治療として、ザヌブルチニブがイブルチニブよりも有効で忍容性が高いことを示唆しています」と、Brown医学博士は述べた。

CLLとSLLは基本的に同じ疾患であり、リンパ球という白血球細胞に発生する無痛性で低悪性度の非ホジキンリンパ腫である。がん細胞が骨髄や血液中にある場合はCLLと呼ばれ、リンパ節に優位にある場合はSLLと呼ばれる。2022年には、約20160人が新たに罹患し約4410人が死亡すると予想される。診断の平均年齢は約70歳である。

症状がほとんどない患者におけるCLLの管理は、病勢進行の症状が現れるまで見守ることがある。必要であれば、初期治療として免疫療法を併用するまたは併用しない標的療法を行う。

一次治療、あるいは再発または抵抗性疾患の患者でBTK阻害剤を投与されていない場合、第一世代のブルトン型チロシンキナーゼ(BTK)阻害剤であるイブルチニブが標準治療である。BTK阻害剤は、特定の白血病やリンパ腫が増殖し生存するために利用するB細胞受容体シグナル伝達経路の一部であるBTKという酵素を阻害する標的薬である。イブルチニブは、BTK酵素を標的とするのみならず多くの「オフターゲット」効果を持つため、その使用にはいくつかの制限がある。 イブルチニブの重大な副作用には、治療の中止や中断につながる心房細動などの心イベント、出血、血小板の減少、重度の皮膚毒性などがある。

ザヌブルチニブなど第二世代のBTK阻害剤は、より選択性が高く、心イベントを含む多くの副作用の発生率が低い。これにより、患者はより長い間治療を続けられる可能性がある。

米国血液学会で発表されたALPINE試験の結果によると、心房細動または心房粗動の発生率はイブルチニブ(13.3%)と比較してザヌブルチニブ(5.2%)の方が低く、心疾患によるグレード5の有害事象はイブルチニブ投与患者での6件に対しザヌブルチニブでは0件だった。

バイオテクノロジー企業であるBeiGene社が製造するザヌブルチニブは、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、再発または難治性のマントル細胞リンパ腫、および辺縁帯リンパ腫に対して米国食品医薬品局(FDA)の承認を受けている。 CLLでの承認はFDAで検討中である。

Brown医学博士によれば、本薬は、FDAによる承認が待たれている間、ダナファーバーでは症状の重い患者に対して「適応外」で使用されている。


  • 監訳 斎藤千恵子(薬学・毒性学/ロズウェルパ―クがん研究所 病理学部)
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  • 原文掲載日 2022/12/13

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