慢性リンパ性白血病(CLL)の3剤併用AVO療法が第2相試験で有望な結果

ダナファーバーの研究者らにより、BCL-2阻害薬と別の分子標的薬2剤の3剤併用は、治療歴のない慢性リンパ性白血病(CLL)患者に有効であることが認められた

ダナファーバーがん研究所を中心とする臨床研究チームは、高齢者に好発する血液腫瘍の一種である慢性リンパ性白血病(CLL)に対して、分子標的薬3剤併用が有効であると発表した。この実験的な3剤(AVO)併用療法は、第二世代のBTK阻害薬アカラブルチニブ[A](カルケンス)、BCL-2阻害薬ベネトクラクス[V](ベネクレクスタ)、抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブ[O](ガザイバ)から成り、治療歴のないCLL患者37人を対象とする単群第2相臨床試験において評価された。Lancet Oncology誌に研究者らが掲載した論文によると、試験参加者の86%で2年間の試験期間中に有意な奏効が認められた。すなわち、高感度の細胞学的検査を行ったところ、これら患者の骨髄には微小残存病変(MRD)は検出されなかった。微小残存病変が検出されないことは、無増悪生存期間の重要な予測因子である。

筆頭共著者であるダナファーバーのリンパ腫部門の臨床研究ディレクターMatthew Davids医師(医科学修士)は、次のように語った。「本論文は、CLL治療にこの3剤を併用投与した初の試験報告です。本試験においては、この治療法がCLLに対して顕著な効果を示しただけでなく、副作用の発現率も極めて低いことが認められました。この結果には非常に勇気づけられます」。

慢性リンパ性白血病(CLL)治療は、この10年間で劇的な変化を遂げた。かつての標準治療であった従来のさまざまな化学療法剤のカクテルは、本疾患患者の中でリスクが高い患者においては効果がなく、高齢患者においては重大な副作用のために耐えられないことが多い。現在は、分子標的薬がいくつも開発されたおかげで、従来の治療法はほとんど行われていない。

このような分子標的薬には、BCL-2阻害薬であるベネトクラクスがあり、単独でもCLL治療に有効であるが、抗CD20モノクローナル抗体オビヌツズマブと併用することで、さらに高い効果を発揮する。この2剤併用療法は、すでにCLL患者に対する投与が承認されている。BTK阻害薬も、重要な分子標的薬の種類である。アカラブルチニブは第二世代のBTK阻害薬であり、CLL治療においては単剤投与またはオビヌツズマブとの併用投与がすでに承認されており、最近の臨床試験では第一世代のBTK阻害薬であるイブルチニブよりもCLL患者の忍容性が高いことが示唆されている。

Davids氏はこう語る。「これら分子標的薬は、CLL治療に革命をもたらしました。しかし、まだ改善の余地があります。これまで研究室における前臨床試験では、アカラブルチニブとベネトクラクスの併用が、患者に重要な影響を与える可能性が示されています」。

2018年、ダナファーバーのCLLセンターのDavids氏および同僚のBenjamin Lampson氏(医学博士)、Jennifer Brown氏(医学博士)は、共同研究製薬会社であるAstraZeneca社とGenentech社の支援を受け、治療歴のないCLL患者を対象に、アカラブルチニブ(A)、ベネトクラクス(V)、オビヌツズマブ(O)の3剤(AVO)を評価する単群第2相臨床試験を開始した。本試験には37人の患者が登録され、全員が3剤併用療法を少なくとも1サイクル受けた。

薬剤の投与は、28日サイクルで行われ、アカラブルチニブを第1サイクルから投与した。第2サイクルにオビヌツズマブ、第4サイクルにベネトクラクスが追加投与された。大半の患者は、骨髄に微小残存病変が検出されないことが判明した時期に応じて、15カ月または24カ月クールの治療を受けた。微小残存病変検出不能になることが、将来のCLLの進行リスクが低くなることを示す最良の予測因子であるとの認識が高まった。

この実験的な3剤併用療法の重要な特徴として、時間制限を設けることを目的としている。患者が何年も継続して治療を受けるのではなく、疾患が発見できないほど寛解した時点で治療を中止することを目標としている。

試験の全期間中、試験参加者86%の骨髄には微小残存病変が検出されなかった。また、38%が、主要評価項目である、第16サイクル開始時の微小残存病変不検出と完全寛解を達成した。さらに、同様の3剤をベースにした治療法においてアカラブルチニブの代わりにイブルチニブを投与した、昨年発表の試験に照らしても、重大な副作用の発現率は低かった。

これらの結果に基づいて、Davids氏らは、TP53の変異や欠失があるなどの高リスクのCLLに対するAVO 3剤併用療法の有効性を検討するため、さらに患者群を募っている。また、この治療法を他の薬剤併用と比較検証する第3相ランダム化試験も現在進行中である。この大規模な試験で良好な結果が得られれば、慢性リンパ性白血病(CLL)の初回治療での新たな標準治療法として、AVO 3剤併用療法が承認される可能性がある。

「患者に対して効果が高く、忍容性も高い期間制限試験は、この分野にとって大きな進歩となる可能性があります。特に高齢患者や高リスク患者にとっては、現在承認されている治療よりも優れた治療が可能になると考えると胸が高まります」と、Davids氏は語った。

本研究の筆頭共著者は、Benjamin Lampson, MD, PhDであり、その他に以下の著者が名を連ねる。Svitlana Tyekucheva, PhD, Zixu Wang, MS, Jessica Lowney, BS, Samantha Pazienza, BS, Josie Montegaard, NP, Victoria Patterson, RN, Jennifer Crombie, MD, Samuel Ng, MD, PhD, Austin Kim, MD, Caron Jacobson, MD, MMSc, Ann LaCasce, MD, MMSc, Philippe Armand, MD, PhD, David Fisher, MD、and Jennifer R. Brown, MD, PhD, of Dana-Farber; Matthew Weinstock, MD, and Jon Arnason, MD, of Beth Israel Deaconess Medical Center.

本研究は,AstraZeneca社とダナファーバーがん研究所コラボレイティブ・アワードの支援を受けており,研究者は白血病リンパ腫協会の支援を受けているほか,米国国立衛生研究所の助成(NCI R01CA213442,NCI R01CA258924,NCI P01CA206978)を受けている。

翻訳担当者 平 千鶴

監修 野﨑健司(血液・腫瘍内科/大阪大学大学院医学系研究科 )

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