アバタセプト承認は急性移植片対宿主病(GVHD)予防に希望をもたらす
アバタセプトの承認により、多くのがん患者や血液疾患の患者、特に適合者を見つけることが難しい多様な民族の患者に、骨髄移植という治療選択肢の可能性が広がる
米国食品医薬品局(FDA)は、2歳以上の患者について、HLA適合または1アレル不適合非血縁ドナーからの造血幹細胞移植における急性移植片対宿主病(GVHD)を防ぐ治療薬を承認した。この新薬を標準治療に加えることで、より多くのがん患者や血液疾患患者への幹細胞移植が可能になり、特に、全米骨髄バンク(NMDP)で適合ドナーを見つけることが困難な、多様な人種の患者にとって救いとなるだろう。
アバタセプトは自己免疫疾患の治療に用いられる薬剤で、「オレンシア」の製品名でブリストル・マイヤーズスクイブ社が販売してしている。今回、造血幹細胞移植後の急性GVHDを予防する治療薬として初めてFDAに承認された。急性移植片対宿主病(GVHD)は、移植されたドナーの骨髄に含まれるT細胞がレシピエントの健康な細胞や組織を攻撃し、皮膚、肝臓、消化管に大きなダメージを与えることで起こる、生命を脅かす危険のある合併症である。
FDAの承認は、幹細胞移植を受けた患者を対象とした2つの主要な試験の結果に基づいている。1つは第2相GVHD-1試験(ABA2としても知られている)で、ダナファーバー/ボストン小児がん・血液疾患センターの幹細胞移植センター長であるLeslie S. Kean医学博士の主導のもと、ブリストル・マイヤーズスクイブ社と共同で行なわれた。本試験では、急性GVHDの予防を目的として、標準治療(メトトレキサートとカルシニューリン阻害剤(シクロスポリンまたはタクロリムス)の併用)にアバタセプトを追加した場合の効果が評価された。その知見は2021年1月にJournal of Clinical Oncology誌に掲載された。
もう1つの試験はGVHD-2と呼ばれる検証試験で、これは国際造血細胞移植データ登録機構(CIBMTR)のデータを用いた非介入の観察研究である。GVHD-2のデータを含む抄録は、12月13日、2021年米国血液学会年次総会および展示会で発表された。
移植ドナープールの拡大
造血幹細胞移植では、ドナーの造血幹細胞だけでなく、白血球の一種であるT細胞も輸注される。GVHD-1試験は、非血縁ドナーから造血幹細胞移植を受けた患者を対象とした試験である。ドナーが非血縁者である場合、約70%ものレシピエントが急性GVHDを発症すると言われており、ヒト白血球抗原(HLA)と呼ばれる免疫因子がドナーとレシピエントの間で完全に適合しない場合には特に発症しやすい。
GVHD-1試験には、8つのHLAがすべて適合したドナーからの移植を受けた患者と、8つの因子のうち7つしか適合しなかった患者が含まれている。
「8/8適合および7/8適合非血縁ドナーからの移植において、アバタセプトを投与した患者では、重度の急性GVHDが減少し、生存率も改善しました」とKean博士は言う。「これらのデータは、造血幹細胞移植を必要としている患者さんに対してドナープールを拡大し、HLA適合非血縁ドナーや1アレル不適合非血縁ドナーを含めることに、医療従事者がより自信を持てることを示唆しています」。
7/8適合移植における結果は、特に朗報だった。なぜなら非白人民族の患者のなかには、8/8適合者を見つけることが難しい人々が多くいるからである。
「HLA因子が7/8しか適合しないドナーからの移植はこれまできわめて残念な結果に終わっており、そのリスクゆえに、7/8適合ドナーからの移植を考慮しない腫瘍医も多かったのです」とKean博士は述べている。「こうした移植がより安全になることで、命を救う幹細胞移植をより多くの患者さんに提供できるようになるでしょう」。
「アバタセプトが急性GVHDの予防薬として承認されたことによって、より多くの患者さん、特に適合ドナーが見つかる可能性が低い多様な民族の人々にとって造血幹細胞移植がより身近な選択肢となると考えています」全米骨髄バンク(NMDP)/Be The Matchの最高医学責任者であり、国際造血細胞移植データ登録機構(CIBMTR)の科学評価部門副所長であるSteven Devine医師は述べている。
アバタセプトはT細胞を活性化する主要な共刺激シグナルの1つに結合し、阻害することでT細胞の完全な活性化を防ぎ、急性GVHDを引き起こすT細胞による攻撃を抑制する。
アバタセプトは現在、ダナファーバー/ボストン小児科の対象患者に提供されている。ダナファーバー/ボストン小児科の幹細胞移植センターの詳細についてはこちらを参照。
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