研究ハイライト2022/2/23:PIK3CA標的療法、骨髄線維症ほか

CopanlisibはPIK3CA変異を有する腫瘍に有効

PIK3CAは、最も高い頻度で変異が生じるがん遺伝子であり、肝臓、乳房、大腸、卵巣、胃、脳、肺など、さまざまながん種で変異が認められている。NCI MATCH試験の一環として、Senthil Damodaran医学博士の主導で、PTEN欠損を伴う、または伴わないPIK3CA変異陽性患者を対象として、copanlisib(コパンリシブ、製品名:Aliqopa)の評価が行われた。同剤は、PIK3CAタンパク質のαおよびβアイソフォームの両方に対して活性を示すクラス1の汎PI3K阻害薬である。25人の患者を対象とした解析では、全奏効率が16%となり、本試験の主要評価項目を達成した。大半の患者は複数の前治療を受けており、68%の患者が過去に3ライン以上の治療を受けていた。他のPI3K阻害薬とは対照的に、copanlisibは忍容性が良好であった。この結果から、copanlisibがPIK3CA変異を有する一部の腫瘍に対して、単独または併用手法で実現可能な治療選択肢となる可能性が示唆される。詳細はJournal of Clinical Oncology誌を参照。

骨髄線維症に対するnavitoclaxとルキソリチニブの安全性と有効性を検討

骨髄線維症は、重度の貧血を引き起こし、急性白血病に進行する可能性のある骨髄のがんである。リスクの高い骨髄線維症に対する最も一般的な分子標的療法は、JAK阻害薬の一つ、ルキソリチニブであるが、がんはJAK阻害薬への耐性を徐々に獲得する可能性がある。前臨床モデルでは、BCL-XL経路を標的とすることで、JAK阻害薬耐性を克服できることが検討された。Naveen Pemmaraju医師が主導した第2相試験では、進行性または抵抗性疾患の患者に対するルキソリチニブとnavitoclax(ナビトクラックス、BCL-XL/BCL-2阻害薬)の併用療法の安全性と有効性を検討した。併用療法を受けた患者34人のうち、41%で脾臓体積の減少がみられ、30%で症状の総スコアが50%以上低下した。貧血があり評価可能な試験参加者11人のうち、64%で改善がみられた。追跡期間中央値21.6カ月時点では、全生存期間の中央値は未達であった。最も多くみられた副作用は可逆性血小板減少症で、試験参加者の88%に認められた。今後の研究では、この併用療法が患者転帰を改善する可能性が検討される予定である。詳細はJournal of Clinical Oncology誌を参照。

このほかの研究ハイライト:

・FGFR阻害薬ペミガチニブは、FGFR変異を有するあらゆる腫瘍の患者で安全性と臨床活性を示す

・HIF2標的療法は、膵臓がんの免疫療法奏効を改善する新規戦略となる可能性

DNA修復/生存経路を標的として化学放射線感受性を回復させる新たなGBM治療研究

T濾胞性ヘルパー細胞はCLL細胞増殖で重要な役割を担う

翻訳担当者 山田登志子

監修 中村能章(消化管悪性腫瘍/国立がん研究センター東病院 消化管内科)

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