多剤併用中の高齢血液腫瘍患者でフレイルのリスクを予測するツールを新たに開発
ダナファーバーがん研究所とブリガム・アンド・ウィメンズ病院の研究者が開発した新しいツールは、複数の薬剤を服用している高齢の血液腫瘍患者において、特定の薬剤がフレイルにつながりやすいかどうかを予測する従来の方法より優れることが、本日オンラインで発表された研究により明らかになった。
老年腫瘍学潜在的不適切薬物(Geriatric Oncology Potentially Inappropriate Medications; GO-PIM)スケールと呼ばれるこのツールは、米国総合がんセンターネットワーク(NCCN)の「がん患者にとって『懸念すべき』支持薬リスト」に基づいたものである。このツールでは、患者が服用しているそのような薬ごとに1点が加算される。
「高齢者を対象とした研究の多くは、患者が5種類以上の薬剤を同時に服用している場合に、有害事象のリスクが高くなる『多剤服用』であるとしていますが、どの薬剤かは特定されていません」と、共同著者であるダナファーバー病院およびブリガム・アンド・ウィメンズ病院のTammy Hshieh医師、公衆衛生学修士は説明している。残念ながら、75歳以上のアメリカ人の50%がこの多剤服用の定義を満たしており、多忙な腫瘍科チームが潜在的な問題を防ぐために長期投与薬を適切に見直すことは困難である。
「米国総合がんセンターネットワーク(NCCN)の要注意薬物リストは、他のリストとは異なり老年科医と腫瘍科医によって高齢のがん患者に特化して作成されたものであるため、私たちはこのリストに関心を持ちました」と Hshieh 氏は述べた。また、「私たちは GO-PIM スケールがフレイルと最も強い関連を持ち、腫瘍科チームが不適切な薬の使用を減らすためにこれを利用できることを見出しました。GO-PIMスケールは、患者の健康全般を改善する可能性のある効果的な方法となり得ます」とも述べている。
GO-PIMは、ダナファーバーの高齢者血液悪性腫瘍プログラムとブリガム・アンド・ウィメンズの加齢部門が共同で開発した。この尺度の有用性に関する報告書は、本日、Journal of the National Comprehensive Cancer Network誌のオンライン版に掲載された。
この研究では、幹細胞移植の適応がない74歳以上の血液腫瘍患者785人を対象に、健康診断を実施した。その結果、薬剤が1つ増えるごとに、患者がフレイル前段階またはフレイルである相対オッズが8%上昇し、GO-PIMスケールにある薬剤が1つ増えるごとに相対オッズが65%上昇することがわかった。フレイル患者やフレイル前段階患者は、頑健な患者と比較して、ベンゾジアゼピン系薬剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、コルチコステロイドを服用している傾向が強かった。(フレイルの判定は、歩行速度、握力、自己申告による疲労、身体活動の低さに基づくアプローチと、併存疾患、認知、機能など複数の健康障害の存在に基づくアプローチの2つを組み合わせて行った)
「米国総合がんセンターネットワーク(NCCN)のリストに掲載された薬剤による健康リスク(転倒や疲労など)は、特に副作用に耐える能力が低下した高齢者においては、しばしばそのメリットを上回ります」と、ブリガム・アンド・ウィメンズの共同著者Clark DuMontier医師、公衆衛生学修士は述べている。「私たちのGO-PIMツールを使えば、腫瘍科チームがこうした薬剤を特定し、処方を検討することが容易になります。また、この尺度は、電子カルテ内で高リスクの薬剤を特定する自動化ツールに簡単に変換することができます」。
この論文の筆頭著者は、ダナファーバーのGregory Abel医師、公衆衛生学修士である。共著者は以下の通り:ダナファーバーのRichard M. Stone医師、 Robert Soiffer医師、Jane A. Driver医師、公衆衛生学修士、England Geriatric Research Education and Clinical Center (マサチューセッツ州ベッドフォード)のTimothy Jaung科学修士、Nupur E. Bahl、Chelsea E. Hawley薬学職能学位、公衆衛生学修士、Sunnybrook Health Services Centre (トロント)のLee Mozessohn医師。
本論文で報告された研究は、以下の支援を受けて行われた。ダナファーバー/マーフィーファミリー血液悪性腫瘍基金 (T.T. Hshieh,、N.E. Bahl、 G. Abel)、ダナファーバー/ハーバードがんセンター 多発性骨髄腫SPORE (米国国立衛生研究所がん研究所: P50 CA100707; C. DuMontier) 、米国国立衛生研究所老化研究所ボストン・クロード・D・ペッパー高齢者自立センター(賞番号 P30-AG013679)(C. DuMontier)。
日本語記事監修 :佐藤恭子(緩和ケア内科/川崎市井田病院)
翻訳担当者 伊藤彰
原文掲載日
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