研究ハイライト2022/2/9:非小細胞肺がん、急性骨髄性白血病
新しい培養法により非小細胞肺がん治療の腫瘍浸潤リンパ球拡大が改善
免疫チェックポイント阻害薬は非小細胞肺がん(NSCLC)の治療を一変させたが、患者の多くが治療に反応を示さない、または病気が再発する。そのため、研究者たちは、腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法などの代替免疫療法に関心を寄せている。この細胞療法は患者の腫瘍から直接分離した免疫細胞を使用するもので、腫瘍浸潤リンパ球療法が長期的な奏効を促すことがメラノーマの臨床研究で示されている。Parin Shah氏、Marie-Andrée Forget博士、Meredith Frank氏、Chantale Bernatchez博士らが率いる研究チームは、非小細胞肺がんの腫瘍浸潤リンパ球を拡大する臨床的に計測可能な方法を開発した。この方法により製造が加速され、抗腫瘍CD8+T細胞の濃縮が可能となる。この新たな方法は、T細胞の最適活性化に必要な信号である、インターロイキン2(IL-2)とCD3および4-1BBを刺激する抗体を用いて、腫瘍浸潤リンパ球を培養する。IL-2単独培養と比較して、新しい培養法は腫瘍浸潤リンパ球の製造を5倍以上増加させ、腫瘍内に見られるT細胞の階層性と多様性を維持した。この研究結果は、非小細胞肺がんの腫瘍浸潤リンパ球療法の評価に新たな可能性をもたらす。詳細はJournal for ImmunoTherapy of Cancer誌を参照。
特定の変異を有する急性骨髄性白血病に対しベネトクラクスとアザシチジンの併用療法が有効であることが判明
特定の変異を有する急性骨髄性白血病(AML)患者にベネトクラクス(販売名:ベネクレクスタ)とアザシチジン(販売名:ビダーザ)の併用療法が有意な効果を示すことが、Clinical Cancer Research誌に掲載されたCourtney DiNardo医師とMarina Konopleva医学博士による2つの研究により明らかになった。この研究結果は、ベネトクラクス+アザシチジン併用とプラセボ+アザシチジンを比較した第3相試験と、ベネトクラクスとアザシチジンを患者に併用投与した第1b相試験から集積されたものである。試験参加者は治療歴がなく、年齢(75歳以上)や合併症が原因で集中治療に適さない患者であった。これらの研究から、FLT3変異またはIDH1やIDH2変異のいずれかを有する患者のデータを研究者らは解析した。
一般的に、FLT3遺伝子変異により白血病の発症率が高くなり、再発のリスクも上昇する。標準治療は集中化学療法である。一つ目の研究において、FLT3遺伝子変異が検出された患者は、各臨床試験よりそれぞれ42人(15%)と22人(19%)であった。ベネトクラクスとアザシチジンの併用で治療した患者は、FLT3遺伝子変異の状態にかかわらず、複合完全寛解率(CRc)67%および同程度の全生存率を達成した。しかし、高リスクFLT3-ITD変異を有する患者の全生存率の改善は認められなかった。予期しない毒性は発生しなかった。この研究結果は、ベネトクラクスとアザシチジンによる治療が、FLT3変異を有する患者を含む集中化学療法に適さない治療歴のない患者に対する有効な選択肢となることを示唆している。
二つ目の研究において、IDH1やIDH12変異が検出された患者は、各臨床試験よりそれぞれ81人(26%)、28人(22%)であった。そのうち、ベネトクラクスとアザシチジンを投与された患者の複合完全寛解率は79%であった。特に、IDH1変異を有する患者の複合完全寛解率は66.7%、IDH2変異を有する患者の複合完全寛解率は85%であった。ベネトクラクスとアザシチジンの併用療法に伴う予期しない毒性は見られなかった。全体として、ベネトクラクスとアザシチジンを併用することにより、IDH1やIDH2変異を有する患者、特にIDH2変異を有する患者は奏効率が高く、生存期間が延長し、持続的な寛解が得られることが明らかになった。
今後は、特定の変異を有する患者の転帰をさらに向上させるために、FLT3、IDH1、IDH2を標的とした治療薬を適宜組み込んだ「トリプレットレジメン」を評価する予定である。
テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究ハイライトでは、MDアンダーソンの専門家により最近発表されたがんの基礎研究、トランスレーショナル(橋渡し)研究および臨床研究を一部紹介している。最近の進歩として、臨床的に実行可能な遺伝子融合を特定するための分類システム、非小細胞肺がんに対する腫瘍浸潤リンパ球の培養方法の改善、特定の変異を有する急性骨髄性白血病患者に対する効果的な併用療法がある。
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